第6話

「逆に問うが…」

日向は、太明に背を向けたまま、尋ねる。

「私が、狐狸妖怪の類ではないかと、疑いは持たなかったのですか?」

今の今、考えていたことを見抜いたかのようなその問い。


まるで、切り取られたかのように周囲から浮き出て見えた、その姿…。

ほんのわずかな笑みで、ようやく初めて「人」に見えた…。


しかし、太明は、低く笑い

「そうですね。…思わなかった」

と一言、答えた。

しかし、それはあまりに、きっぱりとした口調であり、それが日向を驚かせたらしい。

手を止め、また、視線を、ひた、と太明へ合わせた。

そして、一言。

「そうですか…」

とだけ答えた。

……やはり、妙なやつだ。

太明は、再度、そう思い、一人頷いた。

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