中身がないのか、言葉が軽いのか。

エリー.ファー

中身がないのか、言葉が軽いのか。

 久しぶりだな。

 二年ぶりくらいか。

 殺さないときがすまないよな。

 分かるよ。

 気持ちは分る。

 終われないよな。

 終わるわけがないか、こんな俺たちだもんな。

 どうしたって、最初で最後の戦いになる。

 一度で、終わりたかったけど、できなかったもんな。

 風を浴びて死にたいと思っていたよ。

 まぁ、無理そうだな。

 一本だけ、煙草を吸ってもいいか。

 あぁ。

 いいわけないか。

 恨みって、怖いな。

 いつまでも俺を追ってくるんだもんな。

 どうして、こんな生き方しかないんだろうな。

 俺はさ。

 俺の人生を知らなかったんだ。

 どうしたら、死なずにすむかを考えていたのに、全部、消えちまったんだ。

 完全に落ちぶれたよ。

 俺も、お前もさ。

 お前のせいで、おかしくなった。

 でも。

 それが人生だからな。

 恨み恨まれて。

 削り合って核が出てくる。

 それを突かれたら、終わり。

 そういう物語だもんな。

 あぁ、殺し屋になりたかったな。

 七人の殺し屋でいたかった。

 いつまでも組織の中にいて。

 死ぬ瞬間も一緒。

 そういう生き方が一番良かった。

 新しい方法なんていらなかったのに。

 でも、時代は変わっちまったな。

 お互いにとって、絶対に大切なものがあったはずなのに、気が付けば壊れてた。

 皮肉なもんだな。

 幸福って、俺のためにあるもんだと思ってたよ。

 違ったんだな。

 幸福って、俺から一番遠いところにあったんだ。

 昔からそうだったし、気づいていたはずなのにな。

 インターネットの中じゃ、何にでもなれる気がしたよ。

 そして。

 実際、現実の世界でもなれた。

 いや、インターネットを現実だって思ってない所が古い人間と言えるのかもしれねぇな。

 電話がくるよ。

 もうすぐな。

 出るなよ。

 絶対にな。

 何故かって、単純だよ。

 この勝負はな。

 俺とお前のものだからだよ。

 外野を入れるな。

 なぁ、勘違いから始まったり、好奇心から始まった惨殺に意味があると思うか。

 心意気なんて見えないものに命をかける生き方がまともだと思うか。

 引っ越しした日に引っ越し蕎麦を配るなんて馬鹿げていると思わないか。

 田舎特有の嫌な空気感が何故必要なのか考えたこともないか。

 なぁ。

 お前。

 何も考えてないよな。

 羨ましいよ。

 お前みたいに、今、この瞬間だけ。

 未来のことなんて分からない。

 そういう生き方を肯定してくれる大人が欲しかったよ。

 そうなると、疑問に思うんだ。

 どうして、お前はここに来たんだよ。

 ここからどこに行けると思ってるんだよ。

 暗い道だ。

 月はない。

 日付が変わる頃に。

 死体が詰まれる。

 血だまりに現れる死神の影は、俺とお前そっくりだ。

 そして。

 きっと、誰も残らない。

 この街だって残らない。

 権力争いの結果は、いつだって凄惨だ。

 最後に飯の種を見つけるのは第三者さ。

 ここで、終わりだと誰かが宣言しなければならない。

 そうだろ。

 分かるだろ。

 知ってるからこそ、ここにいるんだろう。

 あぁ、そうだよ。

 この勝負はな。

 仕組まれてる。

 もう、終わりだ。

 何もかも、終わりだ。

 時間の経過と共に状況は悪くなるばかり。

 もうすぐ、この街は飲み込まれるだろう。

 だからこそ、お前の死をこの街にプレゼントするしかないんだ。

 だからこそ、俺の死をこの街に捧げるしかないんだ。

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