第207話 父親の正体
俺は
俺の専用になっているハイヤーはそれはもう豪華な車だ。
生徒たちはその車の豪華さに羨望の眼差しを見せる。
専属についている運転手は接客態度が丁寧で気持ちがいい。
もちろん、ベロファーのスパイだろうからさ。気は許せないけどね。
園内では相当に目立つ存在になってしまっただろう。
まぁ、もう風間の救出は半分成功したようなもんだから地味を装うこともない。
今度、風間を連れて登校してやろうかな? みんな度肝を抜くぞ。
とはいえ、そんなことはできないかったりする。
実質、彼は監禁状態。聖域から外に出る許可はでなかった。
依然として、ジーストリア国内では死亡者扱いである。
ベロファーを睨みつければなんとかなりそうなんだけどな。
黙示録の解読は風間にとっても生き甲斐になっているようだ。
特に辛い環境というわけでもないし、様子を見ようか。
学生寮には盗聴器と隠しカメラ設置されていた。
どうやらベロファーがつけたものらしい。
黒いチューリップが排除してくれているから安心だ。
ベロファーの変態気質はどうにかならんものか?
下校をしたらハイヤーで学生寮に寄って、部屋の中からどこでもダンジョンを使って日本に帰った。
これなら俺の移動はバレないんだ。
風間のダンジョン化は有益だったな。
おかげで片井ビルには会議室にダンジョンができたんだ。
そのダンジョンをどこでもダンジョンに登録しているから、ジーストリアの学生寮から一瞬で片井ビルまで帰れてしまう。
登録名は片井ダンジョンと名付けた。
俺の所有ダンジョンと考えると感慨深いな。
かつて、ダンジョンを私物化した人間がいたのだろうか?
問題は戻ってくる時だったりする。
片井ダンジョンから移動できるのは、別の場所にあるダンジョンだけ。
つまり、片井ダンジョンからジーストリアの学生寮には戻れないんだ。
だから、ジーストリアに戻る時は学生寮の近くにあるダンジョンから戻るようにしている。
その時は気を遣うんだよな。運転手には戻ってくるところがバレないようにしたい。
だから、さも学生寮から出て来たように見えるようにしている。
運転手からベロファーに報告されるのは目に見えているからな。
今は片井ビルに帰っている。
俺の横にはくの一の
「もうしわけありません。
片井
5年前に死亡認定をされた俺の父親だ。
探索者の等級はD。
SとA級以外の等級の低い探索者は探索者協会の管轄だ。
そこを調べても父さんのことがわからないとは妙だな?
「関東に的を絞ったのかい?」
「はい。関東地方に存在する全ての協会を探りましたが、一切のデータがありませんでした」
おかしいな?
「父さんは間違いなく探索者ライセンスを発行していたんだ。記録がないことはないだろう?」
「関東に存在する3812箇所の協会を探りましたが、一切の情報がありませんでした。もしかしたら、登録されていた協会が潰れてしまったのではないでしょうか?」
そんなことで記録が消えてしまうんだろうか?
探索者の記録についてはわからないことが多いな。
俺は探索局の局長であるカーシャを呼んだ。
「悪いな急に呼び出して」
「いえ。大方のお話は総理からうかがっております。
「それがな……。直接、
俺はカーシャに経緯を説明した。
彼女は小首を傾げる。
「おかしいですね。協会が倒産しても、そこに登録されている探索者の情報は他の協会が吸収して引き継ぐだけですよ。だから、探索者の行動記録が不明なんてことは絶対にあり得ないんです」
やっぱりか。
そうなると、関東以外の協会が父さんの情報を所持している可能性がある。
協会は全国に1万件以上あるというからな。
「面倒なことになってるな」
「お任せください! 探索局は各都道府県に支部局が1箇所だけ存在します。その下にまとめられているのが無数に散らばった探索者協会なのです。支部局と連絡をとれれば探索者1人くらいは見つけられると思いますよ!」
「ちょっと、大掛かりになってしまうな」
「安心してください。外部には漏れないように慎重に進めますので。特に鎧塚防衛大臣には絶対に知られないようにします」
「すまない」
「そんな気は遣わないでくださいよ。
「そういってくれると助かるよ」
「それに、
「んーー。性格的にはただのおっさんかな」
「ふふふ。きっと優しい人だったんでしょうね」
「んーー。まぁ、そうかな。人畜無害というかさ。大人しい感じの人だったかもしれないな」
「寡黙でダンディなお父様……。素敵です」
どんな妄想なんだよ。
でも、カーシャが動いてくれるなら、すぐにでも解明しそうだな。
父さんがどんな探索者だったのか?
どんなダンジョンに挑戦して、最期はどこのダンジョンに潜ったのか?
その全ての記録情報を見れば、終焉を封印したという謎の探索者MAKOTOの正体がわかるはずだ。
しかし、数日後。
カーシャは俺に頭を下げた。
「申し訳ありません! まったく見つかりませんでした!」
おいおい。
「どうなってるんだ?」
「もしかして……。こんなことは失礼すぎて、いえないのですが……」
「可能性があるならいってくれ」
「お父様は無免許だったのでは?」
無免許探索者。
一切の公的補助を受けない違法な存在。
でも、それって、
「アイテムの売買は闇ルートだろ? 正直、そんな器用な人間じゃなかったと思うんだよな。それに警察の逮捕に怯えたりさ。無免許はマイナス面が多すぎないか?」
「でも、協会に記録がないのは無免許くらいしか考えられません」
うーーむ。
「探索者の裏業界を調べることは可能ですよ」
「どうやって?」
「鉄壁財団を使うんです。今や、世界に10万人以上も会員がいるんですから」
そういえば黒いチューリップのヤミエールも、似たようなことをいっていたか。俺の知らないところでどんどんと組織が大きくなるなぁ……。
しかし、財団を動かすのはどうだろう? 父さんは関東で活動していたわけだし、財団を使って裏業界を調べてもわからないと思うんだよな……。
「そもそも、無免許の場合は死亡認定はおろか、遺族に訃報の知らせなんてこないよな。公的補助がないんだからさ。保険だって対象外なんだ」
ん?
「そうか! 死亡認定だ!!」
誰が死亡認定を出したんだ?
5年前、父さんが死んだことを知らせて来たのは1本の電話だった。
「
「可能でございます」
「5年前の通話履歴でも?」
「お任せください」
よし。
「父さんと俺が住んでいたボロアパートにかかってきた電話番号が知りたい。めったに電話なんかかかってくる家じゃなかったからさ。調べればすぐにわかるはずだ」
さぁ、これで調べがつくはずだぞ。
父さんは何者なんだ?
一体、どこの協会に登録していた?
数日後。
「ちょっと、わくわくしますね。ここまで正体不明の探索者なんて存在しませんからね! お父様は何者なんでしょうか?」
本当にそうだよな。
ただのおっさんだと思ってたのにさ。
ここまで謎があるとはとても思わなかったよ。
「電話番号の宛先がわかりました──」
俺とカーシャは息の飲む。
さぁ、どこの協会だ?
父さんは何者なんだ??
「電話番号の宛先は……。探索局でした」
……え?
「あ、ですから、探索局の電話番号です」
おいおい。
「ええええええええええええ!? どういうことですか
それを聞きたいのは、こっちのセリフだ。
「この番号が、片井様がお父様と暮らしておられましたアパートにかかってきた番号でございます」
カーシャはノートパソコンを叩く。
「確かに、局の番号だけど。今は使っていないわね」
「どういうことだ?」
「詳しい資料は局で調べないとわかりません」
と、いうわけで、更に数日後。
俺と
また、わからなかったらどうしよう?
まるで、ゴールの見えない迷路に迷い込んだ気分だよ。
カーシャは神妙な面持ちで口を開く。
「電話番号は探索局の第4書庫のものでした」
「へぇ……。そんな所から父さんの死亡認定報告をしたのか?」
「詳細はわかりませんが、大まかな情報は調べることができました。稼働していたのは5年前まで。今は閉鎖された部屋になっています。もちろん、電話は解約されて使えません」
うーーむ。
謎が深まったか。
「5年前の書庫の管轄責任者を見て驚きましたよ」
ほぉ。
その記録が見れるのか。
「誰だったんだ?」
「鎧塚 古奈美。つまり、現防衛大臣。
おいおい。
結局、執着地点はそこか……。
母さんは、なにを隠してるんだよ?
父さんは何者なんだ?
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