第186話 鉄壁さん VS ベロファー【後編】
僕は全身に大火傷を負っていた。
特に酷いのが喉。
爆炎が喉の奥を焼いたのだ。
「ゲホッ! ゲホッ!!」
鉄壁さんにやられた謎の爆発の影響だ。
彼の首を短剣で斬った時に爆発した。
どうして爆発したんだ!?
ハンカチはただの布だ。
発火性はないはず。
どうして!? なぜだ!?
彼は赤い小石を僕に見せた。
「魔炎石。S級ダンジョン栄華で採掘していたのをさ。数個くすねておいたんだ」
「ゲホッ! ゲホッ!!」
な、なにぃいいいいい!?
「ハンカチの中にな。魔炎石を忍ばせておいたんだよ」
そ、そうか、魔炎石は少しの衝撃で発火する。
あの爆発は、短剣が魔炎石に接触したから発動したんだ。
し、しかし、自分だって爆発に巻き込まれてしまうじゃないか。
「俺は
んぐ……。そ、そういうことだったのか。
「この戦法には大きな問題点があってな。俺を瀕死状態にするには、別に首以外の動脈を斬ることでも可能なんだよ。だから、ハンカチを狙ってもらわなくちゃならない」
そ、そうか!
だから「へっぽこ剣技」なんて煽って、わざわざ僕が首を斬ることに固執するように仕向けたんだ。
「でも、おまえは首以外を斬る選択肢はなかった。なにせ、そんなことをすれば俺のアドバイスを真に受けたことになるからな」
くぅうううううううううううううう!
す、全て計算だったのか……。
「こっちは汗をかく暇なんてないよな。ふふふ。ゲームでもさ。こういう時ってあるだろ? 対人戦のさ。トラップを仕掛けて相手が引っかかるの待つ瞬間。ほぼ100パーセント、罠に引っかかるのはわかってるんだけどな。わくわくどきどきしてさ。ほくそ笑むのが止まらない感じ。わかる?」
「ゲホッ! ゲホッ!!」
「ああいう時ってポテチを食べる進み具合が半端ないんだよな。1枚づつじゃなくてごそっといっちゃうんだ。もう、味なんかよりわくわくが勝っちゃうんだろうな」
こ、このぉおおおおおお!!
「時間が止まってたからな。その罠にかかった瞬間は見れなかったけどさ。爆発した瞬間はどんな顔をしたのかなって。ふふふ。きっと大汗をかいてたんじゃないだろうかってね。想像したらまた笑けてきたよ」
こ、こいつぅううううううううううううううう!!
「おまえは首をかっ切ることに固執していた。おそらく、今までそうやって対象を恐怖させてきたんだろう。誰だって首に剣を突きつけられたら怖がるからな。でも、今回は、それがあだになった。プライドの高いおまえだからな。へっぽこ剣技と煽った瞬間に絶対に引っかかると思ったよ。……絶対にね」
ぼ、僕のプライドを逆手に取って……。
「今は火傷が酷くて汗をかいてるかよくわからんな。爆発の火力が汗を蒸発させたのか? もっと汗をかかせないとゲームの勝ちにはならないよな」
ぐぬぅううううううううううううううううう!
と、とにかく、今はこの火傷を回復しなくては!
ハイポーションはさっきの爆発で破壊されてしまった。
新しいハイポーションを
「おっと。そうはいかない。壁パンチ」
「ひぃいい! デ、
も、もう目の前まで壁が飛んで来ている。
なんて速さだ。
止まった時の中で逃げて──。
「ああーー、ゴホッ! ゴホッ!!」
ダ、ダメだ! 喉が焼けて声が出ない!!
か、かろうじて避けれたが移動距離が短すぎる!!
「ふむ。どうやら爆発の影響で時を止める時間が短くなっているようだな。それ、もう1枚。壁パンチ」
「ひぃいいいい! デ、
か、壁が速い!!
し、しかし、の、喉が保たない!!
「あーー、ゴホッ! ゴホッ!!」
さ、3メートル移動するのがやっとだ。
しかし、辛うじて避けれている。
「ふむ。咳をするたびに能力が切れてるな。集中力が切れるからかな?」
ぬぐぅううっ!
こ、考察されている。
弱点を知られるのはまずい!!
誰も知らない
「もう1枚いっとこうか。それ、壁パンチ」
は、速いぃいい!!
「デ、
ひぃいいいいいいいいい!!
声が出ないぃいいいいいい!!
きょ、距離を取らなければ!!
「ふむ。やっぱり、咳と同時に出現するな。つまり、喉と時を止める能力が関係ありそうだ」
こ、こいつ、真実に迫ってきてる!!
「壁パンチ」
んぐぅうううう!
逃げるので精一杯だ!!
「デ、
「ああ、やっぱり咳だな。つまり、時間が止まっている世界の中で呪文かなにかを詠唱していて、その文言が咳で途切れるからスキルが解除されるんだ」
こ、こいつ、すさまじい洞察力だ。
そうやって戦って来たのか!?
なんてやつだ! 無敵なのは防御魔法だけじゃなかったのか!!
「ゴホッ! ゴホッ! え……………!?」
う、嘘だろ………………!?
あ、あの数は──。
僕は氷りついた。
空中に10枚の魔法壁が浮いていたからだ。
「だいたい能力の仕組みがわかったところで壁パンチの連打をしてみようかな。こんだけあれば当たるだろう」
む、無理だ……。
こ、この喉では、あの量は……。
「ゴホッ! ゴホッ!!」
よ、避けれない。
「んじゃあ、いってみますか」
ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!
やめてくれぇえええええええええええええええええええええ!!
「壁パンチ」
僕の全身にすさまじい速度の魔法壁が接触する。
「あぎゃあぁああああ!!」
僕の体は魔法壁に運ばれて、ダンジョンの壁に激突した。
「げふぅううッ!!」
い、い、痛い……。
い、痛すぎる……。
し、し、死ぬ……。
「おーーい。さっき、汗をかいてたよな? かなりの量だったぞ。つまり、このゲームは俺の勝ちでいいよな? もしもーーし。聞こえてるかぁ?」
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