第175話 鉄壁さんの幸せ

 風間 潤志郎は生きている。

 しかも、ジーストリアはその実態を日本政府に隠しているんだ。

 島内の情報漏洩を異常に取り締まっていることといい。あの島国にはなにかある。

 これは相当にきな臭くなってきたぞ。

 

 時間は夕方の5時になっていた。

 ジーストリアは2時間の時差があるから夜の7時か。

 

 どこでもダンジョンを使えば片井ビルから一瞬で帰れる。

 とはいえ、戻るのは学生寮の近くにあるダンジョンなんだ。

 あまり遅い時間に夜道を歩くのは問題がある。島内は軍人や警官が巡回をしているからな。怪しい行動はできるだけ避けるのがベストだろう。


真王まおくぅん」


「もうそろそろ。帰らなくちゃ」


 と、抱きつく 衣怜いれに言い聞かせる。


「ま、 真王まおくん……。さっきから私の腿に硬いのが……。あ、当たってるんだけど……」


 流石に久しぶりの 衣怜いれだからな。

 石鹸とリンスの匂い。

 サラサラした輝く金髪。

 スベスベの真っ白い肌。

 極めつけはプニプニ当たってるHカップの爆乳だよ。

 

 言い聞かせるのは俺の下半身だったか。


「わ、私はいいよ……」


 と、真っ赤な顔で言う。


 いかん。

 理性が……。


  衣怜いれは体を熱らせた。


「で、でもね……。あ、あんまり激しくしちゃダメだよ。わ、私も久しぶりだから……。か、感じ過ぎちゃうかも……」


 理性がぶっとんでしまった。

 男というのは、よくわからん生き物だ。

 気がつけば 衣怜いれに激しい口付けをしていた。俺の手は彼女のミニスカートを捲る。


 もう、獣のように盛ってしまった。


 彼女が「ダメ」「ストップ」という度に、俺の興奮は高まる。

 まるでガソリンに引火したように、性欲が爆発した。


  真王子まおこに変装して単身で活動するのは、男の本能を削り取っていたのかもしれない。それは、まるで豹柄のように穴だらけ。

 その隙間を埋めるように彼女の温もりが注がれていく。

 ああ、俺は男だったんだな……。


真王まおくん。大好き……」


  衣怜いれは身を震わせながらも、精一杯の言葉を発した。

 嗚咽にも似た喘ぎ声の中で、何度も……。


真王まおくん。 真王まおくん……」


 ああ、そうか……。

 俺は彼女を愛しているんだ。





 気がつけば夜の7時。

 いかん。ゆっくりし過ぎてしまった。


 2階の会議室では、みんなが俺の帰還を歓迎する宴の準備がされていた。


「みんな、すまん! もう帰らないと」


「「「 えーーーーーー!? 」」」


 急いでビールで乾杯する。

 久しぶりの酒は最高に美味い。

 からあげと寿司を口の中に掻っ込んで日本に帰ったことを実感する。


 美味い。

 やっぱり、生まれ育った国は最高だよ。


 寿司の横にはお吸い物がついている。


 くぅううう……。カツオ出汁最高……。

 胃袋に染みるぅうう……。


 紗代子さんは残りをお弁当に詰めてくれた。


「社長。これ、あっちで食べてください」


「うん。助かるよ。やっぱ、日本の寿司は最高だわ」


「古奈美さんが、仕事を早く終わらせて急いでこっちに向かっているようですよ。やっぱり、もう帰るのですか?」


「母さんには、元気にしてるって伝えといてよ」


 リュックから取り出したのは、超激レア便利アイテム。どこでもダンジョン。

 これを使えば一瞬でジーストリア付近のダンジョンに移動が可能だ。


 俺はそれを会議室の壁にくっつけた。

 すると、取っ手だけだったアイテムは、一瞬にして扉の姿へと変貌する。


「んじゃ。また、帰ってくるからさ」


 向こうに帰ると厳しい情報監視が待っている。

 このネット時代に一切の連絡手段がないんだからな。

 別れる辛さはひとしおだよ。


 みんなは目に涙を溜めていた。


「社長……。無理をしないでくださいね」

真王まおさまぁあ」

「片井さま……」

真王まおくん……」


 ここにいると、本当に帰るのが惜しくなるよ。

 俺って幸せだったんだなぁ……。


「みんな元気でな。すぐに帰ってくるからさ」


 俺は扉の中に入った。

 もう、その中はジーストリアのダンジョンだ。

 こんなにすぐに帰れるのにな。

 日本からは、およそ7千キロも離れている。


 今は夜の10時。


 ちょっと遅くなりすぎたかもしれない。

 学生寮までは徒歩15分ってところか。

 できるだけ、巡回している警官に見つからないようにしよう。


 俺はフードを深々と被って、目立たないようにして自分の部屋へと戻った。




 次の日。

 再び女子学生、 真王子まおこの日常が始まる。

 

「おはよう。 真王子まおこ


「おう。おはよ」


「昨日はよく眠れた?」


「おう。おかげさまでスッキリだ」


「うん。疲れを吐き出した感じだね」


「ははは」


 出してスッキリするのは男の性だよな……。


 さて、やることは決まっているぞ。

 風間のプロフィールに載っていた、彼が死亡認定を受けたダンジョンに潜ることだ。なにか手がかりがあるかもしれないからな。

 そのダンジョンはA級だから、1年生の俺が潜入することはできない。

 これは学園からの指定で、1年は死亡率を下げるためにB級ダンジョンまでしか潜入できないんだ。

 秘密裏に潜入するにしてはバレた時のリスクが大きいからな。

 なんとか、許可をもらって探索に入りたい。

 1年がA級に入る方法……。


「今日も放課後はコラボ企画の打ち合わせだな。最近、 華龍ホアロン 先輩ぱいせんに慣れてきた」


「ははは。コルは先輩に人形扱いされてたもんな」


先輩ぱいせんは優しいんだ。慣れれば居心地がいい。いい子にしてると飴くれる」


「それは良かったな」


先輩ぱいせんは今年で17歳。だからS級探索者の試験を受けるといっていた」


 そういえば、2年生の入れるダンジョンってA級までいけたよな。

 つまり、ブラックス先輩と 華龍ホアロン 先輩ぱいせんはA級まで入れるんだ。


「これだ!」


「どれだ!?」


 コラボを利用すればA級ダンジョンに入れるぞ。


「も、もしかして 先輩ぱいせんのことを気にしてるのかな? それだったら安心して欲しい。最近、慣れたってだけで、ボクは 真王子まおこの方が……」


「……うん。これなら順調に進むぞ」


「ま、 真王子まおこの方が……。す……す……」


「コラボに最適なダンジョンを見つけたぞ。へへへ」


「ボ、ボクは 真王子まおこの方が上なんだ。か、勘違いするなよな」


「はぁ? なんの話だよ?」


真王子まおこったらぁああああ!!」


ポカポカポカポカポカポカ!!


「い、痛い! 叩くな! どうしたんだコル!?」


「ボクは 真王子まおこを選ぶ」


「なんの話だよ?」


「あうう……。 真王子まおこ 先輩ぱいせんとどっちを選ぶかって話」


「だから、なんの話だよ」



 放課後。


 先輩たちとコラボの打ち合わせ。


 探索するダンジョンは事前に学園に提出しないといけない仕組みだ。

 

 俺たちは風間が行方不明になったダンジョンを指定する。

 これは俺の強い希望だ。

 もちろん、怪しまれないように、もっともらしい理由を完璧につけたけどね。

 要はコラボに最適ならそれでいいんだよ。理由なんていくらでも考えつく。チャンネル登録者1億人の配信者は伊達じゃないって。


真王子まおこ……。事務局に提出したダンジョン潜入の許可だがな……」


 と、ブラックス先輩が深刻な顔を見せながら帰ってきた。


「却下された」


 はい??


「あのダンジョンには入れない」


「どうして!?」


「これを見てくれ」


 申請書には却下の判子がデカデカと押されていた。

 特記にはその理由が明記されている。



『S級ダンジョン栄華に入ることは島国の許可された者だけとなっている』



 S級ダンジョン?


 おかしいな。

 ジーストリアのアプリではA級ダンジョンになっているんだが?

 それに栄華だと? ダンジョンに名前がついてるってことは国家指定ダンジョンじゃないか。




────

皆様に大事なお願いです。

今回、性描写を書きました。

具体的な箇所の表現は避けたつもりですが、それでもかなり刺激的だったかもしれません。これでもかなり修正したのですが、だいぶ具体的なのかも……。

しかし、物語上で『愛』を表現するのにどうしても必要だと思ったのです。

決して、サービスのエロシーンではありません。

若い男女の恋人同士なら、あり得る話だと思ったのです。


とはいえ、カクヨムの規定が厳しいのは十分に承知しております。

もしも、やりすぎ、不快、など感じられましたら、運営に報告する前にコメントをいただけると幸いです。すぐに修正対応をさせていただきます。

今回は、攻めた創作、を念頭に執筆をしてみました。

なにとぞ、ご理解をお願いいたします。


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