第174話 風間の生死
俺は大和総理に風間 潤志郎の生死について確認していた。
テレビ電話越しなので、総理の凛々しい顔がよく見える。
相変わらず、太く釣り上がった眉は健在だ。
ジーストリア
2年生の職員は、日本政府には死亡情報を送信済みだという。そうなると、俺が入学する前になるのだが、総理は知っていたのだろうか?
「そんな連絡は受けていないな」
やっぱりな、そんな貴重な前情報を総理が隠す理由がない。
「それどころか、彼は確実に生きている」
確実だと?
「なにか連絡する手段があるんですか?」
「いや、ない。彼が使っていた通信衛星からの連絡は完全に途絶えている」
「じゃあ、どうやって生死を?」
「あなたの部下が発明したアイテムを使わせてもらったんだ」
俺の?
「青い飴さ」
ああ、
魔晶石の粉末を混入させた特別な飴。食べると特殊な魔力を発して、独自の地図アプリでその位置を感知できるんだ。
「じゃあ、風間が青い飴を食べたんですか?」
「彼の強い希望でね」
「どうして?」
「詳しくはわからない。ただ
ふぅむ。潜入捜査に
「では、その風間はどこにいるのでしょうか? 飴の魔力はどこの位置を差していますか?」
「以前としてジーストリアさ。現存する地図アプリでは島の外観にはモザイクがかかっているがね。オーストラリア大陸の東方。確実に島のある場所に彼の反応がある」
「なるほど」
島内の具体的な位置まではわからないのか。
「あなたも知っていると思うが、あの飴の魔力は死ぬまで有効だ。アプリに位置反応があるということは、彼が生存している証だろう」
そうなると風間の死は完全に偽装工作だな。
彼は2年生。学園は3年制だから、卒業まではあと1年間ある。
それまで日本政府に隠し通すつもりだったんだな。
しかし、そんなことをしてなんになるんだろう?
「彼を生かすには理由がある。基本は知っている情報を吐かせることだ」
ああ、映画みたいな話だな。
「拷問とかするんですかね?」
「そういうことになるな」
「うう」
早く助けてあげたい。
「もう1つは洗脳だな。時間をかけてジーストリアのスパイに作り上げる」
日本を調べるつもりか。
でもそうなると、おかしいな。
あの学園は探索者界隈でも世界トップクラスだ。
日本はその点では遅れている。
「スパイを使って日本のなにを知りたいんでしょうか?」
「あなただよ」
「はい?」
「ジーストリアが知りたいのはあなたのことさ。片井
「俺のことは配信を見ればわかるでしょう。しかも、
「そうでもないさ。あなたが使う
そういえば、魔法壁の倍化は誰もできないみたいだな。
「
「別に隠してる技じゃないですけどね」
……そもそも、単純に倍化してるだけなんだよな。
誰でもトレーニングを積めばできる気がするんだけど……。
「まぁ、拷問や洗脳は推測にすぎない。もっと、他の理由だって考えられるさ」
「確かに……。日本人は珍しいですからね。他国の情報を仕入れるいい機会かもしれない」
そうなると場所だなぁ。
島の人口は5万人。広さは300キロ平方メートルだ。日本でいえば淡路島の半分の広さ。小さな島国とはいえ、当てもなく街中を探すのは骨が折れるよ。
「片井殿。日本政府がなにか協力できることはあるだろうか?」
協力かぁ……。
「うーーーーーーん……。ありますね」
「おお! なんでも言ってくれ!」
「んじゃ、リストを送りますね」
ふふふ。
以前から気にはなっていたんだよな。
なので、欲しい物はリスト化しておいた。
「梅干し、お茶漬けの元、漬物、カップラーメン、めんつゆ、そばとうどんの乾麺……。片井どの……。和の食材ばかりだな」
「ジーストリアって日本の飲食店がないんですよね。寿司はおろか、牛丼屋すらないんですからね。困ったもんですよ」
旨い食事は力が湧くからな。
潜入捜査には欠かせないよ。
「日本人で上陸したのはあなたと風間の2人だけだからな。これはビジネスチャンスではないか」
……なるほど。
島民5万人が日本食の顧客になるわけか。
牛丼、寿司……。天ぷら屋なんかもいいな。すき焼き、てっちりも面白い。甘味処も人気が出そうだぞ。ぜんざいにおはぎ、みたらし団子。
これは絶対に繁盛確定だな。みんなで美味しい物を食べてさ。ふふふ、島民の笑顔が目に浮かぶ……。
って、いかんいかん。
ついつい経営者視点で物事を考えてしまうよ。
今は風間の行方だよな。
「ふふふ。片井殿。出店の際は日本政府に出資させてくれたまえ。こちらにはあなたに対して山のように恩義があるのだからな。返したくてウズウズしておるのだよ」
「ははは。じゃあ、その時は甘えます」
やるからには徹底的にやりたいよな。
味、料金、接客。全てにおいて隙がない和食店。
鉄壁の飲食サービスだ。
これはミッション完了後のお楽しみだな。
なにはともあれ、風間を見つけないと話にならん。
「片井殿。風間の行方について当てはあるのだろうか?」
俺は
その魔法壁の表面に
「これ。彼の情報を入手したんですけどね」
「ぬおおおおッ! 個人情報の入手は風間でもできなかったことだ。流石は片井殿だよ!!」
いや、別に大したことじゃない。
俺には
「そんなことより。ここ見てください。下の特記です」
そこには死亡日時と探索に入ったダンジョンが書かれていた。
調べたところ、定着型のA級ダンジョンだ。
「おお! つまり、そのダンジョンに潜れば風間の行方がわかるということだな!」
「そういうことです」
「あっぱれ!! 流石は片井殿だ!!」
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