第164話 デザイアの下着
「もしかして……。
いや、そういう問題じゃない。
俺の体は、片井
ガン見されても問題はないが、触られたら男の正体がバレてしまう。
なんとしても主要箇所だけは触られるのを死守しなければならん。
それに、なんでコイツは、こんなにも俺の体に興味があるんだよ?
怪しまれているのかな?
「安心して欲しい。
おまえもな。
いや、そんなことはどうでもいいんだ。
俺の体を探られるのは避けたい。
「あ、あっち行ってろよ」
「ボクは
「はい?」
「どんな可愛いの履いてるの?」
うわ、コイツは本気だ。
ガチで言ってる。
「バ、バカ!」
回り込むんじゃない。
正体を探られる以前の問題だ。
俺にだって羞恥心はある。
「へへへ。見せろーー」
「わぁああああ!!」
「純白か。……良い」
「変態っ!!」
突然笑い声が響く。
「ブヒョヒョヒョ! なんですの
いや、シンプルなイメージで白の下着にしてるだけだ。
実際は男物のボクサーパンツだからな。それを
そんなことより、下着姿で堂々とこっちにくるんじゃないっての。
「下着には女のセンスが出るんですのよ? そんな貧相な下着では女の品格が知れますわね」
いや、俺にそんな品格はない。
もう、なんとでもいってくれ。
「プププ。恥ずかしくてこっちを見れないようですわね」
えーーと。
こういうのって、コンプライアンスっていうのかな?
いや、違うな。どっちかというと道徳心か。
「こっちを見なさいな
なんだか、よくわからん名前が出てきたが、きっと有名な下着メーカーなのだろう。
女生徒たちはデザイアの下着を羨望の眼差しで見ていた。
「すご! リズだってぇ。いいなぁ」
「うわぁ。素敵ぃ」
「流石はデザイアさんだわぁ」
「最新のリズ・ジャルメルだわ」
「お洒落ねぇ」
言ってろよ。
俺は見ないからな。
「フフフ。
いや、15歳はまだ子供だろう。
「
「せめてシルク生地で刺繍くらい欲しいですわねぇ。
いいんだよ。
15歳はシンプルな下着で。
「
ほぉ。
処女宣言ですか。こいつ、以外と古風な考えだな。
もっとビッチかと思っていた。
まぁ、俺にすればどうでもいいけどさ。
「女というのはそういうものでしょう。ぷぷぷ。いざという時に殿方が残念がるのはどちらの下着なのかしらねぇ。
「知らん知らん」
「さぁ、ご覧なさいな。優しい
「大きなお世話だって」
「あらぁああ? 怖いんですのぉおおお? 負けを認めるのが怖くて怖くて仕方ないんですのぉおおお?」
「負けってなんだよ」
「ブヒョォオオ! 負けは負けですわ。あなたは負けを認めるのが怖いんでしょう? ぷぷぷ。本当に意気地のない女ね」
「そこまでいうなら見るけどさ」
「ほほほ。あら? 少しは見込みがあるようね」
「本当に見るぞ? いいのか?」
「ブヒョ! いいに決まっていますわぁ。存分に目に焼き付けるがいい!! 庶民との格の違いを見せつけてあげますわ!! トラウマになるまで敗北感を味わうがいいですわぁああああ!! ブヒョヒョヒョォオオオ!!」
やれやれ。
俺はデザイアを見た。
彼女は仁王立ちで、自分の下着をこれでもか! というほどにアピールしていた。
それは赤と黒のレースの下着。豪華な花の刺繍があるデザイン。確かに、高価な下着って感じだ。
「特注ですのよ」
やれやれ。
どうやら、この言葉がとっておきだったようだな。
これを言うタイミングをうかがっていたらしい。
彼女は完全に勝利を確信したようにドヤ顔をしている。
周囲の女生徒は「うわぁ、すごぉい!」と騒いでいるが、なんてことはない。
下着は下着だ。
「ブヒョヒョヒョ! これが
ああ、なんか勝ち誇っている……。
「うう……。ボクは
コル。
張り合うのはやめてくれ。
デザイアはコルの言葉を完全に無視していた。
もう、そんなことが気にならないくらい勝利を確信して悦に浸っているのだから。
「ブヒョヒョヒョォオオオオオ!」
彼女は上機嫌で離れていった。
いや、勝ち誇ってるけどさ。
いいのか?
初めて見たのが俺だぞ?
22歳のいい大人だ。
愛しの殿方じゃないんだが……。
……まぁ、記憶からは抹消しておくけどさ。
☆
学園にはシャワールームが完備されているんだけどさ。そういうのも本当に困るんだよな。
体育の授業のあとは特にね。
「汗かいたな。
「…………」
……
これは仕事なんだ。
不可抗力だから許して欲しい。
んで、裸をバスタオルで隠していると、
「ブヒョヒョヒョ!
また、おまえか!
いい加減にしろ。
「
だったらアピるな。初めての殿方に申し訳が立たん。
しかし、
「
と、いうので、しっかりと見てやった。
各業界からスカウトが来てるだけのことはある。
一流モデルである母親ゆずりの綺麗な裸体だったよ。
……おまえが見ろと言ったから見たんだからな。
「ブヒョヒョヒョォオオオ!!」
いや、だから、勝ち誇っている場合かよ……。
やれやれ。こんなことで気を病んでいる場合じゃないな。
俺にはやることがあるんだって。
学園には食堂や教会、トレーニングルームなんてのがある。
特別なのは女子専用のメンタルヘルスケアルームだろうか。
ここは生理や出産、性被害を扱った女子生徒だけが入れる特別な場所だ。専門医が配属しており、女だけが利用できるコミュニケーションルームがある。
こういう場所を探るには女の姿が最も有利なんだよな。
他にも、飲食の持ち込み可能なパソコンルームがあったりしてさ。
日本の高校よりは、遥かに充実しているだろう。
とはいえ、ネットの閲覧はかなり制限されているけどな。
ジーストリア独自のサーバーなので、他国の者と簡単にやり取りするのは難しい。
それにメールのやり取りは監視対象だ。気軽に使うには気を遣う。片井ビルや日本政府に向けてメールを送信することはできない。そんなことをすれば俺の身元がバレてしまうだろう。目的を達成するまでは穏便に行きたいな。
俺が探している風間 潤志郎は2年生だ。
制服に付いてる星形の勲章は2つ。
食堂や教会ならば2年生と接触が可能なんだがな。
喋る理由が問題だ。
自然な流れで日本人学生について聞くのが正解なんだけどな。
その話題に行くまでが難しい。
突然、目の前の生徒が軍服を着た男たちに囲まれた。
「な、なんですか!? あなたたちは!?」
「島国情報漏洩罪で逮捕する」
「じょ、情報漏洩!? も、もしかしてSNSに海の写真を載せたことですか?」
「そうだ」
「ジーストリアの名前は載せていませんよ!?」
「島国の法律では風景写真をネットにアップすること、島外へ持ち出すことは一切禁じられている」
「そ、そんなぁ……」
生徒は手錠をはめられて強制収容所へと連れて行かれた。
そこへ入った者は2度と戻ることはないという。
実はこれ。街中でも何度か見かけた光景なんだよな。
情報漏洩による逮捕。
わずかな漏れでも上層部は監視対象にしているらしい。
平和な島国に見えて、そこだけは異様に厳しいんだ。
俺も入国する際は厳重に注意された。
島に行き来する業者は全ての端末をチェックされるらしい。
そこまで隠す理由がまったくわからんがな。
とにかく、監視の厳しいこの国では、怪しまれないのは鉄則だ。
風間の情報は自然な会話の流れで集めなくてはならない。
そのためには、2年生と仲良くなる必要があるな。
なにか良い方法はないだろうか?
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