第170話 2年生の先輩

 俺は、コラボができそうな2年生のインフルエンサーを探した。


 その中でも目立っているのは2人。


 1人目は、ブラックス・ゲインというアメリカ人の男。

 チャンネル登録者は200万人。

 同級生なら誰もが知ってるイケメン配信者だ。

 身長は高く、16歳にして、既に有名国立大学を卒業している。

 そして、両親がゲイン財閥という金持ちだった。

 高身長、高学歴、高収入。

 いわゆる3高をリアルに体現しているキャラ。もちろん異性からはモテモテ。女生徒からの人気も去ることながら、ネット上でも相当な人気者だ。

 探索者の等級はA。戦い方は独特で、槍に水魔法を絡めた 水属性槍術アクアスピアを得意とする。配信動画を見ればわかるが、その腕は中々のものだった。


 2人目は、チャン  華龍ホアロン

 16歳。中国人の少女。

 チャンネル登録者は100万人。

 明るいキャラと可愛い見た目で人気がある。

 魔拳士タイプの探索者で、その拳法は魔法を付与しており凄まじい威力を見せる。

 等級はブラックスと同じA級だ。


 俺は、2人にヅイッターを使ってコラボ依頼のDMを送った。

 2人の返事は決まっていた。

 それは面接をして決めるというもの。

 まぁ、俺はまだ1回しか配信してないからな。慎重になるのもわかるよ。


 面接は2年生の校舎にある専用会議室。

 俺はコルと一緒にそこに行くことになった。


 よし。

 2年生の校舎に入れたぞ。


「やっぱり 真王子まおこはすごいな。1年生が憧れる2年生の校舎に入ってしまった」


「コルも頑張って配信したじゃないか。その結果だよ」


「でも、コラボの依頼は 真王子まおこがしたじゃないか。行動力がすごすぎるよ」


 ま、俺には目的があるからな。

 

 行方不明の2年生。

 風間 潤志郎を見つけ出すこと。

 それがここへ来た理由なんだ。


「うわぁ……。ワイバーンガールだ」

「ふふふ。噂のワイバーンガール。可愛いわねぇ」

「ワイバーンガール。イケてんなぁ」

「いい……」

「噂の1年生だ。たしかに天使かも」


 心なしか、みんなにジロジロ見られてるな。


「ねぇ。 真王子まおこ。ワイバーンガールってなに?」


「私もわからん」


 思ってたのと感じが違う。

 もっと殺伐としているのを想像してたんだけど……。

 それにワイバーンガールってなんだろう?

 配信の時に倒したのってカニのモンスターだったんだけどな……。


 会議室には2人が待機してた。


 ブラックスは冷ややかに笑う。


「なるほど。ワイバーンガール……。ネットニュースでは千年に2人の美少女ってことになっているな。噂通りの見た目だ」


 やれやれ。ネットニュースのタイトルは恥ずかしいよな。

 それに、やっぱりわからない。


「その、ワイバーンガールってなんですか?」


「ふ……。君たちは初日から噂になっているのさ。スピードスターワイバーンを倒した1年生なんて前代未聞だからね。学園内ではもっぱらの噂話さ。スピードスターワイバーンを倒した少女。略してワイバーンガールさ」


 なるほど。

 俺たちは、初日の授業で遭難してS級モンスター、スピードスターワイバーンに襲われたんだよな。

 俺とコルがワイバーンを倒したあとは、 元老院セナトゥスに助けてもらったんだ。

 まぁ、学園内じゃあ大ごとか。

 噂になるのも頷ける。


「まさか、そのワイバーンガールにコラボ依頼をもらうとは。本当に驚いているよ」


「いきなりですいません。まだ、初心者なんですけどね」


「いや。これは俺にとってもメリットがあるんだ。君たちは有名人。たった1回の配信で登録者50万人だなんて快挙だよ。ネットでは探索エンジェルズなんて呼ばれているからね」


 ははは……。また、変な二つ名がついているなぁ。


「君たちの配信を見たけど、実際に会った方がいいよな。人気が出るのも頷けるよ」


 まぁ、ブラックスの心象は良さそうだな。


「今回は面接という名目だがな。そんなのは1年が2年の校舎に入る名目にすぎない。実質は軽く話してどっちとコラボをするのか決めて欲しいだけさ」


  華龍ホアロンは人懐っこい笑顔を見せた。



あたしも話せて嬉しいある」


 

 中華娘らしく、語尾にあるがついているのはデフォルトの喋り方らしい。


「ワイバーンガールとのコラボなら、絶対に楽しいコラボができるあるよ。ダンジョングルメの企画とか面白そうある!」


「なんですか、それ?」


「ダンジョンキノコはちまたのグルメでは有名な食材ある。でも、中には毒が入っている危険な種類もあるあるよ。で、そのキノコを互いに食べ比べしてみる企画あるね!」


「た、楽しそうですが……毒が入ってたらどうなるんです?」

 

「即死ある」


「いやいやいや……」


「安心するある! 毒消しポーションは持参してやるから絶対に大丈夫ある! 即死しそうになったら即座に飲むよろし! ギリセーフある!」


「いや。即死だからアウトでしょ」


「ははは! 絶対に面白いある!」


 やれやれ。

 グルメ企画は面白いが感覚がバグってんな。

 

「ははは! コルは喋らないあるな? 元気ないある」


「ボ、ボクは……」


「わかったある! そういうキャラ作りあるな!?」


「え?」


「ボクっ子ある!」


「え? あ、あの……。あわあわ」


「ははは! なんか可愛いある!」


  華龍ホアロンはコルを抱きしめた。


「お人形さん、みたいあるぅ! 可愛い〜〜」


「あうううう……。ま、 真王子まおこぉ。助けてぇ」


 ははは。

 なんかめちゃくちゃ明るい奴だな。


「ふん、くだらん。で、 真王子まおこはどっちとコラボをするんだ?」


「えーーと……」


 そう問い詰められると辛いな。

 まぁ、2人ともとコラボをするのがいいかもしれない。


「先に言っておくがな。俺とコラボをした場合は他の配信者のコラボを1ヶ月制限させてもらう」


「なぜですか?」

 

「話題作りの戦略だよ。俺とコラボをしてすぐに他の者とされたんじゃ、俺の価値が薄れてしまうからな。チャンネル登録者200万人である俺の実力を、そんなに低く見積もられては困るのさ」


「……なるほど」


「まぁ、こんなことは言わなくても明白だがな。 華龍ホアロンはチャンネル登録者100万人。俺は倍の200万人。理屈でいえば答えは出ているよな」


 確かに。

 チャンネル登録者を増やすならブラックスとのコラボがうってつけだ。

 しかし、会話が楽しそうなのは 華龍ホアロンなんだよな。


 俺の目的は2年生の風間の行方を探ることだ。

 そう考えるとブラックスが良さそうなんだよな。

 彼は2年生の中では人気者。女にも男にも人気がある。 華龍ホアロンと比べて遥かに人脈がありそうだ。

 彼なら風間のことをなにか知っているかもしれない。


「ああ、言っておくがな。 華龍ホアロンを選んだあとに、俺とのコラボはあり得ないからな。理屈でモノを考えられないバカとは関係を持たないようにしているんだ」


「厳しいですね」


「俺には夢がある。将来はミスター鉄壁とコラボがしたいんだ」


「へ、へぇ……」


 こいつも俺のファンかよ。


「理にかなった行動。それはミスター鉄壁の真骨頂さ。彼はいつでも理屈で行動する男だ」


 いや、そうでもないがなぁ……。


「俺はそんな彼を一流の探索者として尊敬しているんだ」


 ははは……。恐縮です。


「ミスター鉄壁ってライノマンのことある? だったらあたしも大好きあるよ! 壁パーーンチ」


 と、コルのほっぺを優しくえぐっていた。


真王子まおこぉ。助げでぇ〜〜」

 

 さて、どっちを選ぶかな……。



────


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