第155話 モテモテ無双
「君……。可愛いね。配信とかやってるの?」
と、声を掛けてきたのは同じ1年生だった。
薄緑の髪の毛をした、チャラい感じの少年。
容姿はイケメンだ。
それにしても、いきなり可愛いとか平然と言える気がしれん。
「俺……。いや、わ、私は、配信はやってないな」
まぁ、本当はチャンネル登録者1億人越えなんだけど……。
「僕はエイテルケイト・フローランス。エイテルって呼んでくれ」
と握手を求めて微笑んだ。
やれやれ。
まぁ、握っといてやるか。
「壁野
俺の言葉は
よって、おそらくだけど、翻訳された俺の紹介は「
便利なスキルだよな、本当に。
「おいおい。
「えーー。エイテル様に声がけされるなんて羨ましいぃいい!!」
「エイテル様ぁああ……。私にも声をかけてくださぁい」
「エイテル様、今日もかっこいいわぁあ」
「私、生でエイテル様を見るの初めてぇ」
「
「うう、ジャパニーズガール、羨ましい……」
なんだ、なんだ?
今日は入学式でみんな初顔合わせだよな?
この島には選ばられた天才児だけが来てるんだ。
それなのに名前を知られているってことは、こいつもデザイアって女と同じで有名人なのか?
「んーー。日本人じゃあ、僕のことは知らないかな。僕はチャンネル登録者50万人のダンジョン探索配信者なんだよ」
「あーー。なるほど」
デザイアといい、こいつといい、有名な配信者がこの学校に入学してるんだな。
「あれ? 驚かないね? みんな大喜びするんだけど?」
「え? そ、そうかな? うひゃーー! すごい! は、配信をしてるんだぁああ!! 私、驚いちゃったなーー!」
「いや、そこじゃないんだけど……」
え?
「あ! ご、50万人でしょ! 数に驚けってことでしょう! そうでしょう!?」
「ま、まぁ……。普通はそこに反応すると思うんだけど……」
「50万人はすごい!!」
「ははは……」
ふぅ。
とりあえず自然な会話を心掛けなくちゃな。
「君の見た目なら、たちまち人気者になるだろうね」
「は? なんのことだ?」
目立たないように潜入捜査しないといけないのにさ。
「配信だよ。君の可愛さなら男は間違いなく放っておかないね」
「ははは……」
やめてくれよ。
俺はそっちの趣味はないんだからさ。
「黒髪のポニーテールが本当に似合ってるよ」
「そりゃどうも」
「和の美しさというのだろうか? 清楚なイメージがあるね」
俺に?
「ははは。やめてくれよ。俺……じゃなかった。私のイメージじゃないって」
「ふふふ。飾らない喋り方は好感が持てるな」
おいおい。
こいつ、俺をナンパするつもりか?
適当にあしらって校内を探索しておきたいな。
「じゃ、じゃあ、私はこれで」
「ああ、待ってよ。せめて連絡先を交換しないか? せっかく知り合ったんだからさ。今度ゆっくり食事でもしようよ」
うわぁ……。
こういうの15歳でできちゃうのかよ。
どういう人生を歩んできたんだ?
俺が15歳の時といったら、ラノベ、アニメ、ゲームの毎日だったよな。
それくらいしか楽しみなかったし。異性と会話するなんて異次元だったな……。
「ふふふ。アドレスの交換をしようよ」
「悪いな。せっかくの誘いだけどさ。携帯を忘れてきてるんだ」
もちろん嘘だが。
「そうか……。それは残念だね」
気づけよ。
おまえはすでに振られている。
「じゃあさ。今度、配信に出てくれないかな?」
「はぁ?」
めげない奴だなぁ。
「君が出てくれたら僕のチャンネルは更に人気が出てしまうよ。当然、報酬も払うしね」
別に金には困ってないんだ。
生活必需品は防衛省の援助があるしな。
金だって自分の口座から億単位で自由に引き出せるし。
しかし……。
俺のメインチャンネル。防御魔法で探索チャンネルは、もう既にトップクラスの登録者だからな。
1からスタートする配信ってのも面白いかもしれない。
ジ・エルフィーをプロデュースしてる時に思ったけどさ。
ゼロから始めて、チャンネル登録者がグングン伸びていく感じはたまらないものがあるよな。
それを
あーー、いかんいかん。
俺には潜入捜査という使命があったんだ。
「悪いんだけどさ。コラボをする気はないんだ」
「コラボ? 君はさっき配信はやってないって……。ま、まさか、配信を始める気かい!?」
しまった……。
もう始める気になってしまっていた。
「そ、その内な。ははは……」
「その時は、ぜひコラボをしようじゃないか!」
「いや。だからコラボはしないってば」
欲望には抗えんなぁ。
まぁ、いいか。この学園は探索の授業がメインだし、配信するチャンスはいくらでもあるだろう。
捜査の傍らで
まずは2人のライバルを超えること。
あの傲慢な金持ち美少女、デザイアが120万人。
チャラいイケメン、エイテルが50万人か。
この2人の登録者を抜くのが俺の目標……。
ふふふ。
なんか燃えてきたぞ。
「さきほどの話。聞かせていただきましたわ」
集まった生徒の中から、あのデザイアが現れた。その後ろには数人の取り巻きを連れて。
「なんですの?
またこいつかぁ。
「おまえには関係ないだろ」
「関係ありますわ。
また、自慢か。
「いいですわ。
「はぁ?」
「そうすれば、あなたのチャンネル登録者は爆上がり。あなたにとってはこれ以上ない恩恵ではありませんこと? ふふふ」
まぁ、確かにな。
でも、チャンネル登録者を伸ばすんだったらさ。ジ・エルフィーに助けてもらえばいいしな。
彼女たちの登録者は1500万人以上だし、デザイアより良い宣伝になるだろう。
「ちょっと待ってくださいよ。
「あらエイテル。あなたのチャンネル登録者はたかだか50万人でしょ?
「それは本人が決めることだよね。
いや、どっちもと言われても……。
「おいおい。信じられないぞ。
「初日からデザイアさんとエイテルくんにコラボ依頼を受けるだと!?」
「羨ましいわ。一夜にして有名人になれるわね」
「もうこの時点ですごいんだぜ!! デザイアとエイテル。人気インフルエンサーが並んでいるんだからな!!」
「すげぇえええ! デザイアは有名人からのコラボ依頼は厳選してるっていうぜ! それを一般人の
「可愛いは正義だな!」
「エイテル様とコラボとか恋のチャンスじゃない! むきぃいい!!
な、なんか盛り上がっているが、答えは決まってんだよな。
「悪いな。どっちも断るわ。まずは1人でやってみたいんだ」
場内は沸いた。
「断ったぁああああああああ!?」
「えええええええええええ!?」
「ないないないない! ありえないってぇええええ!! こんなビッグチャンスぅうう!!」
「嘘でしょ!?」
「日本人は坐禅をして悟りを開いているというが、
「ちょ、しょ、正気か!?」
「イッツア ジャパニーズマジック!? オーマイガッ!!」
「ポルカミゼ-リア!! 信じられん!!」
「ディオス ミオ!! そんなバカな!!」
……なんかめちゃくちゃ目立ってる気がする。
「壁野
いや、そう言われてもだなぁ。
「やっぱり日本人は信用できませんわ!! 最低な民族ですわ!!」
なんか引っかかる言い方だな。
なにか日本人に嫌な思い出でもあったんだろうか?
などと思っていると、俺の不思議そうな顔を見てエイテルが答えてくれた。
「彼女は日本人とイタリア人のハーフなんだよ」
「へぇ……。じゃあ、日本人の親になにかあるってこと?」
確か、お母さんがモデルで父親が銀行の頭取だったよな。
「銀行員の父親は再婚相手さ。彼女にとっては義理の父親。本当の父親は日本人の
「ええ!? よ、
「配信業界じゃあ結構有名なんだけどね」
はぁーー。
まさか、あの
容姿はモデルの母親に似たんだな。それだけは救いか。
「
性格は最悪だな。
「覚悟しておくことね! ブヒョヒョヒョヒョォオオオオオオ!!」
あちゃぁ。
笑い方は似ちゃってるよ。
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