第3章 美少女生徒 真王子ちゃん無双!
第154話 入学式は女の子
俺は
潜入捜査にはこの姿が都合がいいらしい。
壁野
15歳。
日本のダンジョン中学校を首席で卒業。文武ともに秀でた日本が誇るエリート学生……という設定らしい。
探索スタイルは剣士タイプ。
魔法は使わずに剣だけで戦う探索者だ。
そんな俺がやって来たのは、オーストラリアの東側にできた島国、ジーストリア。
そこにはジーストリア
建物の外観は中世ヨーロッパ風。
魔法学を教えるからな。その発祥は欧州だ。とはいえ、中にはコンビニなんかも設置されててさ。水道の水は飲めるし、不便はないかな。まるで、どっかのテーマパークにでも迷い込んだみたいだよ。とにかく、現代風にアレンジされていて便利はいい。
格好はもちろん学生服。
星の勲章は1つだけ。これが1年生の証。
女だからスカートを履いている。
もちろん、
入学式は各国から集められた天才探索者候補生がゾロゾロと集まる。
その雰囲気は一種独特だ。
多少の緊張感はありながらも、保守的な日本人よりフランクかもしれない。
とはいえ、全員が15歳だからな。
7歳も年上の俺が入ってるなんて、複雑な気分だよ。
言葉は英語で統一されている。
俺はまったく喋れないが、
「君、日本人かい?」
黒髪に黒い瞳は目立つらしい。
みんなは見慣れない人種に興味津々。
でも、興味本位で近寄って来るには理由がある。
「日本ってライノマンが住んでる国だよね!? 会ったことある?」
やれやれ。
ご本人が目の前にいるんだがな。
流石に正体をバラすわけにはいかないんだ。
「ははは。悪いな。知らないかも」
そんなやりとりを5、6回はしただろうか。
「ねぇ、あなた。日本人ならミスターTEPPEKIを知ってるかしら?」
鉄壁さんの呼び名は様々だ。
ライノマンを筆頭にライノ侍、サイ男、サイ忍者……。
海外では色々な呼び名で呼ばれている。
日本では鉄壁さんが固定名詞だけどね。
稀にさっきみたいに鉄壁の名前で呼ばれたりするけどさ。大方、動物のサイは固定されているようだ。
つまり、サイと探索者を彷彿させる名詞が組まれた名前は、全部、俺のことだな。
「ほら見て!」
と女子生徒は腕を捲った。
すると、肩にはサイのタトゥーが入っていた。
「えへへ。カッコイイでしょ?」
いや、引く引く。
恋人の名前を刺青で彫る人がいるって聞いたけどさ。その心境に近いか。
「なぁ、君はさ。ライノシーカーとはどういう関係なんだ?」
そんなに興味があるなら、ちょっとくらい、こんな試みも……。
「……まぁ、友達の友達のお母さんのお姉さんの友達が彼なんだ」
などと言ってみてしまう。
友達の友達の、といったらほぼ他人なんだけどもな。
いわゆるジャパニーズジョークだな。
すると、たちまち学生たちに囲まれてしまった。
「凄っ! どんな人なの!?」
「やっぱりサイの顔をしてるのかい!?」
「ANSOUダンジョンの攻略は凄まじかったよ! ライノマンは最高だ!」
「彼はジャパニーズ侍よね!?」
「ジャパニーズ忍者って噂もあるぞ!」
「サインが欲しいのだが!? あ、サイだけにね! HAHAHA!」
「素顔を見たことあるの!?」
「獣人という噂もあるよ?」
あああ、質問攻めだ。
ちょっとふざけすぎたかもしれん。
「見て見て。ライノマンの手拭いよ。サイのマークが可愛いでしょ?」
「僕の家にはライノシーカーのフィギュアがあるよ!」
「俺はコミックのライノ侍の大ファンなんだ! ナメンジャーズの映画には期待だね。今度、メインヒーローで出るらしいよ。ほら見てくれよ。今日、学生服の下に着て来たんだ。ライノ侍がプリントされたTシャツ!」
ははは……。
こんなに人気があるのか……。
「一度でいいから会って見たいんだよ! 頼む! 君の力でなんとか会わせてくれないかな?」
いや、もう会ってるからな。願いが叶って良かったじゃないか。
鉄壁さんの人気は海外でも不動になりつつあるようだ。
暗奏攻略の生配信はギネスに掲載されるくらいの知名度だからな。関連グッズは売り上げ絶好調。おもちゃもゲームも大人気だ。さっき紹介してくれたグッズの数々も、萌さんがデザインに携わった商品ばっかりだったよ。
そんな存在が、同じ学級にいると知ったら腰を抜かすだろうな。
それにしても、日本人は目立つな。
この学園が創立して4年。入学した日本人は2人だけ。
俺と、風間 潤志郎という少年。
風間は日本政府が送り込んだスパイだ。
16歳の天才探索者候補生らしい。
その実力は折り紙つき。既にA級のライセンスまで取得している。
俺は、その風間を探しに来たんだ。
彼は、1ヶ月前から日本政府と連絡が途絶えている。
風間を探し出すのが俺の任務。いわゆる潜入捜査。
それがこの学園に入学した理由。
だから、鉄壁さんの話で友達を作っている場合じゃあないんだよな。
できれば目立たずに捜査をするのがベストだろう。
「ふぅ〜〜ん。あなたライノマンの知り合いですの?」
それは随分と高飛車な少女だった。
後ろに取り巻きを連れて、かなりの身分と見える。
翡翠のように輝く瞳。
ボリュームのある赤毛をかき上げると、15歳とは思えないほどの大きな胸が揺れた。
スラリとした長身のシルエットはまるでモデルのようだ。
着ている学生服は特注だろう。キラキラとして上等な生地を使っているみたいだ。
どこぞの金持ちの子か。
視線からして高慢さが滲み出ている。他の生徒が俺に向けて見せていた羨望の眼差しとは明らかに違う。
面倒臭そうな奴だな。
ハッキリと言っておこうか。
「別に知り合いってわけじゃないよ。出身が同じ国ってだけだ」
「あらそうなの。ふーーん。でも、ライノマンと同じ日本人でしょ?」
「まぁね」
「彼にはどんな攻撃も当たらない。サイの顔をした無敵の探索者……。
「噂だよ。彼だって人間だしさ」
「いいわ。仲間にしてあげますわ」
はい?
「光栄に思いなさいよね。このデザイア・フィネッテが友達になってあげると言っているのですから」
ほぉ、まるで自分が有名人みたいな口振りだな。
周囲からは驚愕の声が湧き上がる。
「すげぇ! デザイアだ……」
「美しい人だなぁ……」
「綺麗ねぇ……見惚れちゃうわ」
「デザイアさんに誘われるなんて勝ち組じゃん。いいなぁ」
なんか有名人っぽいな。
何者なんだ?
「あなた、お名前は?」
「壁野
「じゃあ、
やれやれ。
お友達グループに誘われてしまったよ。
いかにも学生って感じだな。
友達作りをする上ならば入った方が良さそうなんだがな。
群れるのは捜査の邪魔なんだんよな。それに、高圧的な態度が鼻につくよ。入っても楽しくないだろう。
「せっかくだけど、遠慮しとくわ」
「な、なんですって?」
「聞こえなかった? 断るって言ったんだけど?」
「わ、
「初対面じゃん。あんま知らないし……」
「やれやれ。日本人は閉鎖的ね。もっと視野を広げて見て欲しいものですわ。
「へぇ……」
やっぱ金持ちの子だ。
美しい見た目はモデルの母親譲りってわけか。
そりゃ人気者にもなるだろう。
「
ほぉ、配信者をやってるのか。
15歳で100万人超えはすごいよな。
だから、知ってる奴がいたのか。
「ふふふ。これだけで、
そう言われてもな。
俺の利点って日本人ってだけじゃないか。
「それに
うわぁ、今度は留学自慢か。
まぁ、こんな女に正体を晒すつもりはないからさ。他人を装うけど、俺を友達にすれば日本人をグループに入れたことが、また彼女の自慢になるんだろうな。
周囲は沸いていた。
「すげぇ。あの日本人、デザイアさんに誘われてるぞ」
「羨ましい……」
「俺も誘われてぇえ」
「私も誘われたいわぁ」
ふむ。
俺の利点なし。
こんなグループに入ったらめちゃくちゃ目立つじゃないか。
潜入捜査の弊害でしかないよ。
「悪いけど、他の子を誘ってくれ」
そんなことより捜査が優先なんだよな。
「な、なんですってぇええええ!! このデザイアが誘っているんですのよぉおおおお!!」
だから、知らないってば。
「えええええ!? デザイアさんを断ったぁああ!?」
「マジか! あの日本人、デザイアの勧誘を断ったぞ!?」
「正気か!? チャンネル登録者120万人のインフルエンサーに誘われたんだぞ!?」
「すげぇえええ! これが大和魂か」
「信じられないわ……」
「オーマイガ!!」
「
あれ?
なんか逆に目立っている?
まぁいいか。行方不明の風間は2年生だからな。
トイレに行ってる間にちょっと学園内を捜索しておくか。
潜入捜査なんてさっさと終わらせて早く日本に帰りたいよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます