第145話 鉄壁さんは漢にモテる!
総理は上機嫌で語った。
「ふふふ。あの
「それは俺もちょっと感じてますね。俺の魅力の話じゃなくて、初めて出会った時はもっと嫌な人でしたからね。暗奏を攻略して以来、随分と人が変わってしまった」
「ふふふ。漢も魅了してしまうのが片井
「いや。だから、俺はノーマルですって」
「結局、私も骨抜きにされてしまったしな」
骨抜きって……。
「勝手にそうなっているだけでしょう。俺はなにもしてませんからね」
「ははは。知っているか? 日本の名だたる武将はな。戦地に女子を連れて行けなかったんだ。
「えええ……。驚きの史実ですね。つまり、その男を抱いてたってことですよね?」
「ふふふ。人の上に立つ人物はな、性別に関係なく、その人間の魅力に気がつけるものなのさ」
ふむ。
人間の魅力を感じ取れれば男も女も関係なく愛せると……。
「そう考えると、リーダーの資質ってことになりますね」
「ふふふ……」
それと俺の魅力とどんな関係があるんだ?
「片井殿……」
「はい?」
「可愛い顔をしているな」
「ぶん殴りますよ?」
「安心して欲しい。私には愛妻がいる」
「絶対に報告しますからね」
「すまん。ふざけすぎた」
やれやれ。
たまにウザ絡みしてくるのがこの人の悪いところだ。
楽しい食事は進む。
その間、総理は俺を大絶賛である。
それは本心からだろうけどさ。
意図的ななにかを感じざるを得ない。
「時に片井殿」
「はい?」
彼はまっすぐに俺を見つめた。
「政治に興味はないかな?」
ほぉら、来たよ。
さてはこの言葉を狙っていたんだな。
ちょっと俺の褒め方が露骨だったんだよな。
俺は目を細めた。
「ないですね。まったく」
「そ、そうか……。ま、まぁ、ないなら……。ないでいいんだ。うん」
やれやれ。
俺との関係に溝を作りたくないんだな。
でも、政治的には俺が欲しい、と。
正直な人だなぁ。
総理は少しだけ照れた。
「実はな。エルフの村は、私にとっても理想郷だったりするんだ」
「へぇ……。農業中心ののんびりした暮らしがですか?」
「うーーん。日本は成長しすぎたのかもしれん。必要な物は全て輸入だしな。自分の国で米さえ作れなくなってしまった」
「そういえば最近は輸入米が多いですよね」
「楽しく農業をして、みんなが平和に暮らす。エルフの村はこの国にとっても希望なのだよ」
「へぇ……。そんな風に思っているんですね」
「ふふふ。その場所を作ったのは片井殿だ」
「まぁ、成り行きですが……」
「あなたはエルフの国王だよ」
「はぁーー? やめてくださいよ。俺は人間ですってば」
「ふふふ。本当に自然体なのだなぁ……。従順なエルフを利用して巨大な財を築くこともできるだろうに。なんなら
「ちょ! 褒めすぎですってば! だからって政治家にはなりませんからね!」
そもそも俺だって邪な心がないわけじゃないんだ。
このまえだって、
こういうのって邪悪だと思うんだよな。
違法アップロード動画を視聴していた
あの時は、自分を棚に上げているようで心が痛かったよ。
果たしてこのことを総理に言うべきか? 言わないべきか?
言ったら幻滅されそうだしなぁ……。
「片井殿」
「は、はい」
「動画の件なのだが……」
「え?」
総理も観るのか? エロサイト……。
「暗奏の発生源がわからないのは不穏だな」
「ああ」
そっちか。
暗奏の発生が不明なんだよな。
俺はスマホの画面を総理に見せた。
「これは
暗奏の入り口が発生する1時間だけ録画動画が消失しているんだよな。
「やれやれ。日本政府でも保有してない動画だよ。
「暗奏の件だけは情報共有ができるんですよ。これは俺の動画でもあるので、総理の端末にも送りますね」
「うむ。感謝する」
だから、暗奏の情報だけは俺の自由にさせてもらう。
総理は、動画を見終わると眉を寄せた。
「暗奏が発生したのには秘密がありそうだな」
「誰かが意図的に隠しているように思えますね」
「
「そういえば、
「実はここ最近、
「そういえば、ギーベイクは、日本人を勧誘するのは初めてだと言っていましたね」
「日本政府としても、暗奏の件は調査しなくてはならない」
「ですよね。これは不穏すぎますから」
「片井殿。何度も助けてもらっているのに言い辛いが……。あなたの力を貸して欲しい」
え?
総理の話はトップシークレット。
それは5年前に滅亡したオーストラリアに関係する事案だった。
「オーストラリア大陸の横に新しい大陸が生まれていてな」
それは衛星を使った地図アプリでも観ることができない不思議な大陸。その部分だけモザイクがかかってんだよな。
ネットでも話題の正体不明のポイント。
そんな場所と俺になんの関係があるんだ?
「そこには探索者専用の学校ができていてな……」
が、学校?
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