第144話 鉄壁さんと総理のお食事会
〜〜片井視点〜〜
俺は総理にことの顛末を話した。
謎の監査官ギーベイクが
その後に、
これらの団体は都市伝説レベルの秘密組織だ。
しかし、総理は当たり前のように話しを聞いていた。
特に、
この団体が持っている特別な権限は政府の認可を受けているらしい。
暗奏のような強力なダンジョンが出現すると、率先して駆除に当たるのがこの団体なんだ。
政府としては大助かりだろう。
なにせ、自然災害を安全に処置してくれるプロフェッショナル団体なんだからな。
特別な権限を与えて自由にさせているのも頷けるよ。
ただ、リーダーの
大和総理のことは認めているみたいだけど、断片的な政策にはどうしても納得がいかないらしい。
「
「総理は以前から、
「うむ。奴は正義感の強い男だからな。私の政策には良い顔を見せないこともしばしばさ。特に環境大臣の
それは怖いな……。
「嫌いじゃないんだがな……。
これは政治的になにかあった感じだな。
「もしかして……。総理は
「……昔、ちょっとな。……色々あったんだ。まぁ、私は嫌われてしまったがね」
苦い思い出のようだな。
組織としての繋がりはあってもそれ以上の関係は作らないのか。
そういえば、総理が開催するイベントには
そういう関係があったからなのか。
「それで片井殿は……。そのぅ……。サ、
煮え切らない聞き方だな。
「俺が入会するか、気になります?」
「そ、そうだ……」
「…………」
「…………」
えーーと。
特に入会するつもりはないんだがな。
やっぱり、総理としても入って欲しくないよな。
表向きは協力しあっていても、リーダー同士で敵対していたんじゃあ、どこでぶつかるかはわからないよな。
などと、色々なことを考えていると、総理は全身から汗をダラダラと流し始めていた。
ああ、返答してあげなきゃな。
「入りませんよ」
「プハーーーー!! 息がつまったぁあああああああああ!!」
「なにをそんなに?」
「か、片井殿も人が悪い……。窒息死するかと思ったよ。それにても……ああ、良かったぁあ……」
と、胸を撫でおろす。
「そんなに入って欲しくないのなら止めればいいのでは?」
「こ、こればかりはな。たとえ、総理でもどうにもならんよ」
「俺が
「そうだ。あなたの意思は私の管轄外さ。これは善悪ではない。個人が抱く信念の問題だからな」
ふむ。
信念とは人の生き方だからな。
総理は個人の信念を大切にしてくれる人なんだな……。
一方、
強者は弱者を助けるもの。
悪のいない世界が正解。
この信念に反するものは全て敵。
こんな考え方だろう。
揺るがない信念があって、それを邪魔する者は完全に排除する。
そんな恐ろしい考えだ。
個人の信念を尊重する総理とは真逆の存在。
水と油だな。
総理は悲しそうにため息を吐いた。
「この世界は邪悪だ。……古くは18世紀。イギリスで産業革命が起こったことから始まる。資本主義が蔓延して、みんなの暮らしは確実によくなったが、
まぁ、気持ちはわからんでもないな。
たしか、イギリスの産業革命の発端になったのは蒸気機関車だったか。
石炭の利用によるエネルギー革命だよな。
ダンジョンが生まれた現代ではダンジョンテクノロジーが盛んだ。
ここでも、資本を持った人間が絶対的に有利。
「そんな中、エルフの村を作ったのは片井殿だ」
「まぁ……。別に功績ってほどでもないですけどね。エルフたちが困っていたから作っただけですよ」
「ふふふ。あなたは本気でそれを言っている。
震えた?
「なんで?」
「自分の上に立てるリーダーを見つけたからさ」
「俺がぁあ?」
「そうだ」
そういえば、そんなことを言っていたな。
「エルフの村は
「ふぅむ……。まぁ、エルフが平和主義だからでは? 人間はそうはいかないと思いますけどね」
「ふふふ。そうかもしれんな。だが、
「ああ……」
あの人は不器用そうだもんな。
みんなは怖がってついてこないよ。
「
「俺……。そっちの趣味はないんですけどね」
「ははは。そのうち求婚されるかもしれんぞ」
「やめてくださいよ……」
ただでさえ、
「
「いえ。そこまでは」
地上でスキルが使えるなんて、めったな話はできないよな。
「隠した方がいい。彼にとっては、今、もっとも欲しいアイテムかもしれない」
……たしかに。
地上でスキルが使えるならば、国家転覆も容易だ。
「気をつけます」
「うむ」
まぁ、
総理は酒をくいっと飲んでから、ニンマリと笑った。
「しかし意外だったなぁ……。あの
────
次回も総理と片井の食事は続きます。
そして、話しは深まって……。
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