第140話 横島社長の大失態
「あなたは俺の元部下に手を出そうとしたあげく、友人である総理に嫌がらせをしているという。これは看過できないな」
「そ、そんな! 待ってください!! だからってイベントのキャンセルはないでしょう!!」
「そんなことは当然だ」
「と、当然んん!?」
「それはそうでしょう。あなたは俺に攻撃をしてるんだからな」
「こ、攻撃ぃい!? んな物騒な!!」
「俺の元部下に手を出そうとしたこと。友人への嫌がらせ。イコール、それらは全て俺への攻撃と見なします」
「そんなぁあああああああああ!?」
「だから、防御します。……徹底的にね」
「ぼ、防御ぉ……?」
「ええ。鉄壁さんが使う、魔法壁みたいにね。その1つが仕事のキャンセルですよ」
「そ、そんな横暴なぁあ!」
「暴力的なのはどっちですか? 若い女性を襲おうと計画し、総理には政治的圧力を掛ける。俺にはあなたの方が横暴に見えるが?」
「お、お願いします! このイベントには100億円の経済効果が見込まれているのです!! 不動産の売買が鰻登りなのですよぉお!! なんとしても開催しなければならない!!」
やれやれ。
「そんなことは、あなたの事情でしょう。俺に攻撃をしておいて、その要望は通りませんよ」
「ふ、ふざけるんじゃないぞ! この若造がぁあああ!! だったらイベントのキャンセル料金を払ってもらうからな!!」
「ええ。その話はついてますよ。イベントの準備にかかった1億の費用はこちらで負担させてもらいます」
「グフフフ。それだけで終わると思うなよ小僧がぁあああ! このキャンセルで不成立になった不動産売買のマイナスもそっちに請求してくれるわぁああああ!!」
「ほぉ……」
「ガハハハ! 謝ってももう遅いぞ!! 貴様のキャンセルは明らかな営業妨害ともとれる! こちらの被害損額ぅうう!! その赤字を負担してももらう!! その額、100億円だぁああああああああ!!」
ふむ。
「俺に追加攻撃というわけですか」
「ギャハハハ! 当然だろう! そっちが仕掛けてきたんだからなぁあああ!!」
やれやれ。
「仕掛けて来たのはあんたの方なんだがな」
「グハハ! イベントをキャンセルしたことを後悔するがいいさ。100億の請求は土下座したってやめんからなぁああ!!」
「まぁ、俺は防御を続けるだけですよ」
と、俺はリストを見た。
「あなたは我が社に30件以上も仕事の依頼を出している。その全てをキャンセルさせてもらいます」
「なにぃいいいいいいいい!?」
「当然だろう。今後、片井グループはあなたの会社とは仕事をしないことに決めた」
「ふ、ふざ、ふざけるなよぉおおおおお!!」
横島社長は部下に損失額を計算させていた。
「おい若造! 貴様がキャンセルした全ての損失額が200億円という計算が出たぞ!! これがどういう意味かわかるか!?」
「あなたが受けるダメージでしょう」
「バーーーーカ! おまえん所が背負う負債だよぉおおおお!! 全額請求してやるからな!! キャンセルによって発生した負債額を全てだ!! 貴様の会社に200億円を請求するぅううう!!」
「ほぉ……。攻撃の手を緩めませんか」
「ぎゃははは! 当たり前だろうがぁ!! 貴様とは年季が違うんだよぉお!! 若造がぁああ!! どうせ貴様は鉄壁さんの甘い汁を吸う寄生虫だろうがぁあああ!! たまたま部下の生配信が当たって、大儲けしているだけにすぎん!! 自分の実力と勘違いしてんだよぉおお!! この無能がぁああああ!!」
社長は俺が鉄壁さんの上司だと思っているようだな。
まぁ、そっちの方が都合がいいか。
さて、
「では、そろそろこちらも攻撃の準備をしましょうか」
「なにぃいい? ギャハハハ! 貴様のような弱小企業が大企業である横島建設グループに攻撃だとぉおおお? いいか! 先に宣言しておく、謝ってももう遅いからな!! 土下座なんてもっての他だ!! こちらは200億円を全力で請求させてもらうからなぁああああああ!! 後悔しろ若造がぁああああああああああ!!」
「鉄壁さんは魔法壁で攻撃を防御したあと、どうやって攻撃するか知っていますか?」
「なにぃいいい? そんなことは日本国民なら誰でも知っているだろうが。壁パンチだよ。魔法壁をぶっ放して敵に攻撃する技だ。しかし、それと今はどうつながるんだ? まさか、おまえが電話越しに壁パンチを放つんじゃないだろうな? んん? どうやって攻撃するんだ?? んんん?? おこちゃまがぁあああ!! 物理攻撃なんか電話でできるかよぉおおお!! 小学生の喧嘩かぁあ!! 大人は法律で戦うんじゃぁああああああ!! それがビジネスなんだよぉおおおおおお!! おこちゃまはママのおっぱいでもしゃぶってろボケがぁあああああああああ!!」
俺は紗代子さんからリストを受け取った。
そこにはビッシリと事案が書かれている。
「あなたが請け負った仕事。その不備を調査しました」
「なにぃ!? ……ふ、不備だと?」
「ええ。横島建設グループが施工した建設、改修工事、その他もろもろ。その不備です」
「バ、バカを言うな!! 我が社は完璧主義なんだよぉおおお!! 不備なんか見つかるもんかぁああああああ!!」
「それを見つけてしまうのが、俺の優秀な部下なんです」
「なにぃいいいいいいいいい!?」
「横島建設に問題がある事案だけをピックアップしています。つまり、裁判をすればこちらが圧勝。そんな案件が、現時点で300件以上は見つかっていますね」
「さ、300件だとぉおおお!?」
「こちらも法律で対抗しようとしているんです。一応……大人ですからね」
「うぐぬぬぬ……。お、おかしいじゃないか! そ、そもそも、どうやってうちの顧客情報をそちらが入手できたんだぁ!?」
「被害者女性からいただいたんですよ。もらったデータだけで1万件以上ありますね。被害者女性たちは訴訟のために色々と策を練っていたようですよ。それで、弱点を見つけられなくて困っていたそうなんです」
「ふ、ふざ、ぶざけるな!! こちらに不備はない!!」
「ですから、もう既にそこから300件以上も見つかったんですって」
紗代子さんは優秀だからな。
「ぐぬぉおおお! こ、こ、こっちだってなぁああ!! 被害損額を釣り上げてやるからなぁああああ!!」
「ああ、言うのを忘れていました。訴訟案件は300件以上ですからね。当然、まだ増えますよ。1万件の資料の中から違法性が高い案件を全部。時効が成立するギリギリまで搾り出すつもりですから」
「な、な、な、な……なんだとぉおおおお!?」
紗代子さんはパソコンのキーボードを恐ろしいほどの速さでタイピングしていた。
そして、
「社長。追加の100件です」
「ああ、ありがとう」
うん。
上出来。
「横島社長。追加の100件が増えました。これで400件ですね」
「なにぃいいいいいいいいいいいいい!?」
紗代子さんは横島社長の端末に裁判事案のリストを送付した。
「リスト届きました? 心当たりあるでしょう?」
それは横島建設グループが携わった怪しい案件ばかりだった。被害者女性が社長を攻撃するために温存していた虎の子である。
「こ、これは……!?」
「小さな案件では図面や、契約書類の不備ですね。大きくなると耐震偽装とかでしょうか。これを追求したら間違いなく刑事責任でしょうね。損害額も1件あたり億を超えるでしょうし……」
「はわわわわわわわわわ……!」
「安心してください。訴訟における、そちらの被害総額はこちらで計算していますからね。ざっと400億円以上でしょうか」
「あ、あああああ………」
「ここでのポイントは以上って所ですね。少なくとも、400億円。という意味合いでしてね。それ以上に増えるという──」
「ああああああああああああああああああ……」
「あれ? もしもーーし。聞こえてますかぁ?」
────
次回!
横島社長はもう遅い!
に、ご期待ください!!
次回も防御からの壁パーーンチ!
(CV 沖田
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