第123話 俺の会社にいるかな?
〜〜片井視点〜〜
探索局の局長の後任が
こんな男が局長になれば、また不穏な金が動きまくる探索局の誕生だろう。
なにより、その秘書をするディネルアたちの苦労が心配だ。
問題は人選なんだ。
環境大臣の
その筆頭が
試しに、くの一
「
やれやれ。
やっぱり
就任期間が長引けばその傾向は助長しそうだな。
やはり、俺が介入しないと、エルフたちが辛い目に遭いそうだ。
「全般的には、いたってクリーンな仕事をしているようですね。……表向きですが」
「表向き?」
「その……。大変申し上げにくいのですが、法律の詳しい詳細までは、くの一の我々では暴くことはできないのでございます。申し訳ありません」
なるほど。
確かに、奴が初めて片井ビルを訪問した時も、100枚以上もある要項書を用意していたもんな。その不備を見つけることができたのは紗代子さんの力なんだ。
素人ではわからない法律を盾にして悪さをしているのが
大和総理が
敵は思っているよりも手強いってことだな。
さて、そうなると、法律に詳しい人が必須になるわけだが……。
法律に詳しくて、1300億円の復興費用を捻出してくれるような人物。
俺の会社にいるだろうか?
当然、俺は法律に関しては素人。その知識は一般人レベルだ。うちの会社で詳しい者といえば紗代子さんぐらいだろう。
もしも、彼女が環境省直属の探索局の局長になったら面白いだろうな。悪い点は全て改善されてさ。最高の機関が完成するんだ。片井ビルとも連携をとってさ……。きっと、探索者の境遇が今よりももっと改善されて、みんなにとって最高の環境になるのではないだろうか?
……いやでもなーー。紗代子さんは俺の会社ではなくてはならない存在だしな。彼女だって他に行くのは嫌がるだろうし。
たとえ出向という形であっても俺から離れるのは選ばないはずだ。
ジ・エルフィーの長女エマはどうだろうか?
彼女は紗代子さんから色々と教わって、その頭角を表してきている。今や第二の紗代子さんといっても過言ではないだろう。でもな、やっぱりエルフなんだよな。まだまだ地球の文化には疎い。この前なんか、関西人がお好み焼きをおかずにして白ごはんを食べることに驚いていたっけ。
とても、局長を任せられるほどの実力があるとは思えないよ。
そうなると……。
萌さんはどうだろうか?
彼女はダンジョン自衛官の中でもエリートだったからな。
仕事ができて頭がいい。
彼女なら探索局の局長だってできるかもしれないぞ。
ちょっと彼女にそれらしい話題を振ってみるか。
と、第2片井ビルに行ってみた。
「あ! 社長! 見てください、これ! 海妖堂が制作したライノマンのフィギュアですよ!! えへへ! この色の塗り方! 職人技ですよ!!」
「お、おう……。すごいですね」
「あはは! これ300体限定で1体30万円もするんですよ! それがもう完売です。もちろん、萌たんが1体キープしてますけどね。グフフ」
「あ、あはは」
「あ、そうだ! 社長! これも、あれも、見てください!!」
ああ……。
どれも凄まじいクオリティーの商品ばかりだ。
ポスター、ゲーム、おもちゃ、食品のパッケージにいたるまで、どれも完成度が高い。
このライノマンソーセージの箱のデザインは超人気イラストレーターじゃないか。全部、萌さんが交渉してくれたのか……。
第2片井ビルが発展しているのは彼女の恩恵が大きすぎるな……。
「にゃははは! もう、毎日が楽しくて楽しくて仕方ありませんよ! 部下のエルフたちは優しくて真面目な子ばっかりだし、自衛隊みたいに規律に厳しくありませんしね。みんな自由に意見を出し合って伸び伸びと仕事をしているんです! しかもそれが会社の売り上げに直結しているんですよ! 萌たんにすれば天職なのかも。にゃはははーー!」
「は、ははは……」
水を得た魚とはこのことか。
言えん……。
探索局の局長の話など、とても言い出せそうにないぞ。
そこにやって来たのは同じく第2ビルを任せているハーフエルフのカーシャである。
「あら、萌さん。限定フィギュアの話はもうまとまったんですか?」
「うん! 見て見てカーシャたん! これは萌たんの分だよ。デヘヘ」
「んもう。職権濫用が凄まじいです」
「だってぇ。ユーザーの気持ちをわかるにはユーザーになるしかないんだよ?」
「う! 正論すぎて反論できない」
「
「ぐああ! やられたぁ〜〜」
「にゃはははは!」
やれやれ。
もう親戚のお姉ちゃんと会話する小学生だよ。
「そういえば萌さん。この前の売り上げのグラフ化はできてますか? できてなければ私がやっても構いませんよ? 萌さんは営業も商品の企画も全部やってしまわれるんだから」
「にゃはは。そんなのはすぐに終わってるよぉ。あと、次の企画と業者の目処はこっちねぇ」
「す、すごい……」
萌さんって本当にすごいよな。
どう見たって小学生なんだが、仕事は人一倍できてしまうんだから。
カーシャは深刻な表情を見せた。
「
と、いうので、俺は第2片井ビルにある俺専用の社長室に案内した。
「え? 降格して欲しい?」
カーシャの要求に驚きを隠せない。
「萌さんが仕事ができすぎて、私の立場がないんですよね。今、いただいている給料が貰い過ぎてて申し訳ないんですよ」
「いやいや。みんなのフォローをしてくれてるじゃないか。紗代子さんだって君を認めているんだ」
「んーー。でも、実際は萌さんの秘書やアシスタントって感じです。なので、支店長は萌さん1人にしていただいて、私は支店長補佐とか秘書辺りが妥当かな、と」
おいおい。
真面目にもほどがあるだろ。
萌さんが仕事ができるなら、自分は楽ができて給料だってたくさん貰えて高待遇だろうにさ。それをわざわざ降格の希望を出すなんて……。
それだけ、仕事に一生懸命なんだろうな。
彼女のこの熱量を無駄にするのは勿体無いよ。
あ! そういえば……。
カーシャは大学を主席で卒業した優等生だったな。
経済学を専攻して、法律にも詳しいと聞く。
しかも、その就職先が……。
「カーシャってさ。以前は探索局にいたんだろ?」
「ええ。1ヶ月ほどですが……。あの
おおおお!
彼女ならうってつけじゃないか!!
「例えばだけどさ──」
と、俺は次期局長の話をした。
「ははは。そんな夢物語な。局長になるには経験が必要ですからね。最低でも局に10年は勤めないとなれませんよ」
「まぁ、既存の常識ではな」
「……どういう意味ですか?」
「そんな常識に縛られて
「…………」
ん?
なんだか顔が赤いな?
「どうかしたか?」
「……あ、いえ! な、な、なんでもありません!」
「まぁ、今回の話は俺の一存で決めれることじゃないけどさ。カーシャの考えを聞きたかったんだ」
「私は……。わ、私は……。
はい?
「……いや、あの……。探索局の局長になる話だよ? 俺のことじゃないって」
「は、ははは……。も、もちろん、例え夢物語だったとしても、局長になれるんだったら私は人生をかけて頑張るつもりです!」
「んーー。頑張るって言葉より、楽しいかどうかかなぁ?」
「そりゃあもう! やり甲斐があって楽しそうです!」
ふふふ。
その言葉が聞きたかったのさ。
俺は大和総理と食事をすることにした。
「ほぉ……。ハーフエルフの22歳か。随分と若いな」
「仕事振りと能力は申し分ありません。なにより、思考が優秀なんです」
「うーーむ。人間的に能力が高くてもなぁ」
「経験と実績ですか?」
「当然必要だろう。実績のない人間を就任させるなんて周囲が黙っていないよ」
「でも、環境省の……。
「能力と経験は違うよ。なにせ1300億円だからな。それなりの実績のある人物じゃないと、うんと言わんだろう」
ふぅむ。
まぁ、確かにな。
じゃあ、
「テストをして、
「そう簡単にはいかんよ。それに、もしも、カーシャが局長になれたとして、全く使い物にならなかったらその時の責任はどうするのだ?」
「…………」
カーシャは紗代子さんが認めるほどの実力者だからな。
俺が見ていても感じるし、使い物にならない、なんてことはまず100%ないだろう。それでももし、俺の采配にミスがあるとするなら……。
「俺が被りますよ」
「え?」
「1300億円くらいなら、俺の会社の収入だけで補填は可能だと思います。年内は無理でも、翌年には完済しているでしょう」
「か、片井殿……」
「それくらいにカーシャは信用ができる人間だということですよ」
「ううむ! あっぱれ!!」
と、扇子を開く。
「流石は片井殿だ!! あなたのいうことなら信用ができる!! 私はカーシャを認めよう!!」
よし!
次は
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