第114話 エルフたちの安住
俺たちは片井ビルの会議室に来ていた。
エルフたちと俺の会社が協力しあって生きていく道を模索する。
ピクシーラバーズなんて名前も変更したい。
これは
なんだか私物化してる臭いがする嫌な名前だ。
俺はエルフたちが気に入る名前をつければいいと思う。
ところが、
「
エリンの母マリーザさんを筆頭に全員のエルフたちが口を揃えて同じことをいう。
俺がかぁ……。
「ははは。
俺ってネーミングセンスに自信ないんだけどなぁ。
エルフたちの保護施設だからな……。
えーーと、
「シンプルに、エルフの村、とか?」
流石に簡単すぎるか。
しかし、エルフたちは大歓喜。
「あは! 素敵です!!」
「流石は
「ああ、とても懐かしい、心が温かくなる名前……」
「エルフの村万歳!!」
「お兄ちゃん! とっても素敵な名前だと思うの!」
「
「これは、ありがたいです! 未来永劫、存続させたい名前です!」
あ、なんか反応いいな。
「じゃあ、謄本の名前変更届けを出そうか。これからはエルフの村だ」
村長は、
「マリーザさんでいいかな?」
みんなのも反応も良さそうだ。
マリーザさんは俺の前で跪いた。
「ありがとうございます。敬語はおやめください。マリーザとだけお呼びいただければ幸いです」
エルフたちは従順だ。
ディネルアも呼び捨てが希望らしい。
忠義に対する、明確な主従関係は彼女らにとって心の安寧をもたらすようだ。
考えてみればそうかもしれない。
人間が支配するこの地球で頼れる人間は俺1人だけなのだから。
しばらくすると、エルフの村は完成されていた。
ピクシーラバーズの看板は破壊されて、手彫りの大きな看板が設置される。
【エルフの村】
街中にあると介護施設か温泉宿かと勘違いしてしまいそうになるがな。
とにかく、エルフにとって過ごしやすい場所になる予定。
全国の困っているエルフを保護する、エルフが運営する団体だ。
テレビやニュースでも取り上げられて話題になり、世界中でも注目されるようになった。
一応、登記簿の所有者は俺なんだがな。
それは公には秘密。
これは他者から彼女たちを守るために仕方のないことだ。
いつ何時、
エルフがもっと社会的に認められて、彼女たちが自由に生きれる世界になれば、マリーザが所有者になってもいいのではないだろうか。
などと思っていたのだが、それは新年が明けてすぐのこと。
「は? 俺が名誉村長?」
「はい。村には肖像画がたくさん飾られております。立派な石像も建築いたしました」
おいおい。
「ご安心ください。素顔のままですと来客の際に素性が発覚してしまいます。よって、サイ顔のまま、名称は「鉄壁さま」として祀っております」
それならまだマシ? ……かな?
ま、まぁ許容範囲か……。複雑だが。
それにしても、
「祀るって?」
「毎日、菓子と御神酒を捧げ、満月の夜には石像を囲んで感謝の踊りを捧げております」
神格化されとるがな。
「なんとかならんのか、それ?」
「なりません。私どもの感謝の気持ちは未来永劫消えることはないでしょう。そればかりか、あなた様に対する敬愛の気持ちは膨れ上がるばかりです」
「はぁ……」
やれやれ。
変な宗教が誕生しないことを祈るばかりだ。
まぁ、神的な存在がいれば、彼女たちの結束力も強くなるか。
弱いコミュニティーが強く発展するには必要な存在なのかもしれないな。
「
「ああ。エルフの村から転職希望者を募るって話だよな。まぁ、基本は強制じゃないんだ。
「ありがたいお言葉です。それで、支店の就職希望者を募ったところ、希望者が殺到しておりまして、その全員が無料でもやらせて欲しいとのことです」
「いや。給料は払うから安心してくれ」
「ちなみに、私も転職希望を出したいのですが……」
「いや。おまえは村長の仕事をしてくれよ」
「ですよね。うう……」
支店に配属されるのはエルフの村でも成人している者だけに限られた。
「エリンも! エリンもお兄ちゃんと働くぅうう!! ちーむわーくぅうう!」
いや、流石に子供はダメだ。
義務教育を受けさせて、卒業後に考えてもらおうか。
そんなわけで、エルフの村からは30人が俺の社員になってくれた。
これで、現在の社員はこうだ。
秘書の
事務総括の紗代子さん。
ジ・エルフィーのメンバー5人。
西園寺不動産からの出向者10人。
鉄壁のくの一
エルフの村から30人。
計95人だ。
うん。
相当に大きな会社になったな。
全員が口が堅く、従順だ。
俺を筆頭にトラブルのない人選となっている。
最高の環境といっていいだろう。
不思議なことに男は俺1人だけでな。
他は美人と美少女だけというとんでもない事態にはなっている。
まぁ、仕事ができればそれでいいしな。問題はないだろう。
人材は十分に集まった。
これなら支店を作ってもなんとかやっていけるかな。
あとはリーダーなんだよなぁ。
紗代子さん的にバリバリにできる人。
ジ・エルフィーの長女ネマがいい感じなんだがな。
2人とも見知った仲。俺の側に置いておきたいんだよな。
と、なると新しいリーダー格が欲しい。
彼女は隠密行動に注力してもらいたいしな。
そうなると新しい人材か。
支店構想について、みんなで話し合った方が良さそうだな。
新年の挨拶もかねて、懇親会を開こうか。
☆
暗奏攻略後。
慌ただしく過ぎ去った12月。
エルフたちはエルフの村を作って安住の地を見つけた。
平和になったこの国は新しい新年を迎える。
ともに戦った者たちは片井ビルに集まって新年の挨拶をすることになった。
ビルの看板は相変わらずブルーシートが被せられ、正面入り口のシャッターは堅く閉じられている。
しかし、地下の駐車場に続く道は解放されており、奥に進むと門松が置かれていた。
受付をしているのは晴れ着に身を包んだジ・エルフィーの面々である。
褐色肌にとんがり耳。ダークエルフの着物姿はなんとも珍しい。
ネネは朝からテンションが高い。
「あ、西園寺社長! カーシャさん! 明けましておめでとうございます!!」
2人は着物を着れなかったことを残念に思いながらも、ネネの明るい挨拶に、まるで親戚に会うような感覚に包まれた。
カーシャは片井の素顔を見れることに胸を躍らせる。
(年末はバタバタして結局会えなかったからな。ああ、片井社長……。どんな方なんだろう?)
────
次回。
いよいよ、カーシャと片井が出会います!
他のキャラになりますが、ざまぁはまだ残っております。お楽しみに!
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