第101話 次長の謝罪
「どうかぁああああああああ! お許しくださいぃいい!!」
「うーーーーん」
紗代子さんはどう考えてるのかな?
「社長のお考えにお任せいたします」
「ほぉ」
「社長が、裁判を指示するのなら、私は全身全霊をかけて最速で裁判の手続きを始めたいと思います」
「そかそか」
「片井社長ぉおおお!! どうか、どうかお許しくださいぃいいいいい!!」
「うーーん。どうしようかなぁ? ……反省してる?」
「はいぃいいい!! しておりますぅうう。心の底から反省しておりますぅうう!!」
紗代子さんは冷徹に言い放つ。
「あとは社長のご判断かと」
「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
……やれやれ。
「まぁ、反省してるみたいだし裁判は許してやるか」
「承知しました。良かったですね。次長」
「ありがとうございますぅうううううううううう!!」
でも、まいったな。
1つだけの提供は法律で確定してるのか。
「ねぇ次長。なんとか免除にはならないかな?」
「も、申し訳ありません。何分、オメガツリーを倒したあとにドロップした宝箱の映像が残っておりますので。探索局が引いたとしても、ダン国連が動くのは明白でございます」
ダン国連はダンジョン国際連合か。
ダンジョンを共通の敵として世界各国が同盟を結んだ団体だ。
「ダン国連はSS級アイテムのことにまで介入するのかい?」
「はい。それはアイテム鑑定士の判断ですが、未知のアイテムがSS級(国内級
)の上位種。SSS級(世界級)のアイテムの場合になりますと世界的監視対象物となりますから。世界で管理するアイテムとなるわけです」
なるほど……。
俺のアイテムは未鑑定だからな。
S級はおろか、SS級かすらも不明だ。
とはいえ、有益な効果と、ユニーク性を考えるとSS級は確定だろう。
もしかするとSSS級の可能性すらある。
鑑定士がSSS級の判定を下せば強制没収になるのか。
生配信に宝箱が映っているからアイテムの言及は避けられない。
それなら1つだけ提供して納得してもらうのが得策か。探索局に寄贈すれば、ダン国連の追求は回避できそうだ。
全部のアイテムを強制していないだけでも優しい法律なのかもしれないな。
それに、生配信で映っていたのが宝箱だったから良かったんだろうな。
アイテムが素のままで映像に残っていたら全部提供しなくちゃならかった。
そう考えると恐ろしいよ。
宝箱からゲットしたアイテムは3つ。
どこでもダンジョン。
そして、
中でも、
そんな中で1つだけ提供するといったら……。
俺は2階に行った。
そこは特別に作ったアイテムの研究室である。
室長はジ・エルフィーのメンバー、ネミだ。
俺は彼女に事情を話した。
「え!?
「研究途中で悪いんだけどさ。法律で決まってるみたいだから」
「それは構いませんが、まだ解読が終わっていませんよ。帰還先の場所が書き換えれない状態なんです」
そのまま使えば魔族の国に入ってしまう。だから、彼女にはその行先の変更を頼んでいたんだけどな。
部屋の中には古代魔字の解読書類が山のように積まれていた。
これを一生懸命に調べてくれていたんだな。
研究は半ばだが、仕方ない。
提供するならこのアイテムくらいしかないだろう。
「探究心に火をつける形で終わってしまって申し訳ないな。この埋め合わせはするつもりだよ。特別ボーナスを支給しようか?」
「そ、そんな……! お金なんていりません。
「そうか……。それにしても悪かったな。なにかお詫びをさせてくれよ」
ネミはキョロキョロと周囲を見渡してから、誰もいないことを確認すると顔を赤らめた。
「で、で、では……。お、思い切って……。お、お願いしてもよろしいでしょうか?」
「え?」
彼女は俺の胸にそっと手を当てて、頭を下げた。
「お、お、お、お願いします……」
ああ、なでなでか。
エルフの姉妹はこれをすると喜ぶんだよなぁ。
「ありがとうネミ……。すごく助かったよ」
なでなで……。
彼女は全身を真っ赤にして、これでもかという恍惚の表情を浮かべていた。
「よ、よ、喜んでいただいて、こ、光栄です」
こんなお礼でいいのだろうか?
俺はやむなしに
ああ、超貴重なアイテムが……もったいないなぁ。
「ふほぉおおおお……。こ、これは見たこともない指輪ですねぇえええ!!」
そりゃそうだろ。
世界でも1つしかない激レアアイテムだからな。
書き換えが完了すればダンジョンから一気に片井ビルのに帰ることが可能だったんだぞ。どこでもダンジョンと併用して使えば最強のアイテムになっただろう。
オークションにかければ数千億円はくだらない。
彼の話しによれば、この指輪はアイテム鑑定士による鑑定を終えてダンジョン美術館で展示することになっているらしい。
まぁ、鑑定士がやるなら説明書はいらないだろう。
ネミがやっていた研究結果は黙っておこうか。貴重なデータをわざわざ教えるのは癪だからな。危険なアイテムだが展示くらいなら問題ないはずだ。
探索局が入館料で儲かるくらいだな。
「あ、あのぉ〜〜。ほ、他にはどんなアイテムが入っていたんでしょうか?」
「……それ、言う必要があるのか?」
「あ、いえ。あはは……。この要項書にはね。2つ目以降は10万円以上で買い取るとしっかりと明記していますからね。無料ではないんですよ!」
時価数千億のアイテムを10万だと?
「舐めてるの?」
「あはは……。し、失礼しましたぁ!」
探索者の権利に国が無理やりに介入してきているだけだからな。
少々冷たいが、厳しく対応しよう。
なんの努力もしていない探索局が、SS級アイテムに匹敵する
こいつらにとってはボロ儲けだろう。
その時だ。
シュタッ!!
俺の前に
くの一の
「片井さま。
ほぉ。
ようやっと、決着をつける時が来たか。
これが本当のラスボスかもな。
「片井さまの読みは的中しておりました。忍者の捜査を
いや、
「
「……片井さま。再び客人が来られるようです」
客人だと?
外に控えるくの一と連絡を取っている模様。
「どうやら、
シュタッ!
片井ビルに1人の女がやって来た。
白い肌のエルフ……。
背が高くてスラッとして、まるでモデルのようだ。
随分と綺麗な人だな。
彼女は俺に向かって深々と頭を下げた。
……誰だ、この人?
────
次回から徐々に断罪へと進んで行きます。
お楽しみに!
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