第97話 会社の発展構想

 その日の晩はみんなで打ち上げパーティーをやることにした。


 事務所の仕事は山のように残っているようだが、まぁ、焦っても仕方ない。

 別に納期があるわけじゃないからな。

 社長の一存で、社員には定時で終わってもらった。


 夜からは暗奏攻略の祝賀会だ。

 2階の会議室を使って宅配料理を堪能する。

 もちろん、ちょっと奮発して高級レストランの料理だ。


 みんなで酒を飲んで大騒ぎ。

 一通り、騒ぎ終わったらみんなで片井温泉に入ることになった。


 ジ・エルフィーの長女、ネマが音頭を取る。


真王まお社長と一緒に入りたい人!」


 うぉい、なんの決採りだよ。

 こういうのはセクハラになるのではないのか!?


「「「 はい! 」」」


 え!?

 いや、全員が手を挙げてるし……。

 酔ってるのか?

 しかも、迷いがなく、手を挙げる速度が早い。


「というわけで 真王まおさま。全員と入浴が決定しましたので」


「え……。いや……。時間を分けて男女別で入った方が……」


「社の決定事項です」


「お、おう……」


 なんだか、ネマがしっかりしてきたなぁ。

 いや、そんなことより、いいのか?

 女性社員と混浴する社長なんて……。

 

真王まおさま。ご安心ください。人間の女性社員たちはバスタオルの下に水着を着用する予定ですから」


「ああ、それなら……」


「もちろん、私どもエルフは水着なんて着ませんが」


 いや、もちろんと言われても困る。決して嫌ではないが、ヒヤヒヤするのでできれば着て欲しい。


 そんなこんなでみんなで入浴。


 紗代子さんは笑った。


「ああ、良かった……。こうやって、またみんなで温泉に入れた……」


 男は俺1人なんだがなぁ。

 いいのだろうか?


 紗代子さんと目が合うと、優しい笑みを返してくれた。


 俺がこうやって社長面できるのは全部紗代子さんのお陰だよな。


「紗代子さん。ありがとうね」


「いえ……。私はなにも……」


 そう言って赤くなった。



 次の日。


  衣怜いれはスケジュール帳を見ながら、俺の予定を報告してくれた。


「今日は昼までに社内会議だね。夜からは大和総理と食事」


 ああ、そういえばそんな約束をしてたな。

 暗奏の攻略中に総理から誘われたんだ。


 まずは社内会議か。

 会社の方向性を俺が考えないとな。


 社員たちは2階の会議室に集まった。


「みんなお疲れ様。仕事大変だよね」


 紗代子さんは冷静に応えてくれる。


「仕事依頼のファックスは未だ止まることを知りません。電話は常に鳴りっぱなし。今朝なんか、留守電が100件以上も入っていました。事務所内はフル稼働ですよ」


「じゃあ、単純に人手不足かな?」


「会社を大きくする場合は人手が欲しいですね。しかし、それも社長の一存かと」


「人手かぁ……」


  衣怜いれは眉を寄せる。


真王まおくんは今や世界からも注目されているからね。だから、正体は隠してる方がいいと思うの。そうなると守秘義務を徹底してくれる人材じゃないと無理よね」


 それなんだよな。

 

 現在の社員状況はこうだ。

 社長の俺。

 秘書の 衣怜いれ

 事務総括の紗代子さん。

 副総括のネマ。

 ジ・エルフィーのメンバー4人。

 西園寺不動産からの出向者10人。


 社長と社員総勢17名の会社だ。


 これだけのメンバーがいるのに手が足らないとなると相当な仕事量だよな。


「社長。来月には200億以上もの収入があります。税金対策のためにも支店を作ることをお勧めします」


「支店?」


「はい。営業実態のない架空の事務所は違法になりますから、ちゃんと営業のできる支店ですね」


「俺はダンジョン配信をしていただけなんだが……。例えば、どんな支店を作れるのかな?」


「現在殺到している依頼から推測すると簡単かもしれません。例えばグッズですね。海外のおもちゃメーカーを筆頭に、国内最大手のバソダイとダカラドミーから依頼が殺到しております。これらの企画、権利の営業だけでも支店は作れると思いますね」


「うーーん。俺のおもちゃか……。顔を隠してるのにさ。フィギュアなんか作れんのかな?」


「社長。サイの顔に心当たりはありますか?」


 ……あるな。

 

「昨日、生配信したヤツだ」


「早速、そのサイの顔でフィギュアを作らせて欲しいと企画書が上がっております」


 おいおい。


「海外のおもちゃメーカーでは、ライノマンという名前で商品化したいそうです」


 昨日の今日だぞ。早すぎるだろ。


 そもそも論なんだが……。


「支店を作るには利益が影響するだろ? 俺のおもちゃだけで月額いくらくらい儲かるんだ?」


「50億以上は儲かるかと」


 はい?


「月額だよ? 多くない?」


「海外の大手も入っていますからね。ルゴ社とか」


「ルゴって、ルゴブロックの?」


「はい。他にも、ゾニーや忍天堂、ズクエアエニックスからはゲーム化の依頼が来てたりします。あとは、漫画の権利も一緒にするなら海外のメーベル社から漫画化の依頼が来てますね。アベンダーズの映画にヒーローとして参加させたいようです。ライノ侍っていう日本のヒーローみたいですね」


 おいおい。

 もうめちゃくちゃだな。


「他にも芸能プロダクションを独立させてもいいかもしれません」


「ああ。それは俺も思っていたんだ。ジ・エルフィーにイレコの配信な。それらを総括する単体の会社があってもいい」


 これは面白いかもしれないな。

 片井ビルは俺の生配信だけに特化させて、あとは支店で仕事をさせるんだ。本社は俺の配信と各支店の総括。うん。悪くないぞ。


 俺は紗代子さんが作ってくれた依頼の一覧表を見ながら支店の構想を練った。


 ざっと思いつくだけでもこれだけある。


 芸能支店。

 おもちゃ支店。

 衣料品支店。

 ゲーム支店。

 アニメ漫画支店。

 

 5店舗か。

 悪くないな。

 

「俺の考えでは支店は分けて設立したい。俺の人気は一過性もあるからな。いつまで保つかわからない。人気がなくなれば閉めてしまえばいいだろう」


 とはいえ、玩具やゲームはイレコやジ・エルフィーの依頼も含まれてるんだよな。芸能支店を筆頭にして仕事を振り分けていけば更なる発展が見込めるだろう。また、芸能支店からジ・エルフィー以外のスターが誕生すれば会社の成長は止まらなくなる。


 うーーん。

 そうなると、やはり問題は支店に配属させる人材なんだよな。

 信頼できて、トラブルの少ない性質。俺の正体は決して口外しない、守秘義務を徹底して守れる従順な社員だ。


 そんな都合のいい存在がいるのだろうか?

 

 構想を膨らますのは楽しいが問題は山積みだな。

 今度、西園寺社長に頼んでみようか。


 今回の会議はこれで終わった。

 

 さて、次は総理との食事だぞ。

 奢りって話だからな。

 ふふふ。どんなおもてなしが受けれるのか楽しみだ。


────

悪党の断罪については徐々に迫ってまいります。

現在、周囲を強化しつつ緩やかに進行中。

今は、高難度ダンジョンをクリアした報酬パート。もう少しで終わりますからね。

ワクワクしながらお待ちください。

必ず、キッチリと方をつけますので!

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