第84話 ボス戦
〜〜片井視点〜〜
俺たちはボスモンスターと対面していた。
それは100メートルを超える大樹のような姿で、その樹皮には大きな顔が浮かび上がる。
こんなデカイモンスター。
ダンジョン史上初だろう。
『我が名はオメガツリー』
ご丁寧に挨拶までしてくれる。
しかし、まずは樹の中に取り込まれている人たちの状況確認が必要だろう。
「俺は鉄壁。オメガツリーとかいったな。喋れるんなら交渉はできるか? 平和的解決をさ」
『平和的解決だと?』
「おまえが囚われた2352人を返してくれたら、俺はおまえを攻撃しない。なんて言ったらどうする?」
『フフフ。人間は我の餌だぞ。人の上位種が我なのだよ。下等な餌が我に交渉を持ちかけるなど片腹痛いわ。ヌハハハ!』
ああ、交渉決裂か。
とういうか、完全に敵だな。
どうやら、話し合いはできそうにない。
「じゃあ、倒すしかないな。おまえを倒してみんなを助ける」
『フン! 下等な人間が』
オメガツリーは無数の黒い手を出した。それを合体させて大きな一本の手にする。
『我の養分にしてくれるわ』
やれやれ。
「
しかし、
バリィイイイイインッ!!
俺の魔法壁は簡単に破壊される。
『フハハハ! 愚かな魔法使いめ。貴様の魔法壁など、我の
ほぉ。
黒い手の正式名称は
『貴様も我の養分にしてくれるわ!』
ふむ。
さっき、魔法壁が破壊されたのは、黒い手が強化されてたからだろうな。通常の魔法壁で無理なら、
「
ガシィイイイイイイイッ!!
「よし。ガード成功」
ひびも入ってないし。
魔力節約で、もう少し落としてもいいかもな。
『なにぃ!?
「たぁあああああッ!!」
オメガツリーは
『無駄だぁ』
ガキィイイイインッ!!
「くっ! 私の大剣じゃ斬れない!」
「なら私が!
続いてイッチーの攻撃。
ガキィイイイイインッ!!
「ぐぅ! ダ、ダメです。私の攻撃も効きません!!」
随分と強化されてるんだな。
「防御は俺が担当する。2人は顔面を攻撃してくれ。
『これならぁあ──』
ふむ。
スイング幅を増やしたのか。
『──どうだぁあッ!』
さっきより、強い。
ガシィイイイイイイイッ!!
でも、なんとか行けそうだ。
ペキ……ペキ……。
ああ、ひび割れてる
40倍でもちょっとキツいのかもな。
流石はダンジョンボスといったところか。
でも防御が可能なら、
「
「うん!」
「了解しました!」
2人に攻撃を任せる。
「たぁあああッ!!」
「
その同時攻撃はオメガツリーの顔面を直撃した。
しかし、傷1つ付けることはできなかった。
『グハハハ! 人間の攻撃なんぞ、我に効くものか』
だったら、こんな攻撃はどうだ?
「
『グハハハ! どんな攻撃であろうと、我の体には傷一つ──』
「壁パンチ」
バゴォオオオオオオオオンッ!!
『ヌギャアアゥウッーー!!』
おお、めり込んだ。
「明らかにダメージがありそうだが?」
『グ……。グハハハ……。わ、我には超回復スキルがあるのだ。どんな攻撃だろうとなぁあ──」
ほぉ……。
傷ついた表皮がみるみる回復していくな。
『効かんのだぁ……。どんな攻撃も回復してみせるわぁあ! グハハハーー!』
「ふーーん。あ、そう」
だったら手っ取り早く。
「マックスパワーでいってみますか」
俺を中心に凄まじい強風が吹き荒れる。
「キターー! 鉄壁さんの100倍!!」
俺の眼前には稲妻を纏った魔法壁が出現した。
オメガツリーはそれを破壊しようと躍起になる。
『グゥヌぅ……。たかが魔法使いに何ができる!』
ダークハンドの合体を繰り返す。
さっきより倍以上に膨れた手となった。
『グハハハ! これでどうだぁあ!』
バジィイイインッ!!
ダークハンドが魔法壁に触れた瞬間、塵になって消滅した。
『なにぃいいいいいッ!?」
制限時間は残り15分。
100倍の魔法壁による全力の壁パンチ。いってみますか。
コメント欄は激しく流れる。
『いっけぇえええ!!』
『やったれ鉄壁さん!!』
『ぶっ倒せ!!』
『うぉおおおおおおお!!』
『熱い!!』
『オメガツリー終了のお知らせ』
『ボスモンスターオワタw』
『ボスお疲れーーw』
『勝ち確ぅうう!』
☆
地上では大和たちが画策していた。
10階建てのピクシーラバーズは停電しており、屋上から降りる監査官はライトの灯りが必要だった。
「ブヒョオオオッ……。
屋上の電気錠を銃で破壊し、館内に潜入。照明のつかない暗い館内は、どこに階段があるのかさっぱりわからない。
やっとの思いで正面階段を見つけて降りることに成功した。
「ふぅ。申し訳ございません、ジェネス監査官。この停電はもしかすると、暗奏の魔力に影響を受けたのかもしれませんな。ヌハハ。とりあえずは階段が見つかりましたので、ここを降りれば直ぐに地上に出られますので」
3階に降りる途中で事件は起こる。
「ブヒョ!? 階段が封鎖されている!? な、なぜだ!?」
ライトで照らすと、階段の踊り場にはたくさんの机と椅子が積み上げられていた。その真ん中には張り紙。
『修繕工事中につき通行禁止』
これ見よがしにデカデカと表示してある。
「な、ならば4階で他の階段を使うしかないブヒョ!」
4階に入ろうとすると、その入り口は大きな扉で塞がれていた。
監査官の部下が扉を押す。
「防火扉です。押してもビクともしません」
防火扉とは、火災の時に火の移りをその階でシャットアウトする扉のことである。通常ならば作動時には火災ベルがなるのだが、本館は全館停電中。その上、電気室の予備電源まで破壊されているので、ベルは鳴らないのだった。
「な、なぜだ!?」
「修繕工事だからでしょうか?」
(おかしい……。館長の
「ブヒョォ……。と、とりあえず、5階に戻って他の階段を探してみましょうか」
5階を徘徊して非常階段を見つける。
「ブヒョヒョ。お待たせしました。ここならば地上階まで行けましょう」
しかし、
「ブヒョォオオオオ!? こ、ここもだとぉおおお!?」
正面階段と同じように机と椅子がビッシリ。
そして、デカデカと、
『修繕工事中につき通行禁止』
の表示。
監査官のジェネスは眉を寄せた。
「ミスター
「ブヒョォオオ〜〜。こ、これはですな。な、な、なにかの手違いでしてぇ……」
(ブヒョォオオオオ!! ふざけるなクソがぁああ!! 誰かが妨害しておるなぁあ!! 館内の停電! 机のバリケード! 明らかに妨害だぁ!! 何が修繕工事中だ。こんなもんは建前にすぎん。思えば、
1人の自衛官が物陰に隠れて
無線でコッソリと連絡する。
「ターゲットは5階で足止めを食らっております。予定通りです」
その無線を受けていたのは大和総理だった。その口角はニンマリと上がる。
「
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