第75話 テレビ VS 生配信 (決着編)
(か、か、辛うじて助かったが次のCMではわからんぞ! 一度でもネット配信が上回ったらペナルティだ。マイナス100億だぞ。広告費用で50億儲かったとしても50億の赤字じゃないかぁああ!! そんなことをすれば
「ディ、ディネルアよ。
「表向きでしょうか? ならば2千万円ほどですね」
「バカもん。裏の方に決まっておる。ダンジョン探索者海外銀行にはいくらあると聞いておるのだ!」
「そちらでしたら52億円ほどかと」
(ご、52億……。やはりか。
と、
電話の主はプロデューサーである。
「はぁ? CMを流すな? そんなことできるわけないじゃないですか」
「ぐふぅうう! で、ではこういうのはどうだ?」
これはテレビ史上、類を見ない方法である。
そして、次のCM。
「ブヒョウオオ! 視聴率と片井はどうだぁあああ!?」
「30%を保っています。片井さんのは2500万人です」
「いよし! 成功だぁあああああ!!」
「しかも、片井さんの方は2500万人から数値が動かなくなりました」
「ギャハハハ! どうやら頭打ちらしいな。30%を保持すれば勝てる!」
「しかし、スポンサーとアイドル事務所からクレームが殺到していますが?」
「構うもんか! この調子でやるんだ!」
(今は勝つことなんだぁぁあ!! どんな卑怯な手を使ってでも勝ってやるぞ! そして、死ね片井ぃい!! お前が死ねば配信は終わる!
そんな時。
生配信の動画が完全にフリーズしてしまったのである。
「キターーーーーーーーーーーーーーーー!!」
(これは神がくれたチャンスだぁあ!! このトラブルで配信が止まったことにして、テレビを強制的に終わらせればいい! スポンサーやテレビ局からは苦情が来るだろうが、それよりペナルティを無くすことの方が重要だ! 番組が終わってしまえばペナルティは発生しない!
「ディネルア! テレビ局に電話しろ! プロデューサーに繋げるのだ!」
「は、はい……ただいま」
電話が繋がると同時。
受話器越しから飛び出たのは歓喜の声。
「ありがとうございます!!
「ブ、ブヒョヒョ……。まぁ、その件なのだがな」
プロデューサーは受話器を離す。
どうやら部下の連絡を受けた模様。
「……え。なに!? マジか!?」
と、言った後に、再び局長に呼びかける。
「局長! 視聴率が35%に跳ね上がりましたよ!」
「う、うむぅ……。今、生配信はトラブルがあるだろう?」
「ええ! その放送事故がいいようです! スタジオは大混乱。その混乱具合が国民に伝わっているんですよぉおお!! こりゃ40%も目じゃないですってぇええええ!! うちの局が独占してるんっすよぉお!! 民放のうちがですよぉおおお!! こんなのテレビ史上初ですってぇえええ!! すごすぎですってぇええええええええ!!」
(ブヒョォオ……。35パーセントなら3500万人か。これなら片井の視聴者を大きく上回っている可能性が高い。しかし、念には念をだ。今のうちに放送を打ち切るのが得策だ。多少強引ではあるが……)
「ブヒョヒョ。言いにくいのだがね。生配信のトラブルは片井氏の身の危険が考えられるのだよ。これはBPOにも引っかかる事案だろうからね。配信が再開して血みどろの片井氏が映ってはそれこそ放送事故だろう。それでだね……」
「おおお! 生配信が再開されたみたいです!! 片井さんは元気ですよぉおお!!」
「なにぃいいいい!?」
「うわぁ! すごい!! 視聴率40%越えキターーーー!! 歴史的大事件ーーーー!! まだ上がってますよぉおおおお!!」
「クソがぁあ!!」
(ちぃいいいい! しかし、ピンチは乗り切ったか。片井は2500万人が頭打ち。かたや視聴率は40%越え。しかも、まだ上昇してるという。これならCMに入って視聴率が落ちても余裕で勝てるだろう)
日本の最高視聴率は国民的年末の歌番組が叩き出した。
1963年に出された81.4%が最高である。
(グフフ。ネットが普及したこの世の中で、ここまで視聴率が稼げる番組はないだろう。歴代最高を抜くとは思えんがな。この調子なら60%以上は可能かもしれんぞ。グフフ。なにせ、テレビ局は有名タレントを器用して面白おかしく放送しているのだからなぁ。ネットの生配信を見るより格段に品質が上なのさ。低俗なネット視聴者のコメントなんぞくだらんわ。なにが楽しいもんかい。著名人、研究家、アイドル、お笑い芸人の方が、圧倒的に面白いのだよぉおお)
ディネルアはタブレットを見ながら目を瞬いていた。
「やれやれ。まぁ、念のためか。おいディネルア。片井の視聴者数はどれくらいだ? もしかして下がってるなんてことも考えられるか? ん? どうなんだ? ブヒョヒョヒョ」
「…………」
「おい! 聞いておるのか! このクズエルフが!!」
「えーーと……」
「なんだ!? 早く言え。この野呂間がぁ! 片井のはどれくらいまで落ち込んだんだ!?」
「き……」
「なんだというんだ? 使えん奴だな。廃棄処分にされたいのか?」
「9千万」
「ったく。だいたいエルフは見た目しか能がないのだからな。秘書として使われていることに恩義を感じてだな……。……え? 今、なんて言った??」
「で、ですから……。片井さんの視聴者数です」
それこそ、蛇に睨まれたガマガエルのようにダラダラと。
全身の毛穴から毒汁のような汗が滝の様に流れる。
「な、な、な、な、なんだと?」
「ですから9千万と」
ディネルアはもう一度、タブレットの画面を確認した。
そして、はっきりと言う。
「片井さんの視聴者数。現在9千万人です」
一瞬だけ記憶がぶっ飛んだといっても過言ではない。
「これは生配信史上、世界記録のようです。ギネスに載るみたいですね」
数秒すると脳に血が回り、ことの重大さを理解できた。
それは大絶叫という形で具現化する。
「なんだとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
探索局内に彼の悲鳴がこだまする。
「どういうことだ!? きゅ、きゅ、きゅ、9千万人だとぉおおおおお!?」
「どうやら、海外の活動家たちにもこの配信が知れ渡ったようです。海外からのアクセスが殺到しています」
「か、活動家ぁ!?」
「エルフの差別を撤廃するように訴えかけるエルフの支援団体です」
「暗奏に囚われているのは、たった3人のエルフだろうがぁあ!?」
「はい。その3人を必死に助けようとしているのが片井さんだと」
「ク、クソみたいなエルフどもだろうがぁあああああ!!」
「……エリンという娘が母親を助けようとする姿がいじらしい、と世界で取り沙汰されております」
「…………あ、ああ。ああああああ……」
その瞳からは汚い涙がボロボロとこぼれ落ちた。
「終わった……。50億の借金……。あ、ああああああ………。
彼の貯金は52億である。
そこからマイナスの50億を引けば残り2億円。
豪邸に住み、各種様々な投資に金をかけている
テレビの音声が虚しく響く。
「鉄壁さんのチャンネルは、一時的にアクセスが急増したために止まっていた模様です」
────
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あ、あとね。
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まだまだ、いきますよぉ。
どうぞ、最後までお楽しみに!
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