第35話 紗代子さん、初めての探索②

 紗代子さんにはフォローを入れとかないとな。


「ウルチャとか視聴者のコメントにはさ。お礼だけでいいからね。特に男のユーザーは根掘り葉掘り聞いて来るからね。全部答えてたら丸裸にされちゃうよ」


「は、はい……」


 まぁ、配信は初めてだから緊張するのは当たり前か。

 俺たちがしっかりしないとだな。


 それにしても、最高の滑り出しだな。

 コメントが滝のように流れてるよ。

 ウルチャの投げ銭は止まらないしな。


 まぁ、彼女ほどの美貌と才覚なら、一流の配信者になれるのは当然といえば当然か。


 喜んでいるのは俺だけじゃなかった。


「ねぇ。事務さん。今度、私とダンジョンの中でダンスしませんか?」


「え? わ、私がぁ? 秘書ちゃんと?」


「ええ。最近、ディックトックでも流行ってるんです。ダンジョンダンス」


「私なんかができるかなぁ?」


「大丈夫! 簡単ですよ。こうやって、腰を突き上げて、両つま先を上げてですね。左右に振るんです」


「え……。こ、こう?」


「そうです! いい感じ!」


 おいおい。

 2人で腰振りとか、可愛いすぎるだろう。

 コメントが盛り上がりまくってるじゃないか……。


『うは! 可愛いいい!!』

『最高!!』

『女でも惚れる!!』

『エッロwww』

『エロ可愛いすぎワロタ』

『ちょwww マジ天使www』

『今日はダンスの配信でもいいよ』

『REC』

『ずっと振っててぇえええ!』

『永遠に視聴できるのだが?』

『美しい……はっ!』

『超可愛い!!』


 2人のダンス配信なら、バズるのは確定だな。

 今度、リアルにダンス配信をしてみるか?

 これが本格的に稼働すれば、片井ダンジョン探索事務所がアイドル事務所になってしまうかもな。


「鉄壁さんも一緒にやってみようよ!」


「お、俺も?」


 俺がやる意味が見当たらん。

 そもそも需要がないだろう。

 男の腰振りダンスなんて、


「こうかな?」

「アハハ! 鉄壁さん上手い上手い!」

 

 俺たちは3人で腰振りダンスをした。


『やるんかいww』

『ちょwww誰得www』

『鉄壁の腰振りwww』

『コーヒー牛乳を盛大に吹いたwwww』

『私は好き』

『結構、上手いなw』

『うちも一緒に踊りたい!』

『美女2人と踊れるのは裏山』

『ダンスユニット結成してくれw』


 コメントは大反響。

 ウルチャは50万円を超えていた。


 ふと、思ったが、これ、絶対に切り抜かれるヤツだよな。

 顔は映っていないが、黒歴史のような気がする……。

 

 まぁいい。気持ちを切り替えていきますか。


「今日は事務さんの初探索だからさ。C級なので何も気にすることはないからね。バトルは俺と秘書が守るしね。ピクニック気分で行こうよ」


「は、はい。し、しかし、大丈夫でしょうか? 公式のガイドブックでは5人以上の探索者で挑むのが必須と書かれいましたが?」


「ははは。まぁ、それは目安だからね」


「わ、私たちは3人です。ふ、2人も足りませんよ?」


 紗代子さんが人数に入っているのは突っ込み所だが、緊張してるんだろうな。

 いつもの紗代子さんらしくのは新鮮で面白い。


「ぎゃあああ! で、で、出ましたぁああ! モンスターです!! す、すごい数ですよ!!」


 ロックスライムの群れだな。

 こいつは岩肌の防御力の高いスライムなんだ。


「きゃあああ! 襲って来ましたぁあああ!!」


攻撃アタック 防御ディフェンス


 俺は魔法壁で防御する。

 すかさず 衣怜いれが大剣を振るった。


「たぁああああ!!」


 俺は紗代子さんの防御に徹する。

 近づいてくるヤツは魔法壁で弾いて、


「よいしょっと」


 挟んで倒す。


 瞬く間に殲滅が完了した。


「ふはぁあああああ! すごいですぅうう!!」


 いや、こんなモンスター大したことないけどね。


「社長も秘書ちゃんも! カッコいい!! こ、これが探索ぅうううう!!」


 随分と嬉しそうだな。


「むふぅうう! 社長の魔法壁。秘書ちゃんの大剣。無双です! むふぅううう!!」


 と、鼻息を荒くする。


「あ! このロックスライムはまだ少し息がありますよ! こいつめこいつめ! えいえい! やったーー! 倒しました!!」


 なんだろう。

 このはしゃぎっぷり。


「鉄壁さん……。事務さんがなんか可愛いね」

「ああ」


 普段はパシッとして隙のない人だからな。

 こういう少女みたいな部分もあるのか。


 俺たちはダンジョンを進んだ。

 それは地下1階を過ぎようとしていた時に起こった。


「しゃ、社長……。か、体が……。体が熱いです」


 ああ、ついに来たか。


「迷宮内覚醒だよ」


 ダンジョンの洗礼。

 異世界と繋がって、地球人の体が覚醒する状態。

 俺は防御魔法を。 衣怜いれは収納スキルを使えるようになった。

 さて、紗代子さんはどんな能力が覚醒するかな?


「体が熱い……。燃えるようです」


「大丈夫。じきに治るよ」


「ああああ! 熱ぃいいいいいいいいいいい!!」


 彼女は全身に青いオーラを纏った。


「はぁ……。はぁ……。か、体の中から力が湧いて来るようです……」


「おめでとう。これで本当に探索者になったね」


「な、なんか、最高にハイっていうんですか? 気分がいいです」


 さてはて、どんな能力を身につけたかのかな?


『うぉ! 迷宮内覚醒! 初めて見た!』

『本当に初めての探索だったんだね。貴重!』

『なんか、エロいwww』

『REC』

『事務ちゃん、エロい』

『事務さん覚醒』

『鉄壁さん。赤飯を炊きなさい』

『赤飯www』

『ちょ、ウケるw』

『お母さん、赤飯を炊きなさい、みたいに言うなw』

『覚醒、おめでとう』

『能力気になるーー』


 なんか、変なコメントも沸いているが良しとしようか。


────

次回。あのキャラが登場します!

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