第31話 赤木たちに制裁②
「ねぇ。
そうだった。
「そういえば配信動画の拡散をしてたな。『無能のメンバーを追放してみた! 【ガチ企画】』の内容を面白おかしく呟いてさ。これって侮辱罪の一環だな。ヅイッター社とインズタの運営に申請してアカウントを削除してもらおうか」
青野原と緑川は青ざめる。
「「 ひぃいいいい!! 」」
ヅイッターとインズタは本人たちもやっているのだろう。
俺のことを揶揄していた内容だったからな。彼らがやっていたSNSは徹底的に潰してやろうか。
ここに来て、悪行のツケが返って来たというわけだ。
この状況をいち早く理解したのは青野原である。
一応、メンバーの中ではこいつが一番頭が良い。
彼は即座に土下座した。
「許してくれえぇえええええ!! 片井! 僕たちが悪かったあぁ!!」
ふむ。
「緑川が反省していないようだが?」
まだ、不服そうに俺から視線を逸らしている。
「
「な、なんで、あ、
「いいから謝るんだ! このままだと僕たちの人生が終わってしまうんだ!! ヅイッターも動画も何もかも消されてさぁ。配信者として積み上げてきた今までの努力が水の泡になっちゃうんだよぉおお!!」
「うう……」
「君だって片井のことは呟いていたはずだ! 笑っていただろう! アカウントを凍結させられるぞ! それでもいいのか!?」
「わ、わかったわよ。ど、土下座すればいいんでしょ!」
2人は床におでこを付けた。
「片井。どうか、勘弁してください! 悪気はなかったんだぁあああ!!」
そう言われてもなぁ……。
「そこで白目を剥いている赤木の謝罪がないが?」
青野原は赤木を掴み上げた。
「うぉおおおおお!! 赤木ぃいいい!! 起きてくださいぃいいい!!」
頬を往復ビンタする。
ベシンベシンベシンベシンベシンッ!!
「白目剥いてる場合じゃないんですよ赤木ぃぃいい!!」
「ほげ? な、なんだよ?」
「大変なことになっているんです!!」
青野原は経緯を説明した。
「わかりましたか!? もう僕たちに正義はないんです! 100対0で僕たちが悪い!! 土下座しかないのですよぉおお!!」
「……いや、でもよぉ。な、なんで俺が片井なんかに」
「まだ、わからないのですかぁあああ!!」
「だ、だってよぉお……」
ふむ。
赤木の態度はよろしくないようだな。
「ねぇ、
「あーー、言ってたな」
あ、そか。
「脅迫罪だな。紗代子さん、いくら請求できるかな?」
「民事で30万円は賠償金が請求できるかと。3人は赤木氏の行動を容認しているので共謀罪ですね」
ほうほう。
「ラッキー。30万円プラスだな」
青野原は覚醒した。
まるで魔力でも宿したかのように全身の毛が逆立っている。
「うぉおおおお!! 赤木ぃいいいい!! これ以上、片井を怒らせないでくださいぃいい!! 罪と請求額がドンドン増えていますぅうう!!」
「わ、わかったよ。あ、謝るよ。謝ればいいんだろ」
3人は土下座した。
「「「もうしわけありませんでしたーー」」」
しかし、赤木はぶつぶつと小言を言う。
「ったく、殴られたあげく、土下座って意味がわかんねぇぜ」
やれやれ。
丸聞こえだってぇの。
「おまえら本当に反省してんのか?」
青野原は赤木の襟元を掴み上げた。
「いい加減にしろ赤木ぃいい! 君の失態で全員に迷惑がかかるんだよぉおお!! 魂込めて謝罪しろぉおおお!!」
「で、でもよぉおおお」
やれやれ。
「紗代子さん。まだわかってないようだけど?」
「そうですね。この方達が来る直前に海外の依頼が事務所に来ていましてね。100万円の案件だったのですが、流れるかもしれません。そうなれば彼らの対応は明らかに営業妨害ですね」
「そか。んじゃ、営業妨害で100万円の追加請求だな」
「うぉおおおおお!! 赤木ぃいいいい!!」
「これマジでヤバいやつじゃん! 赤木! マジで謝りなよ!!」
「良い加減にしないと、僕があなたを殺しますよぉおお!!」
「わ、わかったっての」
こうして、3人は額を床にベッタリと付けて土下座したのだった。
「「「 本当に申し訳ありませんでした 」」」
その謝罪に免じて動画の削除と壁の修繕費用だけで勘弁してやることにした。
あと、俺がイレコと付き合っていることは口外しないように誓約書を書かせた。ヅイッターで拡散されたら
やれやれ。
俺に喧嘩を売らなければ動画の削除も10万円の請求もなかったのにさ。
バカなヤツらだよ。
青野原はビビりまくっている。
「本当に、本当に申し訳ありませんでした。紗代子さんにもご迷惑をかけてしまいました」
こいつ、こんな時だってのに女に目が向くのか。
青野原はチャンスがあったら紗代子さんにモーションをかけたかったのだろうな。
それを察しているのか知らないが、紗代子さんは彼の謝罪を冷ややかに無視していた。
完全敗北だな。
諦めろ、青野原。おまえに脈はない。
3人はほうほうの体で帰って行った。
ふぅ……。
「なんかごめんね。2人にも迷惑かけちゃったよ」
「いえいえ。社長の方が気苦労が絶えなかったと思います」
「私は許せないな。全額請求しても良かったんじゃない?
まぁ、なんだかんだで一緒に探索した仲だったからな。
「社長。ゆっくりしてください。今、お茶を淹れますね」
「うん。ありがとう」
俺たちはコーヒーを飲んだ。
しばらくすると、
「
「社長。先ほどの海外の案件。流れることなく契約が成立しましたので、こちらに損失はありません」
やれやれ。
一件落着かな。
◇◇◇◇
ーー
そこはビルの高層階。
1人の男がつまらなさそうに夜景を見つめていた。その出立ちはブランド物のスーツ姿。締めているネクタイは、ハイブランドのマークがデカデカと刺繍された派手な物だった。腕時計も高価な物で、セレブの中では有名な、金とダイヤが装飾されたデザインである。
男は裕福なのだろう。
それも、とびきり趣味の悪い。
権威を主張するタイプ。
「
男の部下がUSBを持って来た。
「片井が警察に提出した証拠品でございます。晴生さまの動画が入っております」
男は夜景を見るのをやめて、深くため息をついた。
「やれやれ。無能な兄を持つと苦労が多いな」
────
物語りはまだまだ始まったばかり。
次回、
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