第30話 赤木たちに制裁①
赤木たちは混乱していた。
「イ、イレコが片井の彼女だとぉおお!?」
「で、では、鉄壁の探索者の相方である秘書っていうのは、紗代子さんじゃなくてイレコちゃんということですか!?」
「し、信じられないわ。あ、あの片井が……」
やれやれ。
コイツらには俺が鉄壁の探索者であることは伝えていないからな。
詳しく説明する必要もないが、十分にわかっただろう。
「俺は自分のビルを持って、優しい仲間にも囲まれていてな。かなり充実した探索生活を送っているんだ。おまえたちと一緒にやっていた極貧生活とは訳が違うんだよ」
「こ、この野郎。調子に乗りやがって! 俺たちと一緒に探索してたくせによぉお!!」
「おまえたちに追い出されて絶望していたんだがな。一念発起して単独の探索者としてやってみたんだ。そしたら、こんなビルまで持てるようになったというわけさ」
「わかったら帰ってくれ。俺は暇じゃないんだ」
「おおっと、そうはいかねぇぞ」
「どういう意味だ?」
「おめぇは俺たちのパーティーに戻るんだよぉおお!! 片井ぃいい!!」
はぁ?
「これはお願いなんかじゃねぇぞ! 命令だ!!」
「おまえに命令を受ける筋合いはないが?」
「うるせぇええ!! 俺は
めちゃくちゃの理論だな。
「おまえが俺を追い出したのにさ。今更、リーダーと言われてもな」
「やかましい! 貴様は俺の下で働けばいいんだ!! パーティーのために雑用してればいいんだよぉおおお!! それがおまえの仕事だろうがぁあああ!!」
ああ、もう会話にならんな。
「俺の顔色を窺っていたゴミクズ無能の蛭野郎は俺の命令に従ってりゃあいいんだよ! 糞がぁああ!! おまえの防御魔法は有用だ。前みたいにコキ使ってやるよ! 奴隷みたいによぉおお! それがおまえにお似合いだろうがぁああ!!」
やれやれ。
これが本心か。
まったく、碌でもない奴だな。
「このまま帰った方がおまえたちのためだぞ?」
「なにぃいい!? 貴様に何ができるってんだ? この無能の糞野郎がよぉお!?」
「本当に後悔しないか?」
「ぎゃはは! するもんかよ! 喧嘩なら買ってやるぜ! おらこいよ! こっちは3人もいるんだぜ!!」
「喧嘩するんだな?」
「ぎゃははは! 後悔させてやるぜ!! 無能の片井がぁああああ!! ここはダンジョンじゃないんだよぉ! おめぇの得意な防御魔法は使えないんだぜ、この無能がぁ!!」
はぁ〜〜。
魔法とスキルが使えないのはお互い様なんだがな。そんなこともわからんとは、呆れてものが言えんよ。
こんな奴らに時間を割くのは人生の無駄だと思っていたがな。
やむを得ん。
俺はスマホを出した。
「紗代子さん。この
「はい。侮辱罪が成立します。顔にはモザイクがかかっていますが、片井社長のお名前が出ておりますので、特定が可能です。十分に侮辱罪が成立しうる案件かと。30万円の請求が可能です」
赤木は汗を飛散させた。
「さ、30万円だとぉおお!? てめぇこら! 俺を訴える気か!?」
「喧嘩を買うと言ったのはおまえだぞ?」
3人は震えていた。
「ちょ、赤木ぃ! 裁判とかヤバいってぇ!」
「そうですよ赤木。30万とか、僕は払うの嫌ですからね!」
「う、うるせぇえ!! こんなもんで裁判なんかできるか!!」
赤木は笑う。
「な、舐めんじゃねぇぞ片井。この動画はジョークなんだよ!! 冗談でやってる動画をマジで捉えるとかガキかよ!!」
「子供なのはおまえだろう。そうやって人を傷つけているんだからな。それに、この動画のタイトルにガチ企画って書いてあるじゃないか」
「あぐぐぐぐぐ」
それにこんなに人を傷つける動画で収益を得るってのも問題だよな。
「動画配信の運営には削除要請を出すつもりだ。加えて不当に得た利益もこちら側に請求させていただく」
「な、なんだとぉお!?」
「紗代子さん。この動画ってどれくらい稼いでいると思う?」
「はい。おおよそ、100万再生されておりますから最低でも10万円以上は稼いでいるかと」
「うん。じゃあ、侮辱罪の30万円に上乗せして10万円を加えよう。その上で動画の削除依頼だな」
赤木たちは叫んだ。
「なんだとぉおおお!?」
「そ、それはないですよぉお!! あの動画は
「ちょ、あ、あり得ないってぇええええ!!」
あ、そうそう。
「これってチャンネルのアカウントを停止することも申請できそうだな」
「可能でございます。明らかな誹謗中傷はアカウント停止要件を満たしておりますね」
チャンネル登録者5万人の
「うん。じゃあ、それも申請してもらおうかな」
「待てぇえええええええええ!!」
「は? 待つ理由がどこにあるんだ? 喧嘩をすると言ったのはそっちじゃないか? それともなにか? 子供みたいに腕力で喧嘩するとでも思ったのか? ここはダンジョンの中じゃないんだぞ?」
赤木は真っ赤になって突っかかって来た。
「ぶっ殺してやるぅううう!! 死ねやこらぁあああ!!」
やれやれ。
地上では魔法もスキルも使えないがな。
通常の身体能力になるわけだが……。
俺は単独でダンジョンを探索していたんだ。
3人で探索していたおまえたちより戦闘能力は向上しているのさ。
俺は赤木の攻撃をひょいと躱した。
こいつは、このままの姿勢でも壁に激突するんだがな。
俺には、正当防衛という確固たる理由が与えられたわけだ。
つまり、1発くらいなら殴っても罪には問われない。
「おりゃ」
バキン!!
俺の拳は赤木の頬に命中する。
「ハギャアアッ!!」
と奇声をあげて、壁に激突した。
「ムキュウ……」
白目を剥いて気絶する。
「社長。ご安心ください。今の行動は防犯カメラに写っております。明らかな正当防衛でございます」
「うん。良かったよ。あーーそれとさ。壁にヒビが入ったよね。これって請求できるのかな?」
「もちろんでございます。器物破損は立派な犯罪。壁の修繕費用は10万円でしょうか」
そかそか。
「んじゃあ、侮辱罪の30万プラス、不当利益の請求10万プラス、壁の修繕費10万プラスで、計50万円か。加えて
青野原と緑川はブルブルと震える。
「「 ひぃえええええ!! 」」
「だから、後悔するって言ったんだけど……」
赤木は気絶してるから聞いてないか。
──
次回も赤木回です。
お楽しみに。
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