第24話 相談をする赤木たち


〜〜赤木視点〜〜


 俺たち 炎の眼フレイムアイは解散の危機を迎えていた。


 挑戦する探索はことごとく失敗。

 配信は滞っていた。


 今ではチャンネル登録者数5万人である。全盛期の半分……。

 10万人を超えていた、あの頃が懐かしいぜ。


  夜摘やつみと青野原は、個人でチャンネルを立ち上げて細々とやっているようだ。

 俺も個人で作ってみたが、登録者数は千人にも満たない。


 悔しいが、青野原が2300人。

  夜摘やつみが4000人だ。


 俺より多いが大した数じゃない。

 やはり、俺たちは3人でパーティーを組んで、 炎の眼フレイムアイとして活動するのがベストなんだ。


 ファミレスで今後の方針を決めることになった。


「個人の活動もいいがな。このままじゃあ 炎の眼フレイムアイは解散だぜ? それでいいと思ってんのかよ?」

 

「やれやれ。自分のチャンネル登録者数が少ないからって、僕たちに不満をぶつけないでくださいよ」


「うるせぇえ!! てめぇだって大した登録者じゃねぇだろうがよ!!」


「君よりましです!」


  夜摘やつみは目を細める。


「ねぇ。くだらない話なんか時間の無駄よ。解散するの、しないの?」


 ぐぬぅ。

 そうだったぜ。


「俺たちは3人揃ってのチームだ。チャンネル登録者は、まだ5万人はいる。これを利用しない手はないだろう」


「解散パーティーでも開きますか? 少しは話題になるかもしれませんよ」


「んなもん意味ないぜ! 今は落ち目なんだからよぉお!」


  夜摘やつみはため息をつく。


「ねぇ。2人とも、こうなった原因に気がついてないの?」


「「 はぁ? 」」


 んなもん決まってる。


「不調が続いてだな」


「バカなの?」


「にゃにぃい!! てめぇぶっ飛ばすぞ!!」


「バカだからバカって言ったのよ!」


「クソアマがこらぁああ!!」


「本気で自分たちの不調が原因だと思っているの?」


「なにが言いたいんだよ?」


「気がつかなかったの?」


「だから、なにがだよ?」


「不調の原因よ」


 原因?


あたしたちがバトルで勝てなくなったのはある日を堺に顕著になっているのよ」


 ある日?


「なにかきっかけがあったのかよ?」


「片井よ」


「はぁ?」


「片井を追放してから私たちはバトルで勝てなくなった」


「ははは。無能の片井がバトルにどう関係があんだよ?」


「まだ、気がつかないの? あいつが防御魔法で敵の攻撃を防いでいてくれたから、私たちはバトルで無傷だったのよ!!」


「ふーーん。ま、それはおめぇの考察だろ。別に答えってわけじゃねぇぜ」


「なに言ってんのよぉおお!! 思い返したらわかるでしょうがぁああ!!」


「おい。だったら言うけどよ。片井はバトルに参加してなかったぜ。俺たちの後ろでよ。いつも高みの見物だったじゃねぇか。多少は防御魔法で援助してたかもしんねぇけどよ。そんなのは演技にすぎないぜ。がんばってるアピールってヤツだ。必死こいてよ。自分は無能じゃありませんってアピールしてたなぁ。ぎゃはは!」


「ったく。あんたは脳内お花畑ね」


「んだと、こらぁあ!!」


 青野原は呆れる。


「まぁまぁ、2人とも。大声出すのは恥ずかしいですよ」


「てめぇはどう思うんだよ?」


「僕は……。そうですね。片井は無能だと思いますけどね」


「ほらみろぉ! 2対1だぜ。ギャハハハ! 片井は無能のゴミクズ人間なんだぜ!」


  夜摘やつみは大きくため息をついた。


「もう、本当にマジで解散したいわ。……でもね。チャンネル登録者が5万人もいるんだからね。それをミスミス捨てるなんて勿体無いのよ!」


 そう言って、タブレットを取り出した。


「これ見なさいよ」


 防御魔法で探索チャンネルぅ?


「ああ、知ってんぜ。ネットじゃ話題沸騰だよな。鉄壁さんだろ?」

「僕も知ってますね。有名ですから」


「はぁあああ!? あんたたち、知ってたのに気がつかなかったの!?」


「なにがだよ?」


「底抜けにバカね!! 声を聞きなさいよ! 声ぇえ!!」


 はぁ?

 俺たちは鉄壁さんの声を聞いた。


『どうも、俺です。今日も防御魔法だけでダンジョン探索やります』


 うん。


「いつもの鉄壁さんじゃねぇか」

「それがなにか?」


「まだわからないのぉお!?」


「だから、なんの話だよ?」


「こいつが片井なのよぉおおお!!」


「「 なにぃいいいいいい!? 」」


 し、信じられん。

 ネットで人気急上昇中。

 鉄壁の探索者の異名を持つ、鉄壁さんの正体が片井だとぉおお!?


「声をよく聞いてみなさいよ」


「……た、確かに。似てるかもな」


 片井なんて興味なかったから特徴なんて全く覚えていなかったが、言われてみれば似てるぜ。


「でもよ。鉄壁さんの顔を誰も見てねぇじゃねぇか」


「アーカイブの日付を確認してみなさいよ。初めての投稿日がほら。私たちが追い出した、次の日になっているでしょ?」


 げっ。


「本当だ。単独で配信者になったと考えれば辻褄が合う」


「そういうことよ。この鉄壁の探索者の正体は片井よ」


 し、信じられねぇぜ。

 あの鉄壁さんが片井なんてよぉお……。

 チャンネル登録者は何人なんだぁ?


 ゲェエエエッ!?


「さ、30万人だとぉおお!?」


 す、すごすぎる!

 まだ立ち上げて半年も経ってないのによぉおお!!


「クソがぁあああ! 片井の癖にぃいいい!!」


「これでわかったでしょ! 私たちの不調の理由が! 今まで片井が防御魔法で攻撃を防いでいてくれたのよ! だから、片井が抜けて負け始めたのよ!!」


「ぬぉおおおおおおお!!」


 そうだったのかぁあああああああ!!


 ぐぬぅううううう!!


 まさかだぜぇえええ……。


 ちぃぃ……。

 だったらよぉ。


「片井を追い出したのは間違いだったってことかよぉ……」


「そうなりますね。完全に赤木のミスです」


「俺だけのせいにするんじゃないぜ青野原ぁああああ!! てめぇも片井は無能って言ってただろうがぁああああ!!」


「ぼ、僕は赤木に合わせただけにすぎません!」


「調子のいいことぶっこいてんじゃねぇぜ、このボンクラがぁあああ!!」


「いい加減にしなよ! 喧嘩したって前に進まないよ! そんなことより、私たちがどうするかでしょ!」


 ったく。

 そのとおりだぜ。

 青野原のアホは放っておいて、今は片井のことだぜ。


 片井のことを考えるなんざ、反吐が出そうだが……。




「つ、連れ戻すしかないな」




 2人は黙った。

 なんだかんだでプライドが許さないようだ。


「まぁ、奴に頼むなんざ、納得はできねぇけどよ。俺が頼めば直ぐにでも帰ってくるだろうぜ」


 ククク。

 捨て犬が、バカみたいに尻尾振ってよぉお。

 帰ってくるに決まってるぜ。

 あいつ、泣くかもしれないな。プクク。

 こういうのを友情とか青春とかリア充っていうのかもな。

 まぁ、小っ恥ずかしいけどよ。そういう展開もありかもな。

 片井が戻って来たら、またこき使ってやろうっと。へへへ。あいつの利用方法を知ってるのは俺しかいねぇんだからよ。クフフ。

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