第13話 初めての2人
今日はオフである。
思えば、彼女と探索以外で行動するのは初めてだよな。
というか、女の子と街を歩くのは初めてかもしれん。
よくよく、考えたらデートだよな?
いや、考えすぎか。
彼女は俺のことを単なる仲間の探索者だと思っているだろうしな。
とりあえず着る服は外出用にしておこうか。
Tシャツにジャケット。ラフだけど清潔感だけは重視して。
無難だよな。
公園で待ち合わせをする。
30分早めに着くと、彼女が既に待っていた。
「あれ?
「あ、
彼女は白いワンピースだった。
清楚で可憐。というのが的確だろう。
清潔感があって、めちゃくちゃ可愛い。
ピアスとかブレスレットとか、探索では絶対に身につけない煌びやかな装飾品が目立つ。
ハッキリ言って可愛い。
いや、可愛すぎる。
いいのか?
こんなアイドルみたいな子と俺が歩いても。
……それにしても、まだ30分前だぞ?
「早くね?」
「アハハ。す、少し早く着いちゃいました」
「何分前に着いたんだよ?」
「さ、さっきです……」
「さっきって?」
「…………」
「何分前だよ?」
「……さ、30分前」
うん?
今は待ち合わせ時間の30分前だから……。
「1時間前からここにいるのか?」
「だ、だってぇ……」
おいおい。
「スマホにメッセージ送ってくれよ。急いだのにさ」
「わ、私が勝手に早く来ただけですから」
「ったく。頑張りすぎはよくないぞ」
「が、頑張ってません。やりたいことをやってるだけです」
ならいいけどな。
まぁ、それだけ楽しみにしてくれたってことか。
「ま、
「ああ。なんか普通だろ? ははは」
彼女は全身を赤らめて呟く。
「……か、かっこよすぎぃ」
うん?
聞き間違いか?
まぁいい。
「
「は……はわわわわ」
あれ?
変なこと言ったかな?
めちゃくちゃ真っ赤になっているが?
「バカバカバカバカバカ!」
ポカポカポカポカポカポカ!!
「ど、どうした?」
「んもう! そういうことをサラリと言ってしまうんだからぁああ!!」
いや、普通の会話だが?
俺たちは街を歩く。
「ま、
「ははは。安い夢だなぁ」
「えーー。だってぇ。噂の鉄壁さんですよ? ファンの子に知れたら私、殺されちゃいますよ」
「俺にファンなんかおらんだろう」
「知らないのですか? 巷では推し会が結成されているのですよ?」
推し会?
「なんだそれ?」
「推しの探索者を応援する会ですよ」
「へぇ……」
「鉄壁さんは大人気なんですから」
そう言われてもなぁ。
通りゆく人が見惚れてるのは
『可愛い……』
『いいなぁ……』
『うわぁ。可愛い』
『モデルさんかしら?』
『アイドルかな?』
『くそ。羨ましいぜ』
だよなーー。
そうなるよな。
俺なんかが側に居ていいのだろうか?
プニィイイ。
突然、柔らかい感触が俺の腕を襲う。
ぬぉう。
なんという爆乳。Iカップ以上はあるだろうか。その弾力といったら……。
「
「お、おう……」
柔らかいな……。
いやいや。噛み締めてどうする。
あんまり考えないでおこう。
今日は事務所探しなんだからな。
入店するやいなや、店員は微笑んだ。
「ご新居探しですか?」
いや、事務所探しだ。
やれやれ。
側から見たらカップルに見えるのだろうか?
俺たちは様々な物件を紹介してもらった。
現実は中々に厳しい。
駅近の便利な場所になると家賃が高いのだ。
2、3件の不動産を回った。
内見するまでもない。
どれも家賃が高すぎる。
収入の安定が最優先されそうだな。
「中々、難しいですね」
良い物件は見つからなかったが折角のオフだ。
楽しく行こう。
「美味いもんでも食べに行くか」
「賛成です♪」
俺たちは休日を楽しんだ。
お茶したり、買い物したり、街中の神社でおみくじを引いたり。
スマホで写真を撮りまくる。
うーーむ。
ガチでデートっぽいな。
「入る?」
「あ、でも、あそこはちょっと高いんです」
「装飾品、好きなんだろ? 今日もたくさん身につけてるしさ」
「こんなのは1万円以下の安もんですよ」
そうなのか。
高価な物だと思ったが、ぱっと見はわからんもんだな。
「まぁ、いいじゃん。見たいんだろ? 入ろうよ」
「は、はい……」
恐縮する彼女だったが、入店すると一変する。ショーケースの中に並ぶ煌びやかな装飾品に目が輝いた。
「うはぁ〜〜。素敵ぃ」
女の子ってこういうのが好きだよな。
値段はピンキリか。
「買ってやろうか?」
「えええ!? わ、悪いですよ!」
「まぁ、あんまり高いのは無理だけどさ。俺と一緒に探索をがんばってくれてるしな」
「はわわわわわわ……」
うーーん。
このネックレスとか良さそうだな。
小さなダイヤが付いててさ。嫌味がなくて綺麗だ。
「ちょっと、付けてみてよ」
「は、はい」
そのネックレスは彼女に似合いまくっていた。
2万円か。
まぁ、安くはないが手が出ないほどでもないしな。
俺はそのネックレスを買って、彼女にプレゼントした。
「はいこれ。普段、がんばってくれてるからご褒美」
「うはぁあああ! 嬉しいです。ありがとうございます!!」
「付けてやろうか?」
「お、お願いします」
立派なダイヤだな。
「うん。よく似合ってるよ」
「大切にしますね!」
うむ。
彼女の笑顔は最高だな。
こんなに喜んでくれるとあげた甲斐があるや。
それから店を出て、俺たちは夕食を食べた。
夜。
時計は10時を回っていた。
「あーー。あんまり遅くなると親御さんが心配するよな。駅まで送ってくよ」
「だ、大丈夫です。探索に出てるといえば1週間くらい家を出ていても怪しまれませんから」
ふむ。
学生でも探索者あるあるだよな。
女の子はこれで門限を誤魔化すんだ。
彼女は俺の裾をくいっと引っ張る。
「あ、あの……。きょ、今日……。ま、
え?
若い女の子が、1人暮らしの男のマンションに来るだと?
そ、それって……。
「あ……。いや、しかし……。終電が……」
彼女は真っ赤になっていた。
「お、お話したいことがあるんです」
話?
「ああ、えーーと。ここじゃできない感じのヤツかな?」
彼女はコクンと頷いてから、
「私の秘密をお話します」
深刻な表情を見せた。
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