第11話 C級に挑戦した赤木たちは?

 私は緑川  夜摘やつみ

 19歳。

  炎の眼フレイムアイの探索者だ。


 高校は探索課コースで、学生の頃からダンジョンには潜っていた。 炎の眼フレイムアイとは学生時代からの付き合いだ。もう、3年以上になる。

 将来は探索者のアイドルになることだ。


 緑と黒の髪があたしのトレードマーク。

 翡翠のような瞳は男のファンを虜にする。

 

 ふふふ。

 キモいオタクから投げ銭を貰えればもっと金が稼げるわ。


  炎の眼フレイムアイはチャンネル登録者数9万5千人の中堅配信者だ。


 なんとしても人気者になりたい。

 みんなから注目されるカッコ可愛い探索者。そんな存在になりたいのよ。

 

 なりたいのに……。


 私の腹にロックスライムの体当たりが減り込んだ。


「ぐふぅうう!!」


 このモンスターは60センチほどの岩型スライム。

 体当たりが強力なだけで、それが以外は特に問題のないモンスターだ。


 ったく、後衛は何してんのよ!?


「ちょっと青野原! 援護してよ!!」


「こっちだって手一杯なんです!!」


 はぁ?


「こ、ここはC級ダンジョンよ!?」


「し、知りませんよ! 赤木に聞いてください!!」


 そう、このダンジョンに潜ろうと言い出したのは赤木だ。

 C級ダンジョンならモンスターが弱いからと。

 ここなら無双ができるからと……。


 言っていたのに、


「ぐぉおおおお!! ロックスライムつえぇええ!!」


 苦戦してるし……。


「ぬがぁ! 俺の攻撃が当たらねぇ!」

 

 ロックスライムの攻撃を受けまくって窮地に立たされてる。


「や、 夜摘やつみぃ! 援護してくれぇええ!!」


 はぁーー?


「な、なんで私が!?」


 ロックスライムはたったの5匹なのよ!?


 私は木属性魔法の鞭を出現させた。

 

木の鞭ウッドウィップ!!」


 しかし、私の攻撃はロックスライムに簡単に避けられた。


 そして、


ボコォアアアアッ!!


 再び体当たり。


「ゲフゥウウウッ!!」


 こんなの死んじゃうわ!!

 それに、こんな情けない姿をファンの子に見せられないじゃない。


「赤木! カメラ止めてよ!」


「もう、とっくに止めてるっての! ぐあぁああ!!」


 なによそれ!?


「青野原! 回復援助して!!」


「む、無理です!! 僕にそんな余裕はありま、グォオッ!!」


 こ、このままじゃ全滅だわ。


「に、逃げるわよ!!」


「う、うぐぅう。わ、わかってるけどよぉお。げほぉお!!」


「ぼ、僕も体が、う、動きません」


 くぅ!!

 本当に死んじゃうわ!!


「バカ! 2人とも走って!! 早く!!」


 私たちは、ほうほうの体でダンジョンから抜け出した。


「はぁ……はぁ……」


 信じられないわ。

 ここはC級なのよ?


 私たちは青野原の回復を使って傷を癒した。


「赤木、どういうことよ!?」


「知るかよ!」


「C級なら無双ができるって言ったのはあんたじゃない!」


「だから、んなもん一般論だろうが!! 俺らはA級が余裕だったんだ。ならC級がいけると思うのは当然だろうが!!」


 なによそれ。

 ボロ負けだったじゃない。


夜摘やつみちゃんが助けてくれなかったら僕たちは全滅でしたね」


 C級ダンジョンで瀕死……。

 信じられないわ。


「ったくよぉ。もう今日は飲みだな。酒飲んでさ。嫌なことは忘れようぜ」


「1人で飲んでなさいよ。あたしは帰るわ」


「はぁ? 連れないなぁ。んじゃ、青野原行くか」


「僕もご遠慮しますね。赤木と二人きりで愚痴を言い合うなんてまっぴらごめんです」


「なんだよぉお? 仲間だろうがぁ?」


「そんな言葉は絶好調な時に言ってください。僕は帰ります」


 私たちはダンジョンの入り口で分かれた。


 配信動画は消してるって言ってたけど、管理画面でコメントは観れるんじゃないかな?


 ダンジョンの中盤くらいまでは配信していたからコメントは残っているはずだ。


 どんな反応なんだろう?

 ああ、絶対に碌でもないのに決まってる。

 でも、ファンの反応が気になってしまうわ。


 あたしはスマホの画面をスライドさせた。


『弱ぁあああ!!』

『はい。雑魚ぉおおおおwww』

『赤木ざまぁwww』

『イキリ赤木のざまぁ最高』

『青野原、ダサァwww』

『激弱じゃん』

夜摘やつみは氏ね』

『ブスは一辺、氏んだ方がいい』

炎の眼フレイムアイオワタ』

炎の眼フレイムアイ終了のお知らせ』

『良い気味だわw』


 あああああああああああああ。

 見るんじゃなかったぁああああ。


 しかも、


「ああ! チャンネル登録者数が7万人に減ってるぅうう!!」


 ってことは……。


「うう! 公式ヅイッターも1万人まで減ってるじゃない」


 ああああ、最悪だわ。


 なんとかしなくちゃぁあああ!!


 絶対にこんなのおかしいわよ。

 

 こんなのはあいつがいなくなってからだわ。


 片井  真王まお


 あの男がいなくなってからパーティーの悪夢が始まっているのよ。

 片井が抜けてから、あたしたちが負け出した。

 なにもかもが調子が悪い。

 あいつが抜けた分、雑用をみんなで分担するストレスはある。

 でも、それだけじゃないわ。

 明らかに戦闘で不利になっているんだもん。


 それに……。


 私は最近人気になっているチャンネルは開いた。


 これ……。


 そうだよね?


『はい。どうも俺です。今日も防御魔法だけで探索します』


 この声……。

 片井よね?


 あいつが、今ネット上で人気急上昇中の鉄壁の探索者なの?


 うう……。

 そんなこと、思いたくもないけど……この声。


『はい。こうやって、魔法壁を押し込んで倒します』


 間違いないわよねぇ?

 これ片井よねぇえ?


『はい。倒せました。今回も楽々攻略です』


 無能の片井よねぇええええ?


 それが……。


 チャ、チャンネル登録者数10万人んん!?


 私たちを超えてるじゃない!?


 それに、このコメント、


『流石は鉄壁さん!』

『気持ちいい!!』

『最高』

『攻略早www』

『かっこいい!』

『乙です!』

『次回も期待してます!』


 どういうことなのよぉおお!?


 夢なら覚めてぇえええ!!

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