赤章ー1 伝令兵として
勇俊が目を覚ますと、そこにはのぞいている女の顔があった。
勇俊はびっくりして、ワァと声を上げると、その女もキャーっと声を上げた。
その女は後ろにのけぞり、他の女を呼び、勇俊は飛び起きた。よく観察してみると、その女たちは看護師のようだった。でも、服装は時代劇のように、長い裾に白いかっぽう着のようなものを着ている。呼ばれた中年の女が冷静に勇俊の脈に手を当てた。
「よく回復しましたね。脈もなくなって、埋葬の準備をしようとしていたのに」
「ここはどこで、何年なんだ」
勇俊はどこに転生したのか気になってきいてみた。
「え?おぼえてないのですか?」
中年の看護師のような女性は不思議そうに聞き返した。
「おぼえてないというか、俺は未来から来たんだ」
勇俊は正直に話したが、話をきいていた看護師の女性たちはプっと吹きだした。
「はいはい、ここは新羅の都で善徳女王の御代になって10年ですよ。さぁ、おかゆを食べて、ゆっくり休めばよくなりますよ」
中年の女性はおかゆを渡したが、勇俊はスマホが首にかかっているのに気が付いた。おかゆは食べず、スマホを起動させると、642年9月3日となっていた。マップ機能を起ち上げると、新羅の都
「なんですか?それは?」
看護師の若い女性がスマホをさわろうとするので、勇俊はスマホを布団の中に隠そうとした。
「はしたないことをするでない。この方は金品釈様の従者である。戦乱の最中に陣中を突破して、金品釈様の手紙を届けてくれたのだ。そうだ、お前は金春秋様に従者が生き返ったと伝えてくるがよい」
中年の看護師が勇俊を助け船を出してくれたところで、勇俊はその女性に自分の身の上を聞いてみると、自分の名前は
「さぁ、おかゆを食べれば、気持ちも落ち着いて、何か思い出すかもしれない。さめてしまわないうちに食べなさい」
永哲は看護師の勧めに従い、おかゆを食べた。麦かゆであったが、にんにくも入っていて、おいしいとはいえないが、おなかを満たすことはできた。食べているときに永哲なりに、状況分析してみた。スマホがあるということは、女店主のいったことはデタラメではない。そして、麦かゆの味が生々しいところから、夢でもないことがわかった。金春秋といえば、唐も百済も破った新羅の英雄である。これはミッションは楽勝だなと考えた。
おかゆを食べ終わり、スマホをどこに隠そうか迷っていると、ドラマから出てきたのではないかと思われるくらいかっこいいおじさんが部屋に入ってきた。看護師たちは一斉に礼をした。先ほどの中年の女性が永哲の裾を引っ張るので、永哲もお辞儀をした。
「よく、生き返ったな。苦労したのだな。記憶を失っているときいたが、どうする故郷へ帰るか、私の従者となるか」
永哲は顔を上げてきいてみた。
「あなた様が金春秋様ですか?お尋ねしたいことがありますが、聞いてもよろしいでしょうか?」
「わしの顔も覚えてないのか?まぁ、よい、聞きたいこととはなんだ?」
金春秋は瀕死の兵が生き返ったときいて喜んだが、記憶も失うほど、凄まじい戦火だったのかと思い、無礼な奴としかることはしないで、質問に答えてあげることにした。
「この石と同じ石をお持ちではないですか?」
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