黄章ー1 料理人として
その声にびっくりして、起き上がると何者かが声を上げながら小屋を出て行った。
彬彬はゆっくり小屋を見回してみると、そこは納屋のようだった。自分をみると、時代劇でみるような粗末な茶色の服を着ており、むしろが体にかかっており、身分が高そうにはみえなかった。スマホを首からかけており、小さな巾着がついていた。その巾着の中身をみると、金塊が入っていた。スマホを首にかけているということは、あの女店主の言っていたことは現実だったのだ。そして、自分は仮想世界にいる。スマホを起動させようとしたら、男が二人、納屋へ入ってきた。
「鵬徳よ。起きたか」
時代劇の将軍の服装をした品のよい自分と同じくらいの若い男が彬彬のことを鵬徳と呼んだ。
「俺は鵬徳というのか」
彬彬が自分の名前を確かめようとすると、男二人は顔を見合わせ、彬彬にはきこえないように相談し始めた。
「わしの名前もわからないのか?」
将軍の服装をした男は彬彬に顔を近づけて訊ねた。
「はい。わかりません。ここはどこで、何年で、あなた方はどちら様ですか?」
将軍の服装をした男は、ふぅっとため息をついた。
「わしは魏無知で、其方は
鵬徳はこの状況を分析し、魏無知と共にミッションを成功させようとした。
「それなら、項軍ではなく、劉邦の配下になったほうがいいでしょう」
「なぜだ」
魏無知は顔を鵬徳から離し、立ち上がった。
「それは項羽は劉邦に負けるからです。それに今、項軍に降っても我等は優遇されないでしょう、だったら弱小の劉邦につくほうが我等は喜んで優遇されるでしょう」
鵬徳は時代劇でみるかのように土下座して、懇願するように言った。
「ふむ。一理ある。お前は自分の名前すら思い出せないのに、劉邦のことは知っている。一介の料理人にすら、劉邦は慕われているとすると、劉邦は只者ではないな。そして、お前は項羽に劉邦は勝つという。よし、わかった。配下の者を集めて、劉邦に降ろう」
魏無知は覚悟を決めたかのように、刀を抜き、その刀を鵬徳の首に当てた。
「進言に命を賭けられるか?」
魏無知は鵬徳の目を凝視した。鵬徳は魏無知の気迫に圧倒されて視線をそらしそうになったが、耐えて視線を合わせた。
「命をかけて、進言致します。劉邦様は天下人になります」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます