序章ー3 ラオスから来た留学生

 リー・マイヒョンは落ち込んでいた。ラオスの通貨であるキープが暴落し、次年度の語学学校の学費が払える目途がたたないのであった。ラオスに住んでいる両親は親族と融資してくれそうな銀行に借金を頼みこんでいるが、まだ色よい返事はないので、アルバイト先をみつけてくれと言われた。せめて、神頼みしようと思い、浅草に来たのだった。不安は取り除けず、浅草寺から今戸神社の近辺を歩いていたら、ネットカフェ、メテオリテという看板に、御利益盛沢山という字面をみつけ、ここで探したら、良いアルバイト先が見つかるかもしれないと直感した。しかし、数日通ったものの、これといって良いアルバイト先がみつかったわけではなかった。ネットカフェ代も惜しまれるので、今日、みつからなかったらハローワークに相談しようと覚悟を決めた。


 やはり、みつからず、ダメだったかという落胆に沈み、会計をすませようとすると、新人らしき、自分と同じくらいの年齢の名札に白井と書かれてある女の子に声をかけられた。


「すみません。これと同じ石で違う色の石をお持ちではありませんか?」


 白井のネックレスには勾玉の白い石がついており、マイヒョンは同じ形の石を祖父からもらっていた。不思議に思い、鍵につけていた自分の黒い石を取り出してみせた。


「この石ですか?」


 白井はネックレスを外して、マイヒョンの石に触れさせると、虹色に光った。


「この石です。別室で少しお話させて下さい。お時間はありますか?」


 白井は軽く自己紹介して、休憩室にマイヒョンを招き寄せた。マイヒョンは日本で自分と同じ石を持っている人と巡り合い、興奮した。祖父からきいた伝説は半信半疑だったが、今となっては信じることができる。マイヒョンの民族はアジアの最初の支配者だったという伝説である。マイヒョンはラオス族ではなく、苗族である。勿論、考古学的に立証されているものではないことは、マイヒョンにもわかっていた。では、なぜ、白井は自分と同じ形の石を持ち、その石と触れ合うことで虹色に光るのか。


「今、お困りではありませんか?今から私の話すことに協力して頂ければ、店主から百万円謝礼金をお支払いします」


 マイヒョンはその話に乗ることにした。自分と同じ石を持っているという親近感と

とにかく、お金が欲しかった。


「もし、百万円もらえるのであれば、協力します。どうぞ、話してください」


「この契約書にサインして、2月3日の19時にここへ集合してください。ミッションが終了すれば、百万円支払います」


 契約書には1泊2日の旅行で、ミッションは自分の石と同じ石を持つ人を探し出し、その石の肯定的な感情に共感すれば、帰ってこられるが、共感できなければ、旅先で死ぬことになる。死亡しても、責任は負わない。旅行に参加している者たちで情報交換できるし、スマホを携帯できる。旅にあたって、金塊を支給する。


 マイヒョンは覚悟を決めてサインし、2月3日に来ることを約束した。

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