犬の骨 34
小学生からの友人Hは子どもの頃から「霊感が強い」という事で地元では有名だった。あまりにも“視え”るので、今見えてる物が人間なのか、普通は見えない物なのかH自身もわからない程だった。Hから「あの電柱の所のオバサン気味悪いな」と言われても我々には見えず、それで気づくという事もあった。
Hはこの事について「あまり良い物じゃない」「嫌な物を見たと落ち込む」と言っており、自分からその事について言う事は少なかった。
大学生の頃、どこからかその噂を聞きつけた先輩がHに「俺の部屋を見てくれ」と言ってきた。
Hは最初は断ったが、先輩があまりにもしつこいのでしぶしぶ承諾した。
先輩が言うには
「毎晩、午後9時になると俺の部屋に去年亡くなった彼女がやってくる。姿は見えないが気配でわかる。彼女が何を訴えているのか教えて欲しい」
との事だった。
Hは午後8時頃に先輩の部屋に行き、彼女の霊が現れるというソファー(生前彼女がよく座っていたらしい)をじっと観察したという。
翌日、俺はHにどうだったか尋ねてみると、Hは怪訝そうな顔をしながら俺に説明した。
先輩は彼女だと言い張っていたが、どう見てもオッサンだった。
オッサンは先輩を鬼のような形相で睨んでおり、Hに気が付くと今度はHを脅すように睨みつけてきた。
先輩は彼女だと信じ切っているし、オッサンは怖いしで何といって良いかわからず、「先輩の事を心配している」と適当な事を伝えた。
先輩はオッサンのいる方に向かって何度も愛しているだの、ごめんだの何だのと泣きながら言っていた。
さっさと帰ってきたが、あれで良かったのだろうか。心配なので今度先輩に会ったらそれとなく伝えておく。
Hはそう言っていたが、けっきょく先輩はそれっきり学校には姿を現さなかった。
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