第16話 攻略の遅れ
<横暴な勇者視点>
街に戻った俺は早速冒険者ギルドに向かった。ギルドに入ると酒を飲んで騒いでいた冒険者が入口にいる勇者を見た途端、顔を青くする。
俺は、受付にゆっくり歩いていくと受付嬢に話しかけた。
「おい、ギルドマスターの部屋へ案内しろ」
「か、かしこまりました」
本来であればギルドマスターの部屋に冒険者を通すことなどめったにないが、勇者の圧に耐えきれなかった受付嬢は、素早い動きでギルドマスターの部屋へ案内した。
コンコン
「なんだ。今は忙しいから、急用でなければ後にしてくれ」
そんな言葉を気にせずに俺はドアを開き、部屋の中に入る。ギルドマスターは眉間に血管が浮き出ていたが王城から勇者の要望には可能な限り答えることと言われていたため、ソファの対面へと移動した。
「それで勇者殿、霧が発生したと思われる場所はどうでしたか?」
ギルドマスターが下手にでて話しかけてくる。
「あれは、ダンジョンで間違いないな。霧の発生は止まっていたが偵察に出た冒険者が戻ってこなかったし、ある地点を境界に姿も見えなくなった」
ギルドマスターは顔を青くして、確認する。
「案内に出した冒険者が戻ってこなかったのですか?あれでもこのギルドでは調査を主に受けていたとはいえトップの冒険者だったのですが」
「あれでトップ?笑わせるな。ダンジョンに入った途端反応がなくなる程度だったぞ」
「そこがおかしな点なのです。彼らは慎重なことで有名でしたから、ダンジョンに素直に立ち入るとは思えないのですが・・・」
そうギルドマスターが言った瞬間、俺はギルドマスターの胸ぐらをつかみとり持ち上げた。
「俺が嘘をついているとでもいうのか?」
「そういうわけではありません。ああ。そうだ、近隣の村の様子はどうでしたか?」
急に話を変えてきたギルドマスターをとりあえず下ろした。
「村の様子なんて確認してねぇよ。俺はダンジョンをつぶすのが目的であって村を救うのは目的外だからな」
ギルドマスターはその言葉に唖然とした。
「それで、街には何の用で戻られたのですか?」
「ダンジョンの様子をもっと確認したいから冒険者をもっと寄越せ」
「それは、冒険者と直接交渉していただかなければ私にはどうにも・・・」
「ああ?お前はギルドマスターだろうが。緊急依頼だと言って冒険者を招集できるだろ」
「街や村に何の被害も出ていないのに緊急依頼など出せません」
「ちっ」
俺は自然と舌打ちをすると、何か手はないかと考える。
「ダンジョン近くの村に調査隊を出せ。その間に俺は冒険者と交渉する」
「それくらいであれば、何とかします」
こうして俺はダンジョン攻略の面倒さにあきれ始めていた。
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