第14話 第一の魔族
俺は魔族となった村人に尋ねる。
「死ぬことが出来なかったみたいだけど、気分はどうだい?」
村人はまだ正気に戻れていない様子で生返事しか返ってこない。しかたがないので手っ取り早く正気に戻ってもらうためにホーンラビットに突進してもらったのだが・・・
「傷がついてない。もはや人間ではないね」
その言葉に反応してか魔族となった男はこちらに尋ねる。
「俺はどうしたらいい。死ぬことも村に戻ることもできずに・・・」
「本当に戻れないのかい?村に戻ってみてもいいよ。ダンジョンコアからどの程度離れられるのか気になるし」
俺はいつもの調子で話しかける。魔族となった男は流石にイラついたようで俺を殺しそうな目で睨んで来る。
「それに考えて見なよ。今は君一人が魔族となったかもしれないけれど村の人間をさらってきて魔族にしてしまえば君と同じだよ。仲間が増える可能性があるのだからそんなに悲観しなくてもいいんじゃないかな?」
「なかま?そうか、仲間か。確かにお前は魔人ではなく魔族と呼んだな。これから1人にならないように仲間を作らないとな。あははははははははは」
俺はいい具合に壊れた道具が出来た程度に考えていたが、こいつに村人をさらってきてもらって新たに実験の道具を手に入れるのも悪くないと考えていた。
「とりあえず、死にたいという気持ちはなくなったということでいいのかな?」
俺がそう尋ねると。
「ああ。今はとりあえず仲間が欲しい。この苦しみと喜びを分かち合える仲間が」
どうやら魔族になって気分がHighになっているらしい。それでもかまわないかと思いつつ俺は命令をくだす。
「じゃあ、村に行って女を優先して攫ってきてくれ。お前も何がとは言わないけれど女が必要だろう?」
「分かった。すぐに向かう。攫ってきた村民はどうしたらいい?」
「それはお前がつながれていた洞窟につないでおいてくれ。おそらく放置しておけばゴブリン共がやってくれるだろう」
「それで出口はどこだ?」
俺は【ぼかし】を【リセット】することを完全に失念していた。【リセット】を発動した瞬間、魔族となった男が襲い掛かってきた。
「貴様ごときに扱われるようなら死ぬ方を選ぶ」
その時、ダンジョンコアが光って俺の手には心臓のようなものが握られていた。そして俺は、その心臓を握りつぶすと魔族となった村民は血を吐き倒れた。
「魔族に変化させる前に徹底的に心を折らないとダメだな。まあいいデータが取れたから良しとするか」
そういって俺はダンジョンコアの部屋から立ち去る。血を吐き倒れた村民が呪縛から解放されたように晴れやかな表情をしていたことに気付きもせずに。
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