第13話 新種族

俺は冒険者たちの話を聞いた後、ダンジョンに捕らわれた第一村人の様子を見に行った。


村人はかなり憔悴した様子で、こちらを見るなり「殺してくれ」と懇願してきた。


俺は先ほどの勇者の話をするとどうなるかが気になったので話してみることにした。



「君、ダンジョンって知ってる?今、君は捕らわれている場所なんだけどそれを破壊するために勇者と呼ばれる特別な力を持った人間が来ているらしいんだ」


そういうと、村人の目に光が宿ったような気がした。


「だけどね。ここに視察に来たみたいだけど一緒に来てた冒険者を放り込んで様子見した後は自分だけ帰っていったみたいなんだ。そんな勇者にこの世界を任せていいのかな?」


「それを俺に話して何をしたいんだ?」


「うーん。どういった反応をするのか気になっただけなんだけどね。ところで死にたいと言う気持ちが変わったかい?」


「・・・。変わらない。殺してくれ」


まあ、仲間を犠牲にするような勇者に期待はしないだろう。


「分かった。死にたいのであれば、また別の実験に付き合ってもらうよ。運が良ければ死ぬことができるよ」


俺はゴブリンに命じて村人をダンジョンコアの場所まで連れて行った。もちろん壊されるわけにはいかないため用心に用心を重ねている。


ダンジョンコアを目の前にした村人は急に震え始めた。俺は疑問に思い村人に尋ねる。


「急にそんなにおびえてどうしたんだい?」


「お前にはこの物体のおぞましさが分からないのか?」


「分からないから説明してくれる?」


「詳しくは言えないが、おぞましいほどのエネルギーを感じる。それだけだ」


「ふーん。まあそれはいいとして、君にはこのダンジョンコアに心臓を捧げて貰うよ」


「かまわん。それはそうと心臓を捧げて生き残れるとでも思っているのか?」


「まあ実験だよ。諦めているのであればかまわないだろう?」


「ああ。何をしたらいい?」


「そのまま動かないでいてくれればいいよ」


俺はダンジョンコアを操作して、村人の心臓をダンジョンのエネルギーに変換した。すると新しい項目として心臓を魔素で置換するという項目が生まれた。


俺は何のためらいもなくその項目を実行する。


息絶えたかに思われた村人は立ち上がり自分の姿を見て絶望していた。


その姿は人間の姿に羽と尻尾が生えた、いわゆる魔族の誕生であった。

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