第11話 勇者襲来

<横暴な勇者視点>


「ここが急に霧が発生したという場所か?全くそんなことねーじゃんか」


そう尋ねられたのは前回ここを調査した冒険者4人。その4人は勇者に反論する。


「前回来た時には確かに霧のようなものが発生していました。そのダンジョンマスターとやらが倒されたか、もしくは、ダンジョンの仕様が変更されたのでは?」


「可能性があるとすれば仕様を変更したほうだな。ダンジョンが消滅した場合は勇者に連絡が来る」


「そうなのですか。しかし、仕様が変更されたとして何も情報がない状態で立ち入るのは危険では?」


「お前ら慎重だな。試しにちと入ってみてくれねぇか?」


「嫌です。底辺の冒険者であれば金を積めば行ってくれると思いますよ」


「街に戻るのが面倒なんだよ。ちっ!。仕方ねぇ」


そう言うと勇者は冒険者の1人を抱え上げ、ダンジョンに放り込んだ。


「あなたは何を。くっ!。それでも勇者ですか」


そういうと仲間を放り込まれた冒険者たちはダンジョンへと入っていった。しかし、ダンジョンの敷地をまたいだ瞬間、俺の目の前から姿を消した。


「転移か?。それとも敷地外からはダンジョンの中が見えないのか?どちらにしても厄介だな」


勇者は意を決してダンジョンの外から攻撃を仕掛ける。


「熱波」


その掛け声と同時に勇者の後ろから高熱の風がダンジョンに向かって吹き込んでいった。しかし、それだけで魔物や先ほど放り込んだ冒険者の悲鳴などは聞こえてこない。


「こりゃ。ダンジョンとの境界線に結界が張られてそうだな。入るのは問題ないとしても外から攻撃はできなさそうだ。こりゃ。街に戻って冒険者を大量に集めて数で押してみるか」


そう決めると勇者は街の方角へと歩き出した。投げ捨てた冒険者のことなどもう忘れてしまったかのように



<放り込まれた冒険者視点>


急に勇者に抱えられ投げ込まれたときは驚いたが、長年の経験をもとに受け身をとることに成功した。しかし、起き上がった瞬間、視界はぼやけており元の場所への方角がわからない。


そんなことを一瞬考えた隙にホーンラビットとゴブリンが襲い掛かってきた。ホーンラビットの攻撃は何とかさばいたが、ゴブリンの攻撃は装備に触れた。


俺は急いでその場を離脱しようとしたのだが、急に仲間の声が聞こえた。


「レオリオ。大丈夫か?」


そう言った仲間も急に視界がぼやけたのか。それとも魔物の襲撃にあったのか、そのあとに続く言葉はなかった。


俺も視界をふさがれたうえで魔物の襲撃に耐えるのに限界が来ていたため悪態をついた。


「あのクソ勇者が」


その一言を残し意識を刈り取られた。

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