第3話

 目の前の戦いは「終末戦争(ラグナロク)」と後に伝えられる魔王が率いるモンスターと人間たちの戦争だった。


 そんな戦場に放り込まれた俺は無我夢中でモンスターたちから逃げて、逃げて、逃げた。すると途中で人間軍の兵士に保護され、一命を取り止める。


 しかし、いきなりこの世界に放り込まれて何も持たなかった俺の立場は弱い。保護してもらった国の街で様々な雑用のような仕事を探し、がむしゃらに働いた。


 それからニ、三年が経った頃に俺にも軍への徴兵要請が届いた。人間軍が魔王軍に対して劣勢となっているために若者をたくさん徴兵しているらしい。


 軍に入るとまずは適正検査を受けさせられる。この世界には「魔法」が存在しており、その魔法の力を示す魔力や生命力、腕力、走力、精神力が不思議な水晶玉に触れることで測ることができるのだ。


 俺の番になり、水晶に手を開いた状態で載せると神々しく光だし、数値が表示される。


 周りの人間たちが騒がしい。どうやら数値が異常に高かったようで、その適正検査での過去最高の記録を遥かに凌ぐものだったようだ。


 俺は勇者として「終末戦争」へと駆り出されることになった。


 正直に戦うことへの恐怖はあったが、人に頼りにされることへの喜びは大きく、やりがいを感じた。


 そして、ついに魔王を討伐することに成功し、世界に平和が訪れた……。


 いや、訪れるはずだったと言うべきなのだろう。


 

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