第39話 エンマタイ、闇への帰還

 この出来事は、邪馬台国にとって大きな損失でありながらも、山の民を最後まで守り抜いた指導者、卑弥呼の名を後世に知らしめるものだった。

 山の民は涙を流し、卑弥呼の死を悲しんだ。

 ミコたちは洞穴から出てきて、卑弥呼が命を捧げて溶岩と火砕流をそらせ、山の民を守ったその勇気に深い感銘を受けた。

 彼女は、自分の水晶と、邪馬台国に伝わる全ての勾玉を空高く投げ、火砕流を少しでも打ち消そうとした。

 水晶は地面に突き刺さり、これまでの地割れ以上の凄まじい割れ目を引き起こし、溶岩を止めることに成功した。

 しかし、地割れはあまりにも広がりすぎて、山の民や川の民、海の民の領域まで広がってしまった。

 その結果、地の民のエンマタイの領域は溶岩と火砕流に囲まれ、逃げ場がなくなってしまった。

 しかし、エンマタイは身を守るために盾を足に履き、溶岩でできた鎧を着て、溶岩の上を歩いて行った。

 そして、ミコに言った。

「卑弥呼が死んだ今、山の民に我々を倒す力はない。諦めて我々の支配下に入るのだ!従わなければ、全ての民を滅ぼす。」

 そう言い放ったエンマタイは、地の民の洞窟へと消えていった。

 ミコと山の民たちは、卑弥呼の死も癒えぬまま、エンマタイへの怒りと、地の民の強さに心穏やかではなかった。


 ミコは、卑弥呼が残した言葉である山の民の復興を第一の使命と考え、エンマタイとの戦いも去ることながら、地の民との闘いよりも山の民の犠牲を少しでも少なくすることを考えていた。


 一方、レミルとルイは、川の民と協力して、地の民の洞窟の入り口に岩を積み上げ塞いでいた。

 レミルは吹き矢で地の民をやっつけながら、川の民はその隙を見て岩を塞いだ。


 ほとんどの洞窟は岩で塞がり、山の民の犠牲を最小限に食い止めることに成功した。

 しかし、エンマタイが逃げ込んだ洞穴の入り口はあまりにも大きく、岩で塞ぐことができなかった。


 レミルとルイは、一旦山の民の元に戻り、卑弥呼の死の知らせに涙した。

 それでも彼らは、地の民の洞窟を、岩で塞いだことを伝え、今後のエンマタイとの戦いについて、ミコの指示を受けた。ミコは、エンマタイが逃げ込んだ最大の穴をどのように処理するかが、この戦いの行方を決めると感じた。


 ミコは、地の民との戦いを拒否していた火の民の協力を得る以外に術はないと考え、エンマタイを打ち倒すために、火の民の力を借りるため、火の民の支配者であるチヒラに連絡するよう、ララを火の民のもとへ戻すことにした。

 地の民の力を知り得ているチヒラは、なかなか戦いに同意しなかった。

 しかし、ララの交渉術と必死に訴える姿に、チヒラも条件付きで戦いに参戦することを承諾したのである。

 その条件とは、山の民のジルとレミルを火の民の戦士として引き渡し、さらに卑弥呼の勾玉と杖をチヒラに渡すことだった。

 ララは、この情報をミコに伝えるために戻り、山の民の意見を急いで求めた。

 ミコと山の民は、この戦いに勝利するために、火の民の協力が必要であるという事実を受け入れることにした。

 ジルとレミルも、これを十分に理解していた。

 こうして、地の民との最終決戦の幕が、切って落とされたのである。

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