第31話 エンマタイの逆襲

 戦いが終わったと思われたその瞬間、卑弥呼は座り込み、涙を流した。

 静寂の中から、低く響く声が聞こえた。

 そう、それはエンマタイの声だった。

 山の民よ、まだ戦いは終わっていない。

 我々の仲間が地の底で眠っている間、お前たちを全滅させてやると言った。

 言葉が終わると同時に、卑弥呼が集めていた太陽の光は、急速にどす黒い雲に包まれていった。

 それはエンマタイの仕業だったのだ。

 そして、雷が轟き始めた。

 稲妻の光が瞬く間に広がり、山の民たちは次々と倒れていった。

 卑弥呼は再び両手を上げ、太陽の光を呼び寄せようとしたが、地の民の支配者であるエンマタイの力には敵わなかった。

 その事に気づいたミコは、海の民であるチグに力を貸してもらうよう頼みに行った。

 チグは風の力でエンマタイの雲を吹き飛ばしてくれた。

 それを見計らって、ミコは卑弥呼に

「今です!」と告げた。

 卑弥呼は雲が消えたことに気づき、両手を広げて再び太陽の光を地の民に向けた。

 地の民は再び光に倒れていった。

 しかし、その時、卑弥呼とミコは後ろから忍び寄る影に気づかなかった。

 後ろから忍び寄る影はエンマタイだった。

 エンマタイは得意とする火のついた槍を卑弥呼に向けて放った。

 その槍は速すぎて目に見えず、鋭さも際立っていた。

 卑弥呼は逃げることさえできなかった。槍が彼女に刺さったと思われた瞬間、まだ傷が癒えていなかったミユヒルが現れた。

 卑弥呼を狙った槍は、実はミユヒルの背中に突き刺さっていたのだ。

 エンマタイは驚いた。

「どうしてだ!私の槍の速さについていける人間がいるとは!」

 と叫び、逃げようとした。

 ミコはミユヒルを抱きながら、首にかけていた勾玉を空に投げた。

 そして言った。

「卑弥呼様、お願いします」と。

 それを受けて、卑弥呼は勾玉の穴に光を当て、エンマタイを攻撃した。

 勾玉の小さな穴から放たれた光が、エンマタイの腕に当たった。

「ギャー」とエンマタイの叫び声と共に、彼は地の底へと逃げていった。

 そして、ミコと卑弥呼はルイを呼び、ミユヒルを治療させた。

 しかし、ミユヒルの傷は深く、手の施しようがなかった。

 最後の力を振り絞って、ミユヒルはミコと卑弥呼に言った。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る