第30話 卑弥呼の力

 それにより、地の民の犠牲は皆無に近かった。

 しかし、とりあえず地の民の攻撃は止んだ。

 地震から逃れた場所で卑弥呼は山の民の生存者を集め、彼らに向けて語りかけた。

 彼女は口を開くと、力強く宣言した。


「地の民の攻撃はあまりにも非道です。私は自分の持つ力の限り戦い、彼らの攻撃を止めさせます。私自身が戦います。しかし、ミコよ、あなたは私の使いとしてここに留まってください。私はあなたの力を必要としています」


 卑弥呼の言葉に、ミコは戦いの過酷さを実感した。

 彼女はミコの手を握りしめながら、再び使いとしての役割に戻るように言われた。

 わずかな山の民の領域に、川の民や海の民の力を借り、防壁を築くことや、攻撃に使える武器作りを急いだ。

 また、空の民の領域から地の民の出没する場所を探り、戦いの準備を整えた。

 そして、ついに戦いが始まった。

 しかし、今度は狭い場所にしっかりと築かれた塀や堤防は、地震や崖崩れにも動じることなく立ち続けた。

 しかし、地の民は地上に姿を現し、燃え盛る岩や石を投げつけて攻撃を仕掛けてきた。

 山の民の塀や堤防でもこれを防ぐことはできなかった。

 その時、バグルはわずかながら残っていた馬を集め、山の民を乗せて安全な場所へ移動させた。

 一方、ジルとレミルは再び地の民の洞窟へと向かい、攻撃を試みた。

 ジルの矢と、レミルの吹き矢で地の民が洞窟から現れると同時に、戦いが始まった。

 この戦略はかなりの効果を上げ、地の民の攻撃を一時的にはばむことに成功した。

 しかし、他の場所から現れる地の民の攻撃はますます激しくなり、卑弥呼の近くまで迫ってきた。

 傷がまだ癒えていないミユヒルや、ルイは必死に戦いながら卑弥呼を守った。

 しかし、卑弥呼は最後の手段として両手を広げ、太陽の光を集めて地の民に放った。

 そして、あらゆる光を集め、地の民の洞窟や周囲の全てに光を撃ち当て、地の民を一掃する勢いだった。

 この光の攻撃に、ミコは驚愕きょうがくした。

 自身が空の民との戦いで、卑弥呼様がこの攻撃を放つことができたはずだと、彼女は思った。

 やはり、ミコは自分以上に偉大な存在である卑弥呼の存在を確信したのだ。

 そして地上に現れた地の民は、卑弥呼の光の攻撃によって次々と倒れていった。卑弥呼は涙を流しながら、両手を下げて座り込んだ。

 彼女の涙は、戦いにおいて多くの犠牲が出た悲しみの涙だった。

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