第22話 平和への道

 しかし、総合的に見て火の民の優勢は変わらなかった。

 ミユヒルは身軽さを生かし、ララと接触するために行動を起こした。

 もし火の民に捕まれば命の保証はない。

 しかし、ミユヒル以外に火の民に気づかれずにララのもとへ辿り着ける者はいなかった。

 ミユヒルは身軽さと素早さを活かし、ついにララのもとに辿り着いたのだった。


 ララはミユヒルに気づいて、

「あなたは山の民のミユヒルではありませんか!なぜここへ来たのですか?」

 と尋ねた。

 ミユヒルは言った。

「ララ様、私と一緒にミコに会ってください。」

 するとララは

「ミコとは誰ですか?」

「前に卑弥呼様の使い人だった者です。空の民との戦いでミコが多くの犠牲者を出したということで卑弥呼の使い人から外されたのです。」

 とミユヒルが答えた。

 ララは驚いた表情を浮かべながら

「それならば、あの壮絶な空の民との戦いを終わらせたのは、ミコだったのですか?我々火の民も、戦うのをためらったほどの空の民の力はすごかったのですよ。これでやっと分かりました。山の民には卑弥呼様以外にも驚くほどの力を持つ者がいるということを…

 危険を冒してまでも私のもとに来てくれた思いはよく分かりました。ミコに会いましょう。」


 ミユヒルはなんとかララを説得し、ミコのもとへと連れて行くことに成功した。ミユヒルはララを連れてミコのもとへと向かい、ミコはレミルを抱えてミユヒルの帰りを待っていた。

 ララは言った。

「あなたがミコ様ですね?」

 ミコは小さく頷き、ララに対して言った。

「あなたは戦いを好まないと思いますが、このまま戦いを続ければ、お互いの犠牲は増えるばかりです。お願いです、戦いを終結させましょう。」

 そしてミコはララの手を取り、涙ぐんだのであった。

 最初から戦いにはあまり賛成ではなかったララは、ミコの提案に賛同した。

 そして、ミコの戦いの終結方法を聞くためにララは尋ねた。


 ミコは

「卑弥呼様の力は私以上のものがあるのです。太陽の光を一つに集め、全てを焼き尽くし、この世の生きるものを全て滅ぼしてしまうほどの力です。しかし、このような力を持ちながら、空の民の戦いでも使わず、火の民にもまだ卑弥呼様の力を見せていない。それは人間の命の尊さを知り、犠牲者を少しでも少なくしようとするお考えなのです。」

 ミコはララに、空の民との戦いで多くの犠牲者を出してしまったことを告白した。

 サジの死があったとは言え、理性を失ったことを未だに後悔しているのだった。

 そして、ミコはいつも冷静に対応する卑弥呼の姿勢に敬意を抱いていることをララに伝えた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る