第18話 チヒラの策略

 火の民と山の民の戦いが激しくなり、火の民は山の民の行動を見極め、火の矢を放って攻撃し始めた。

 山の民は、卑弥呼の力によって火の民の出現を予測していたが、火の民の守りや攻撃を見破ることはできなかった。

 火の民の矢は、網に当たると先端が十字に開き、あみからまる仕掛けになっていた。

 それゆえ、火の矢を跳ね返すことができなかったのだ。

 火の矢は数多く飛んできて、網を焼き尽くしはじめた。

 サコは危険を察知し、火の民の元へ動物たちを向かわせようとした。

 しかし、火の民の周りは火で囲まれており、動物たちは火を怖がって前に進むことができなかった。

 一方、ヒコは戦いの最中さなかに心を安らぐ果樹を持って火の民の元へ向かった。

 しかし、ヒコが果樹を置いて去った後、火の民の支配者であるチヒラは、果樹を皆で分けることは許さず、他の果樹を与えるよう命じたのだ。


 ルイは山陰やまかげに隠れて眠りの薬を作り、火の民が現れるのを待っていた。

 一方、ミユヒルはヒコが心を安らぐ果樹を火の民の元へ持って行ったことを確認して、火の民の情報を集めていた。

 ミユヒルは必死に火の民の偵察ていさつを行っていたのだ。

 黒い水の力は、普通の水ではなかなか消せないものであり、火を使った技術の鮮やかさや、火の民の支配者であるチヒラの闘争力の素晴らしさは、ミユヒルを驚かせるものだった。

 彼はあらゆる情報を調べ尽くし、火の民の弱点を探ろうと試みたが、なかなか手がかりは得られなかった。

 ただ一つ、火の民はミコの存在を知らなかった。

 卑弥呼の使い人から外されていたため、火の民の情報源となることはなかったのだ。

 そうこうしているうちに、ミユヒルは火の民に関するすべての情報を集め終え、卑弥呼のもとへ帰ることにした。

 しかし、火に囲まれた火の民の村から抜け出すことは、容易ではなかった。

 そのため、ミユヒルは仕方なく火を飛び越えて逃げることにした。

 彼は身軽であったため、木の上から網を使って火の外へと抜け出すことができた。

 しかし、待ち受けていたのは火の民の支配者であるチヒラだった。

 チヒラは不適な笑いを浮かべながら、

「お前が我々の情報を調べに来ることは分かっていた」

 と言い、ミユヒルを取り押さえた。

 その頃、火の民たちはルイが待ち構える場所に近づいていた。

 ルイは火の民の接近を確認し、サジから受け継いだ眠りの薬を燃やして、その煙により火の民を眠らせようとしていた。

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