第17話 卑弥呼の不安

 戦いの幕が切って落とされた。

 火の民の矢が山の民の跳ね返すあみに次々と弾かれ、最初は火の民は苦戦していた。

 自ら放った矢によって、彼らが倒されていく光景を目の当たりにすることになるとは、彼らも予想外だった。

 それに気付いた火の民は、山の上へと退却を始めた。


 しかしそこには山の民の最強の戦士、ミユヒルやバグル、ジルたちが待ち構えていた。

 火の民の勢いも虚しく、彼らには太刀打ちできなかった。

 火の民の攻撃は短時間で終わりを迎えた。

 火の民の支配者は知略ちりゃくに優れており、不利な戦いに直ちに撤退し、次の戦闘への研究とし、あらゆる戦いに勝ち続けてきたのだ。

 山の民は火の民との勝利を喜び、サコやヒコやルイの力を発揮する前に、逃げ去った火の民には負ける気がしなかった。


 しかし、卑弥呼は戦いが短すぎることと、火の民があまりにも迅速に退却したことに不安を覚えていた。

 そのため、彼女はミコの提案する戦いの場所への考え方を見直すことにした。

 そして、卑弥呼はミコを呼び出し、安全な場所と戦いに有利な場所を見つけ出すように指示した。

 安全な場所には、子供たちや女性たちを避難させることが決まったが、戦闘に有利な場所は、ミコのダウジングによってもほとんど見つからなかった。

 これにより、火の民の強さが明確になり、卑弥呼は戦いへの不安を心に抱くようになった。


 火の民の支配者チヒラは、山の民の力を調査し、卑弥呼の力だけでなく、ヒコやサコなど周囲の使い人たちの力にも注目していた。

 特に、ルイが野草を使って、人を操る能力や、ミユヒルの軽快な動きに、彼は驚かされた。

 彼は山の民の全てを、徹底的に知り尽くし、戦いの準備を着々と進めていたのだ。


 そして、作戦を立てて、火の民は山の民の本拠地である、卑弥呼の元へと向かうため、チヒラは行動を開始した。

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