第12話 ほろ甘い香り

 今までの戦いでは、空の民が山の民の領域に攻め込んできたため、ミコのダウジングやサコたちの力によって勝利することができた。

 しかし、敵地である空の民の領域では容易には勝利を収めることができないことが分かっていた。

 それでもサジは、卑弥呼に戦うことを望んだ。

 そして、最初にサジは息子のルイにミコの後を追うよう命じた。


 リチは空の民ではない匂いを嗅ぎ分け、ソチは空の民ではない足音を聞き分け、ミコの元へ向かった。

 そこに現れたのは予想通りミコだった。

 ソチとリチは、彼女が放つ強大なオーラに圧倒されながら、ミコが山の民であることを確信した。

「あなたは山の民のミコですね?」

 と尋ねると、ミコは素早く答えて

「そうです、私がミコです。ミユヒルを返してください」と言った。

 その言葉と共に、ミコはみずかつかまるように身をあずけた。

 ソチとリチは丁重ていちょうにミコをクモノサチの元へ案内することにした。


 一方、ルイはサジから教わった匂いをかき消す薬草を持ち、音を消す植物を使いながら、空の民の領域りょういき辿たどり着いた。

 

 ミコはクモノサチのもとへ向かい、ミユヒルの解放を願い出た。

 しかし、彼女には空の民の支配下になるという条件を受け入れなければならないことが告げられた。

 ミコはがっかりしつつも、やむを得ず条件を受け入れることにした。

 その後、ミコはソチとリチから山の民についての情報を求められた。

 少し迷いながらも、話そうとしたその時、かすかなほろ甘い香りが漂ってきた。

 ミコはその香りが何かをすぐに分かったが、他の空の民たちはその香りの意味が分からず眠りについてしまった。

 それは、ルイがサジから受け継いだ、眠りの香りだったのだ。

 ミコはその香りを知っていたため、一瞬で息を止めることができた。

 ルイは眠りの薬草を使い、香りで空の民たちを眠らせた後、ミコを救い出した。

 2人は素早く逃げ出したが、不慣れな地形ということもあり、なかなか前に進むことができなかった。

 さらに、空の民の中でも、クモノサチだけは、眠りの香りが効かなかったのだ。

 最後のがけの滝がある場所、山の民の元へ帰るための道にたどり着いた時、クモノサチが後ろから追ってきた。

 そして、彼は力強く空にこぶしを突き出し、呪文をとなえた。

 すると、空の中から雲やきりが舞い降りてきて、彼らの進むべき道が完全に見えなくなった。

 ミコは両手を合わせ、光の導きを映し出し、ルイと共に歩き始めた。

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