第11話 捕らわれたミユヒル

 空の民たちは驚いた。

 なぜ私たちの攻撃方法がバレたのだろうと…

 考える間もなく、ジルの矢が燃えさかり、空の民の乗り物に命中し、炎が広がりながら地上へと落ちていった。

 まるで待ち構えていたかのように、バグルは馬をあやつり、落下してくる空の民を容赦ようしゃなく蹴散けちらした。

 空の民たちは慌てふためき、まともな反撃もできずに引き返すしかなかったのだ。

 ミユヒルは、逃げ帰る空の民を追いかけて、身軽さを生かして偵察ていさつこころんだ。

 卑弥呼の力とその使い手であるミコとサコの不思議なる魔術まじゅつに似た力は、空の民にとってあなどれない存在であると再認識したのであった。


 空の民の住む場所は、山の頂上近くで霧深い地域に位置していた。

 ミユヒルは、空の民の技術力が予想以上に高いことを目の当たりにした。

 乗り物や武器、素晴らしいものが数多く並んでいた。しばらくの間、彼は驚き見とれていた。


 しかし、その時、後ろから体をつかまれる感覚があり、ミユヒルは気を失った。

 寒さと手や腕の痛みを感じながら、彼は目を覚ました。

 がけの上にはなわで縛られ、るされているミユヒルの姿があった。

 彼は空の民にとららわれてしまっていた。

 

 空の民の支配者、クモノサチにはソチとリチという2人の使い人がいた。

 ソチは驚くべき聴覚ちょうかくを持ち、音を聞き分けることができ、

 リチは優れた嗅覚きゅうかくを持ち、人のにおいまでも識別しきべつすることができた。


 その頃、空の民たちは、ミユヒルを矢の練習のまとにしようと話し合っていた。

 その時、ソチとリチが現れた。

「彼は大事な人質です。手荒な扱いは許しません」

 と言って、彼らはクモノサチのもとへと向かい、ミユヒルの処遇しょぐうについて報告した。

 空の民の支配者は、ミユヒルの救出と引き換えに、ミコを雲の民の支配下にすることをソチとリチに伝えるよう命じた。

 風が草原を吹き抜ける中、卑弥呼は悩ましい選択をせまられていた。

 心が揺れ動く中、卑弥呼はみずからの信念に従い、ミコを守る覚悟を決めた。

 空の民にミコを渡すことは、彼女にとってはあり得ない選択であった。

 ミユヒルをあきらめるしかないのか、と卑弥呼は考え込んでいた。


 しかし、ミコはミユヒルを救うために一人で空の民の領域りょういきへ向かっていた。

 この知らせを聞いた卑弥呼は、サジと相談し、やむなく空の民の領域で戦う決意を固めた。

 彼女は、ミユヒルを救い出すために最後まで戦い抜く覚悟を決めたのである。


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