第8話 声の力で救う

 イワトカミはサコに向かって言った。

「あなたの声で、川の民の周囲に動物たちを引き寄せて欲しい」と。

 サコはイワトカミの声の素晴らしさを知っていたので、自分の声だけでは十分ではないと躊躇ためらった。

 しかし、サコは危機がせまっているのを感じ、力強く声を響かせた。

 すると、たくさんの動物たちが集まり始めた。

 その瞬間、イワトカミはたのもしくも壮大な響き声で、動物たちを川の民の領域に囲ませた。

 サコとイワトカミの力によって、地響きはそこで食い止められたのだった。


 イワトカミは次にアグに命じた。

「川の波をあやつり、道を造るのだ」と。

 アグは祈りをささげながら、

 力強くチグの風の力と協力した。

 すると、川の中に道が現れた。

 その道をバグルとジルが馬に乗り、戦いに向かった。

 ミユヒルの驚異的な俊敏さは、川の民に多少通じたものの、川の民は力強く戦い続けた。

 矢に当たっても動じず、馬を蹴散らす姿は壮絶だった。

 川の民の力はなおもおとろえなかった。

 ミユヒルは、バグルとジルに、自分が敵を引き付ける間に逃げるよう指示したのである。

 2人はためらったが、ミユヒルの力を信じ、立ち去ることにした。


 バグルとジルが川を渡りきると、後ろから追ってくる敵をアグの波を操る力で川に沈めた。

 一方、チグは風を操りながら必死に戦った。

 これにより、敵の戦力はかなり衰えたが、ミユヒルの行方を知ることができず戦いは中断した。

 ミコは心配でミユヒルのために卑弥呼の助けを求めた。

 卑弥呼はバグルとジルと共に、川の上流へとミユヒルを救いに行くよう指示した。

 ミユヒルは身軽さを生かして敵の情報を探り続けていたが、なかなか脱出することができずに困り果てていた。


 その時、ミコたちは助けに行く合図となるを上げ、待ち合わせの合図を送った。

 ミコはダウジングを使い、川の向こう岸にある木を指し示し、ジルにひもをつけた矢を放つよう命じた。

 バグルとジルは紐をたどってミユヒルのいる場所に向かった。

 ミユヒルは小川の近くにひそんでいた。

 そこが約束の場所だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る