第5話《海神の囁き---イワトカミまでも虜にする声の持ち主》

 卑弥呼には弟がいた。

 彼は知恵に溢れ、力強く、輝く笑顔とオーラ、響き渡る声を持ち、全ての存在を虜にする魅力を放っていた。

 その弟の名はイワトカミ。

 彼はチグとアグという忠実な従者を従え、海の民たちの支配者として君臨していた。


 イワトカミはその存在感とカリスマ性によって、海の民たちの間で伝説となっていた。


 イワトカミは、深い愛と敬意を抱きながらも、山の民であり、声の妖精として知られる存在であるサコを真に愛していた。


 しかし、サコの美しい声に憧れる者たちは、山の民だけでなく海の民も含め、数え切れないほど存在していた。

 彼女の癒しの声は遠い海を越え、異国の人々の間でも噂となり、ついには卑弥呼の国まで伝わったのだ。


 言葉の異なる人々は、絵や動作を通じて卑弥呼にサコの素晴らしさを伝えようと試みた。多くの人々がサコを妻にしたいと願ったが、彼女は卑弥呼から結婚や子供を持つことを禁じられていた。


 卑弥呼はミコの存在もあり、サコに対して厳しく接し、彼女を悟らせ、守らせた。

 サコは卑弥呼の命令に従い、一人で生きていくことを全ての人々に伝えた。


 海を渡った国の人々は、わずかな文字で「魏志倭人伝」という記録に卑弥呼の国について書き残した。

 この記録によって、卑弥呼の不思議な力が後世に少なからず伝わることとなったのである。

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