第3話 貴重な薬「ダグ」
卑弥呼は、ミユヒルに山を去るよう告げ、馬を一頭授けた。
ミコを助けるためとは言え、山の民たちを危険にさらしたことは認めざるを得なかった。
ミコは、卑弥呼の薬とサジの治療によって命は助かった。
しかし、それによって彼女は子を身ごもることが難しくなった。
彼女を慕う山の民たちは、この問題を解決するために、不思議な魚の骨にしかない薬を海の民から手に入れ救いたいと卑弥呼に頼んだ。
卑弥呼は天に訪ね、一つの結論を導き出したのだった。
それは、ミユヒルを1人で海の民のところへ行かせ、薬を手に入れてくることだった。
ミコは卑弥呼に自分はこのままで良い、ミユヒルを危険な目にあわせたくないと願い出た。
しかし、卑弥呼はミユヒルが薬を手に入れることができたならば、ミコを授けようと約束した。
そして、その約束に従って、ミユヒルは海の民のところへと向かった。
魚や貝や海藻を自然の恵みとし、命の源と海の神に感謝し祈りを唱える海の民たち。
しかし、時には神の怒りを受け、荒れ狂う海が彼らを飲み込み、苦しめることもあった。
その怒りを鎮めるため、昔から伝わる貴重な薬「ダグ」を捧げる。
その薬「ダグ」が、ミコを救うための唯一の希望であった。
1人、海へと向かったミユヒルは、山の民であることがすぐにバレ、捕らわれてしまう。
彼自身もそれを覚悟していた。
自分の命と引き換えにでも、薬を手に入れようとした。
そこへ、チグが現れた。
海の民たちは、ミユヒルの処刑を求めていた。
しかし、チグは1人でここまで来たミユヒルを不思議に思い、彼に話を聞くことにした。
ミユヒルは自分の望みをすべて話し、自分の命と引き換えにミコのための薬を手に入れたいと懇願した。
チグは、美しく清々しいミユヒルの命を奪うより、湖の権利を奪うほうが良いと考え、上の神の使いに申し出た。
神の使いは、三日三晩海に逆さ吊りにしてミユヒルが生き延びることができたら、チグの申し出を受け入れることにした。
ミユヒルは、柱に縛られ海へと連れて行かれた。
満ち潮の時には、顔まで海水に浸かる。しかし、引き潮の時にはチグがミユヒルの元に行き、水や食べ物を与えた。
これは、海の民たちには秘密にされていた。
チグのおかげで、ミユヒルは三日三晩生き延びることができたのだった。
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