迫る期日

 無慈悲にも時間というのは過ぎてしまう。

 気がつけば明日は十一月。


 答えを出さなければならない日がもう目の前まで迫ってきてしまった。


 私はその夜なかなか寝付けなくて、何度か体勢を変えたり、お茶を飲みにったり、気分転換になるかとお父さんから貰った漫画を読んでみたりしたけど、何一つ効果はなかった。


 そこで、夜風に当たったら少しは眠くなるかなと思い、忍び足で玄関まで行き、こっそり家を出た。


 私が無意識のうちに向かったのはあの公園。

 この時間なら誰もいないし、風通しが良いから落ち着くには丁度いい場所。


 そっとベンチに腰掛け、見上げると無数の星がキラキラと輝いていた。

 雲一つない夜空はとても美しくて、ずっと見ていられた。

 私も、あんな風に何も考えずキラキラと輝きながら浮いていたい。

 このまま明日が来なければいいのに。


 お父さんは私の夢を応援しようとしてくれてる。

 お母さんは厳しいけど、それは、私が将来大人になった時に困らないようにしてくれてるんだと思う。


 お父さんのところに行ったら、私は今までの努力に目を背けてしまいそうで怖い。

 でも、夢は諦めたくない。


 何より、どちらか一方は私が裏切る形になってしまう。

 それが一番嫌。

 どっちも選びたくないのが本音。

 だけど、そう言うわけにいかないのが現実。


 やっぱり選べない。

 選ぶっておかしいよ。

 私の唯一のお母さんとお父さんなのに、それを選ぶなんてできない。


 考えれば考えるほどに頭が冴えていく。

 

 私はまだまだ眠れそうになかった。

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