女の子とのやり取りは難しい
気がついたら夕方だった。
一度お昼に起きて、姉ちゃんが昨日買ってくれていたサンドイッチを食べてからまた寝た。
そして次に目を覚めた時には窓から夕陽が差し込んでいた。
「寝過ぎた……」
時刻を確認しようと枕元に置いたスマホを手に取った時、姉ちゃんからラインが来ていることに気がついた。
『どうだった?』
12時に送信されていたのに、その時間帯に度起きていたはずなんだが、全く気づかなかった。
どうだったと言われても困るな。
特に何も……。
写真通りの美少女だったこと、そんな女の子が俺に抱き着いてきたこと。
まぁ、特に何もなかったわけじゃないな。
でも、姉ちゃんが言いたいのは痴漢のことだろう。
『何も』
それだけ返してトーク画面を閉じる。
その瞬間、ブブッとスマホが振動した。
「早くね」
姉ちゃんかと思い、反射的に一番最初に表示されたアイコンをタップして気づく。
「あの子からだ」
朝に一緒に電車に乗った女の子からのライン。
『今日は貴重なお時間を使っていただき本当にありがとうございました』
高一とは思えないほどの丁寧な文。
育ちが良いのだろう。
にしても。
「既読つけちゃったな」
今までラインなんて姉ちゃんか母さんか父さんで、中でも頻度が高いのが姉ちゃんだったから、ついそっちだと思い込んでしまった。
それに、家族以外のラインは俺のスマホには登録されていない。
「何て返すか……」
無難な言葉すらも思い浮かばない。
既読無視するか。
いや、それだと明日会った時に気まずいな。
というか、いつまでボディーガードしていればいいんだ?
まさかあの子が卒業するまでとか言わないよな。
なんて考えているうちに、また送られて来た。
『浩多さんのお陰で痴漢には遭いませんでした』
そっか、それは良かった。
もしかしたら我慢してるのかと思っていたから、本当に良かった。
会った感じだと、もし痴漢されても、この人痴漢です! とか、止めてください! とか抵抗できなさそうだったし。
俺も一応、それらしき人は居ないか確認してみたけど、見当たらなかったからな。
まぁ、されないのが一番良い。
「さて」
どう返したものか。
こういう時って、前の文も含めて返した方がいいのか。それとも今送られてきたのにだけ返せばいいのかがわからない。
「わからん。そもそも女子とやり取りしたことないし」
姉ちゃんは血が繋がってるから気を遣うとかはない。
この子に関しては他人だから自然と気を遣ってしまう。
また明日、とか送っておくか。
さすがに既読無視はしたくないから、何か送ってから既読つかないようにしようと思う。
また明日、と打って、後は送信ボタンを押すだけ。
ブブ。
スマホが振動する。
また女の子からだ。
『もう大丈夫だと思います。ありがとうございました』
もう大丈夫?
どういう意味だ。
「もう大丈夫……」
もしかしてそれって、ボディーガードしなくていいってこと?
まだ一日目だぞ。
俺は別にいいが、痴漢されないって決めつけるには早計すぎやしないか。
本人が言ってることだから無理強いはしないけど、心配なのには変わりない。それに、姉ちゃんにどう説明するかが悩みどころ。
「了解とでも送っとくか」
せっかく打った『また明日』を消す。
のだが、
「あ……」
間違えて送信ボタンを押してしまった。
いや、正確には当たった。
「でも取り消しという機能があってだな」
しかし一歩遅かった。
『明日もよろしくお願い致します』
何だこの子は。
自分の意見を持ってないのか。
ついさっきまで、もう大丈夫だと思いますって言っていたのに、この数秒で気持ちの変化でもあったのか。
とりあえずまた既読をつけてしまったけど、これは別に返信しなくてもいいだろう。
もう何て返せばいいのかこれっぽちも思いつかないし。
「また明日か……」
ぼんやりと天井を眺める。
ずっと外に出ていなかった割には、意外と平気だった。
もちろん多少の緊張はあったし、相変わらず周りの目が気になったけど、思っていたよりかはマシになっていた。
もっと不審者っぽく挙動不審になるんだろうとか想像してたから。
「可愛かったな」
あんな美少女は滅多にお目にかかれないほどだ。
おまけに礼儀正しく、大人しい。
きっと学校ではモテモテなんだろうな。
そう言えば、姉ちゃんは高校の時ってモテてたんだろうか。
可愛いと言うか美人よりの姉ちゃん。
でも、一度も彼氏ができてないってことは、説明するまでもなくモテてはないと思う。
「今日は授業受けるか」
自由な時間にアプリで授業を受けれるが、この日までにここまで授業を受けてくださいっていうのは決まってる。
さすがに受けないと通信でも卒業はできない。
面倒臭いがベッドから起き上がって、机に向かう。
スマホで専用のアプリを開いて授業の動画を再生する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます