第8話 "狂犬"%

終 わ ら ぬ レ ポ ー ト 地 獄


迫 る 期 限


ど ど ど ど ど ー す ん の ど ー ー す ん の ? ?



なので短めです。話の進みおっそ♡

─────────────────────





「──すみません、今なんと?」


1層の玄関口。薄暗闇の広めな空間。そこに声が反響し、吸い込まれていく。

スーツを着た彼女──菊月は、その笑みをひくつかせ、携帯を握り締めながら通話相手にそう聞き返す。


『ですから、部隊は派遣できません。』


「……」


そう、冷淡な女性の声。

どうやら聞き間違えでは無かったらしい。この通話の向こう……つまり"組合"は、ダンジョンの侵攻という一大事に対して、静観と洒落込む。

どうやらそういう事らしい。


「……理由を聞いても?」


乾いた喉で、それでも声を絞り出した。


『侵攻核……なるほど確かに、早急な対処が望ましいものではあります。しかし、どこでしたっけ……あ、そう。B-3クロガネ。過疎も過疎、誰も覚えていなさそうな、何の取り柄も特徴も無いダンジョンの侵攻ならば──』


「むしろ大歓迎、と?」


『そういう事です。』


どこか小馬鹿にしたような、嘲るような。そんな調子で声が返される。


『侵攻の後、誕生するダンジョンオルタ──まぁ正式な名称はAlternative-Labyrinthですが──それが何か有益となるのならばラッキー。棚から牡丹餅と言うものです。もし危険極まりないのであれば、SかSSをお望み通り派遣致しますよ。』


ギリ、と歯が欠けてしまいそうになるほど強く奥歯を噛み締める。

湧き上がるその感情に必死で蓋をしながら、尚のこと食い下がる。


「ッ……なら、派遣部隊が来る事を信じて、先に入った2人は──」


「おや?もう行ってしまった方がいるのですか?」


それは予想外、と言うように言葉が返される。


「──はい。応援の派遣をしないということは、彼女たちの決意も、思いも、全て踏み躙る事になります。」


『ふむ……』


少し考えるような声。

そもそも、開拓黎明期に有志の開拓者数人によって設立された"組合"は元来、開拓者一人ひとりを手厚く支援する事を心情としている。 それは成長期へ突入し法人化した今も変わらない。

ならばこの状況は"組合"としても好ましく無い筈だ。


その昔開拓者を営んでいた頃の彼女も、"組合"のこのポリシーには何度も助けられてきたし、手厚いサポートを受けてきた。


(よし、これなら……)


そんな、湧いて出た一縷の望み。しかし、それすらも。


『ならば、直ちに立ち退きを。侵攻核に何かあってはいけませんから。連絡が取れないようでしたら、御自身が直接連絡しに行って頂けると。』


ハッと、鼻で笑って一蹴するように、吹き飛ばした。


「……ッ!」


絶句とはどのような状況か。もしそのような問題が出たとするなら、彼女は間違いなく「今の私」と回答するだろう。


全身に力が篭もり、頭に血が上っていくのが自分自身でも分かる。

口角は下がり、目は見開かれていく。

それは、彼女の"社会人"としての仮面が剥がれ──かつて開拓者を辞め、今の仕事を始めてから鳴りを潜めていた彼女の"悪癖"が、再びその姿を覗かせていることの証明に他ならない。


「……からだ……」


『はい?』


しかし、その悪癖を抑えることはなく…いや、むしろ後押しする形で、ソレは前面へと押し出されていく。


「……いつからだ……」


『"いつからだ"?質問の意図が掴みかねますが──』


規律正しき社会人。そんな自覚を今は捨ておく。今はただ、自分の大切なモノを守るため。溢れ出る激情に身を任せ、そのまま、吐き出す。


「……いつから、いつからお前らはそんなドブカスに成り下がりやがった!!」


『ッ!?』


「あ゙ぁ゙!?お前"組合"の社訓言ってみろや!?」


『え、えぇと……』


「分かんねぇか!?分かんねぇよな、分かんねぇからそんな事言ってんだよな!!なら私が言ってやるよ!!!"All for the pioneers"──"全ては開拓者の為に"、だ!!この意味が分かるかぁ!?」


『そ、その……』


「見損なったぜクソッタレが。二度と"開拓者支援機関"なんざ名乗るんじゃねぇぞ。」


相手に口を挟む暇すら与えず、ノンブレスで吐き捨てるかのように糾弾する。


……もし、この場にナオがいたら…いや、Aランク以下の開拓者がいたら、その殆どが彼女の発する覇気に当てられ泡を吹いて倒れただろう。


真開いた瞳孔に加えて鋭い犬歯を剥き出しにし、全身にこれでもかと怒気を孕ませるその姿は正しく、かつて界隈にその名を轟かせ、今でも語り継がれる程カルト的な支持を持つ…ランク"S達人"の開拓者──


『……その口調、声音…まさか……』



"狂犬"カルタ──その人であった。



『な──なんだ!それならそうと早く言って下さいよ!少し待っていてください、直ぐに部隊編成を──』


ギリ、と更に奥歯を軋ませる。


(……舐めやがって。)


「くたばれ。」


『待ッ──』


ピ、と通話を切り、大きなため息を吐いて天を仰ぐ。


「──あ゙ぁ゙ー…ダメですね。どうしても抑えきれない。私もまだまだ未熟と言ったところですか。」


うんうんと唸る。が、最終的な結論は。


「ま、後悔はないですね。一点の曇りもなく。……むしろ良く言いました私!──あーでもこれで"組合"とライブハートウチが対立したら責任問題か……」


まぁいいか、と後先の不安を笑って吹き飛ばす。端的に言えば、久々に自分を解放しストレスもついでに発散した彼女は、ハイになっていた。


「さて、これで派遣部隊は絶望的ですが…どうしましょう。」


顎に手を当て、少し思案。

今から派遣できる人員。十二分なチームワークと実力と信頼。

その全てが兼ね備えられた集団は無いものか。


勿論、この答えは通常ならば"組合"一択だ。

だがしかし菊月にとって、もはや"組合"に対する信頼など塵も同然。論外にも程がある。


ならば。


「自警団?…No。侵攻に対抗出来る程のチームワークも実力もあるとは思えない。」


ダンジョン自警団──ダンジョン内で起きる開拓者たちの窮地を救う為、有志が集まった非認可の集団。

それに頼るのは些か厳しいものがあるだろう。


「アルカディア総合学園生徒会?…No。奴らは確かに実力も信頼もある……でも、あそこに借りを作るのは論外。」


アルカディア総合学園生徒会……"桃源郷アルカディア"を掲げる、開拓者養成を専門とした私立高校の生徒会。

"最強"と名高いランク"SS規格外"の生徒会長を筆頭にメンバー全体で高水準の能力を有したあの集団は、チームワークも実力も信頼も十分に足りている。が。


何よりも恐ろしいのは、その協力の見返り。1度頼ったら最期、強制的にパイプを繋げられた挙句搾取され続けるオチが待っている可能性がある。

そんな大きいリスクは抱えられない。


ダンジョンが出現して"まだ"80年程。意外と頼れる機関が少ない。

それでもなお、何か無いかと思慮を巡らせる。


末に。


「……あるじゃないですか。」


ニヤリ、と不敵に嗤う。


「チームワークも、実力も、信頼も。その全てを兼ね備えた集団が。そして大きいリスクも無い……うってつけな集団が。」


再びスマホを立ち上げ、メッセージアプリから数人に通話をかける。


「……ええ、到着次第自由に動いて構いません。目的はもののべさんとあのナオバカの応援。ついでに守護プロテクトモンスターの討伐です。……なに、あなた方にとっては朝飯前でしょう。」


『……。』


「ふふ、頼もしい限りです。貴女の固有なら一個大隊は余裕で作れますからね。勿論、いくら撃ってもお金は取りませんよ?」


『……!…?』


「ええ、勿論です。青天の霹靂でいいですよね?…貴女の酒好きは筋金入りですね。」


『………。』


「はい、はい。……禁煙とまでは言いませんが、本数を減らされては?──分かりました分かりました。用意します。」


通話を切り、軽く深呼吸をして1層の奥へと続く道に向き直る。


「……私は先に行くとしましょう。入るのは久しぶりですね…鈍ってないと良いのですが。」


上着のボタンを外し、ネクタイを緩め、第1ボタンを外す。

社会人としては少々はしたないが、仕方が無いだろう。


そうして菊月は、亜空間に手を入れ、久しぶりに使う相棒の感触を感じながら上機嫌で暗い通路へ入っていった。




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菊月さんの下の名前出すつもり無かったんですが、展開的に出さざるを得なかったです。

菊月歌留多さんです。よろしくお願いします。



─以下、レポート作成中の私の叫び─


「ちょっおまっ!一周目の時はサシだったのになに乱入してくれちゃってんの!?今何してたか分かる!?独立傭兵二体相手取ってんだわ!!それをなに?"見せてもらいましょうか"ってかっこつけてんじゃないよボケカスくっそかっこいいなナイトフォールクッッッソ!!!でもやってる事卑怯にも程があるから!やってる事五条先生と戦ってる宿儺だから!"いや、3対1だ(キリッ"ってか?やかましいわボケって、おぎゃぁぁぁぁあああ!!!!(とっつきに貫かれ爆死)」


……AC6やってました。強いよ真レイヴン……おかげでレポートが進まない(盛大な自業自得)

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