第7話 作戦開始%

ブルアカ最終章読み終わりましたー!凄く凄かった……(語彙力)。ソシャゲ界の最高傑作と言っても過言ではないのでは?

それはそうと、最近メルティキッスの美味しさに気付きました。皆さんも是非。


盛大なガバしたので修正しました(02/10 )

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小走りで最短経路を進み、現在3層最奥。

4層入口前にあったモンスターの入ってこない安全地帯セーフティルームへ入り、口を開く。


「──では、まずこのダンジョンの構造についておさらいしましょう。全体で5層構造で、上層は3層、深層は4層からとなります。」


「ハァ……うん、うん…ハァ…」


「……大丈夫ですか?」


「少し…ハァ…休ませて……ハァ」


小走りのつもりだったんだけどな……。


『1層で30分かかってたのに3層まで10分で降りおった……』

『まぁ逐一懇切丁寧に解説付きで進んでたからな』

『下がれば下がる程大きく広くなる筈なのですがそれは』

『もののべちゃんの本業RTAだもんな……そりゃ速いわ』

『ナオめっちゃ息切れてて草』

『なんでそんなに行く道分かってるみたいに進めるん?』


「はい?それは普通に情報サイトにあるマップを暗記しただけですが。」


『は?』

『定期的に格の違い見せてくるのやめてもろて』

『それだけの才能、誇らしくないの?』


自身の発言により、またコメント欄が騒然となるが今は気にしている場合では無い。


「……ここに来るまでも殆ど接敵しなかった事を考慮すると、侵攻はもう最終段階かも知れません。」


「最終段階……」


『いても流れ作業で斬り捨ててたけどな』

『所々で見え隠れする強者の風格』


「はい。上層のモンスターの生成はまだの様ですが……深層は既に、侵攻核の領域テリトリーとなっていると思います。侵攻核を守護する守護プロテクトモンスターも、当然。」


生成が完了しているだろう。その続く言葉を遮るように、ナオさんが口を開いた。


「ということは、かなりの緊急事態って事だよね。」


「はい。侵攻終了はもはや秒読みと言っても、過言では。」


そう言うと、ナオさんは手に持っていたペットボトルを亜空間へ仕舞い、埃を払いながら立ち上がる。


「てことは、もう"組合"の派遣部隊を悠長に待ってる時間は無いわけだ。」


「……まぁ、そうなりますが。」


『ん?』

『おや?』

『これは……』


「じゃあ、もう答えは1つじゃない?」


ニカッと、そう笑顔を浮かべる。


(……あぁもう、ずるいな。ナオさんは。)


その笑顔にこれ以上逆らえる人間が、いるのだろうか?いるのだとしたら、そいつはとんだ傾奇者だ。


「侵攻が完了したら、そのダンジョンは全く新しくなる。等級も、性質も、モンスターも、仕掛けも。もしかしたら他のダンジョンと繋がって、超大型のダンジョンになるかもしれない。それに──」


続く言葉を、手で遮る。


「"困ってしまう人がいる筈"……ですか?」


「ッ!」


「ナオさんの思惑、想定、都合。全て了解しました。作戦を変更しましょう。……いいですね?菊月さん。」


『LiveHeart🔧:……分かりました。くれぐれもお気をつけて。私は"組合"に連絡を取りますのでこれで。』

『公式ばいばーい』

『じゃあの菊月さーん』

『なおつー』

『なおつ』



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※【なおつ】ナオの配信の退出挨拶

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「……ってことは!」


パァッとまた輝くように笑うナオさんを後目に、黙って懐から1枚の札をカメラに写るように取り出す。


「……御札?」


「これは、僕の友人からもらった"希物"です。」


『希物……?』

『説明しよう!希物とは!』

『スキルを宿した便利道具』

『解説ニキ投げやりになってて草』


「この希物は使用者の指令によって動くヒトガタを生成します。この様に。」


『ちなみにヒトガタは人の形したナニかの総称な』

『説明……された!』

『説明ニキもう帰ったら?』

『無能』

『やめたら?この仕事』

『なんで生きてるの?』

『総バッシングで草』


ビリ、と札を破る。すると隣に僕とソックリな──とは言ってものっぺらぼうだけど──姿をした半透明のヒトガタが出現した。


「ひゃあ!すっぽんぽん!」


「違いますよ!?3Dモデルっぽいですけど!」


「お○ん○ん無いじゃん!」


「そう言うデザインなだけです!!」


はぁ、とため息を吐き、切り替える。


「はい、カメラ持って。」


そう言い、ヒトガタにカメラを手渡す。


「えっ?」


『おっと?』

『これは?』

『パンツ脱いだ』

『↑判断が速い』

『👺』


「顔バレとか四の五の言ってられませんから。ここからは激しい戦闘になるのです。片手が塞がっていてはいざという時大変なのです。」


『なのです!』

『電の本気見せようとするな』


そうして僕は、配信開始から約40分で遂に、画面の中へ入った。


「はい、こんな顔ですもののべです。」


そうカメラに向かって手を振る。


「あっあっあっ」


『なんだ、国宝か。』

『素直に射精です』

『パンツニキ全てが速い』

『あれ、何も見えない』

『あまりの可愛さに目潰れてるニキおるて』

『もののべ、結婚しよう。』

『相手は男だぞ』

『男でもいい!男でもいいんだ!!!』

『𝕐のトレンド上位全部この配信関連で草』


凄まじい勢いで流れていくコメント。

どんどんと増え続け留まることを知らない同接数。


配信にやっと入った。そんな気がした。


バズる、という事がやっと分かった。

……これは随分と、気持ちがいい。


とりあえず、荒れてはいない……どころかかなりの好印象なことに胸を撫で下ろす。

まぁ顔にだけは自信あるからね。大変不本意ながらね。


『こんなに可愛い子が女の子な訳が……』

『本当に女の子じゃない定期』

『世界は平等に不平等だな……』

『高さは勝ってるぞ舐めんな世界』

『身長は……まぁ……』

『残念だったね……』


「ちょっと表で話しましょうぜ……」


『お、寂しんぼか?』

『はいはい天晴れ忘れん』


それはそうとコイツらはいつかシメる。


「私だけのご尊顔が……私だけの、もののべちゃんが……」


「何ブツブツ言ってるんですか。ほら、やると決まったらやりますよ。先ずは情報共有から!」


「うぅ……」


何やら落ち込んだ様子のナオさんに、矢継ぎ早に必要なことを言う。


「まず僕のスキルです。僕は身体強化と固有を掛け合わせた戦闘スタイルを取っています。身体強化に関しては特段、言うことはありません。……なので、固有について共有しておきます。」


学術用語"Unleashing New Ideas Quietly Undermines Established"……頭文字をとって、UNIQUEユニーク

──通称"固有"と呼ばれるそのスキルは、1人につき1つだけ、ダンジョンに踏み入った瞬間与えられる力。

人によっては無くてはならない全ての基礎であったり、切り札であったり、隠し球であったりとその内包する力は十人十色である。


「え、いいの?秘密にしてたんじゃ……」


鳩が豆鉄砲でも食らったような顔で言うナオさんに、頷いて返す。


「連携が重要ですから。……それで、僕の固有についてですが。僕は"倍速ダブルスピード"と呼んでいます。」


「……倍速ダブルスピード?」


「はい。意味のままで、自身の全体、もしくは1部の行動…また、それに伴う事象の速度を倍速させます。」


「……つまり?」


「仮に僕が50mを7秒で走る時、スキルを使うと3.5秒で走るようになります。また、野球ボールを90km/hで投げる場合、スキルを使えば180km/hで投げます。」


「おお!じゃあその分破壊力も!」


「流石、いい着眼点です。」


ですが、とゆっくり首を左右に振る。


「残念な事に破壊力は変わりません。あくまで僕自身、行動と事象の時間軸を速めているだけに過ぎませんから。」


「……?」


『?????』

『どういう事?』

『勉強は大事ってこと』

『↑アキレスと亀やめろ』

『よくわかんね』


うーん、マズったな。流石に抽象的過ぎたかも知れない。もう少し噛み砕いて説明しよう。


「例えば、格闘家が瓦を割る動画があるとします。」


「うん。」


「拳を握り、振りかぶって力を溜め、瓦に拳を振り下ろす。この一連の動作を収めた動画……この動画を2倍速で流したとして、破壊力は変わりますか?」


ふるふる、と頭で否定を示すナオさん。


「ううん、変わらない。だって動画だもん」


「そうですね。つまり、そういうことなんです。ただただ、その一連を速めるだけ。それが僕の固有"倍速ダブルスピード"です。」


まぁ、ただ異様に速い人になると思ってもらって大丈夫です。と付け加える。


「………」


押し黙ったまま、プルプルと震えるナオさん。


……ですよね。と予想通りの反応に、心の中でため息を吐く。

こんな反応も当然だ。なんせ、あまりにも


この業界には『一定範囲内の世界の法則を自在に書き換える』とかいう能力だったり、『触れた生物・非生物の情報を全て掌握する』とか『発言した物体・事柄を具現化する』……などといったチートじみた能力が蔓延っている。

そんな中、『自身の行動・事象を2倍速させる』なんて能力……失望されても、それが普通の反応というもの。


しかし、自分は今までこの能力に何度も救われてきたんだ。例えなんと言われようと──


「──すっごい!!!」


「!?」


───え?



『すっごーい!』

『君はとっても動くのが速いフレンズなんだね!』

『だから視点にブレが無いのか?』

『いやそれはただただ単純に本人の技術では』

『自分の速度が2倍速になったら普通頭バグる』

『一見ハズレスキルだけどもののべの技量が高過ぎて強スキルなのガチ尊敬』


「すごい、凄いよもののべちゃん!つまりあの攻撃力はもののべちゃんの素の力に身体強化をプラスしたものって事でしょ!?」


「そ、そうなりますね。」


ずい、と身を乗り出す。あまりに近いため、少し仰け反る。


「しかも、身体強化も恐ろしく精度が高い……!見たところ、その倍速ダブルスピードの持続力って体力に依存してるよね?ってことは!」


更に顔を近付けるナオさん。

これが……ガチ恋距離ってやつか!?


「ち、近いで──」


「もののべちゃんって体力お化け!?それに高い集中を要する固有を自在に扱える程の集中力!あぁ凄い、凄過ぎるよもののべちゃん!!!」


「うへ…ぁ……」


そこでガシ、と両肩を掴んでナオさんを押し返す。


「──近いです!吐息が顔にかかってます!!……はぁ、はぁ……けほっ」


あ、危ない所だった。色々と。言動に反して顔が良過ぎる……!


『顔真っ赤で可愛いね』

『流石に近いぞ!おい公式!』

『残念だったな、キックーは今いないぜ』

『もののべちゃんさては押しに弱い……閃いた』

『通報した』

『現着した』

『連行した』

『判決した』

『収監した』

『執行した』

『これはぐう有能』

『逮捕から死刑までが早すぎる』

『ホモはせっかちなので仕事が早い』

『閃いただけでこの仕打ちはちょっとあんまりじゃないですかね……』

『死人とノンケは黙っとけ』


「あ、ごめん……つい……私、固有には目がなくってさ」


そう言って恥ずかしそうに顔をうつ向ける。


「はは……ナオさんは本当に固有好きですよね」


固有を公開しているコラボ相手に詳細について聞きまくる。これは僕もよく知っている。

さて、と手を打つ。


「ナオさんの固有は既に把握してますんで、時間も無いことですし、早いとこ作戦を説明しちゃいますね。」


「はい!よろしくお願いします!」


『い、いつ考えたんだ……?』

『思考を倍速したとか……?』

『ナチュラルハイスペなの』


「とは言っても、酷くシンプルなものですが……」


簡潔に、しかし分かりやすく作戦の概要を話す。


「なるほど……。これなら私達でもいけるかも!でも、もののべちゃんが……」


「僕は大丈夫です。あくまで時間稼ぎに過ぎませんから。それに、緊急脱出装置もありますからね。僕はどこかの誰かさんみたいに壊されることはありませんので。」


「うっ……」


「それじゃあ、行きましょう。」


ヒトガタを連れ、ナオさんと共に安全地帯セーフティルームを出る。



こうして、前代未聞の一大企画<B-3クロガネ 侵攻核阻止・破壊作戦>が始まった。






──予め、言っておこう。この常軌を逸した、気が触れているのかと疑うような企画は、後に配信界の伝説となり……また、大きな問題を引き起こす事を。


そして、「帰離原 菜緒」と「北上 物部」。この2名が"組合"より『要注意開拓者目録ブラックリスト』に登録される、大きな要因の1つになった事を。


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─補足─

固有の学術用語の和訳としては、「新しい発想・力って既に完成されてる社会とかを破壊しちゃうよね。」っていう感じです。頭文字でUniqueと読めるようにしたかったので、若干の無理矢理感は否めませんが……。

私は英検4級にすら落ちる人間なんです。勘弁して下さい。




6話時点で☆を200頂きました。まだまだレビューする内容も無い程序盤も序盤、最序盤だと言うのに……ありがとうございます。

日進月歩、奮戦努力。精進して参ります。

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