第5話 コラボ開始%
お久しぶりです、アーマードコアしてました。
流石フロムって感じ。色々と。
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「えーと...B-3クロガネは...と、ここか。」
目的地周辺です。お疲れ様でした──と、スマホナビの音声が流れる。
整備が行き届いた山道の中に、今回指定されたダンジョンがあった。
「ここがコラボで使うダンジョン.....」
ナオさんのアカウントでコラボの告知がされてから3日間、Thiscordで話し合った結果コラボする場所はB-3クロガネというダンジョンに決まった。
ダンジョンの難易度は等級につき8段階あり、このダンジョンは一般的に一人前とされるBランクの3段階目並、という事だ。
つまり、難易度は中の下くらい。まぁ妥当だと思う。
ちなみにこの前行ったダンジョンはA-7だったので、上の上。Aランクでも上澄みの上澄みレベルの実力が無いと難しい所だ。
「なーんかジ○リみたいだなぁ.....」
頬を撫でる心地の良い風、淡い木漏れ日。人払いがされているのか、人為的な音が1つもしない。
舗装されたコンクリートの道を除けば、自然そのもの。パワースポットと言われても全然信じる。
もし自分がマイナスイオンを食料とする生物ならもうがぶ飲みである。
……何を言ってんだろう。頭おかしいのか?学生気分か、社会人を舐めるな。
閑話休題。
ダンジョンの入口に近付き、改札口の要領で開拓カードを壁面に埋め込まれた読み取り部にタッチ。
それに応じて、重厚な扉が開き始める。
改札、というよりゼ○ダの祠を彷彿とさせる見た目だ。
ちなみに開拓カード──正式名称は開拓者証明証──とは、免許証と交通系ICを併せたようなもので、開拓者であることを証明すると共に、ダンジョンへ入るキーになるものだ。
ちなみに再発行はクソだるいので無くすのはNG。
「あっわっうわっ!誰か来た!!」
扉が開き中に入ったところで、少し奥から女の人の声が響く。
「しまった、先に来てたのか。」
気持ち駆け足で進む。
奥で女性が2人立っているのを確認。
素早く近寄り、会釈と共に話しかける。
「すみません、遅くなりました。」
「いえいえ、むしろ早いくらいですよ。」
長身の人がそう答える。
「じゃあ.....初めまして、もののべです。今日はよろしくお願いします。」
「はい、よろしくお願いします。ライブハートの菊月です。そして隣に立っているのが.....」
そう言って菊月さんが隣を見やる。
そこには、身長は女性としては普通くらい(それでも自分よりあるけどね。いっけなーい殺意殺意)で桜色の髪の毛を後ろに結っており、それでいて圧倒的な存在感を発する女の子が立っていた。
もはや思案の必要も無い。何度見たことか、否、観たことか。
この子が正真正銘、ダンジョン配信の最前線を駆ける配信者、ナオさんだ。
やべぇ本物だ。オーラすっご(小並感)
「あ.....え.....う.....」
「.....ナオ?どうしたの?」
「うえ...あ.....」
「.....えっと?」
そこでやっと、ナオさんの異変に気付いた。
頬をピンク色に染め、目を見開いてこちらを見ながら固まっている。
いつもの元気さ、そしてクソデカボイスが無い。
今にも消え入りそうな声を発している。
「.....?」
「あ、あの!!」
「はっはい!」
うわびっくりした。やっぱ前言撤回。
「ら、ライブハート所属タレントの帰離原菜緒です!!!!よ、よろしくお願いします!!!」
「ナオ!?」
「あっやばっ!」
「.....ッ?.....??えと、今.....」
「.....ごめんなさい。」
今の.....本名、だよな?ナオさんって確か本名公開してなかったはず.....。
コラボする時は相手に言うのか...?いや待て、菊月さんも動揺してる、多分タダのミスだ。
「じゃあ...もののべこと北上物部です。よろしくお願いします。」
「!」
「よ、よろしかったんですか?」
「はい。それに、僕だけ一方的に知るのもアレなので...。」
「...お気遣い痛み入ります。」
「あはは……じゃあ、今回の内容は……」
「はい、ディスコで送った通りです。まぁ一応改めて確認しますが、今回のコラボの内容はざっくり言えば『もののべさんがナオ並びに視聴者にダンジョンの攻略法を解説する』という形になります。」
「……本当に僕でよかったんでしょうか。」
「とんでもございません。もののべさんはトップレベルの強さをお持ちですし、話題性もバツグンですから。」
それに、と続ける。
「……ナオの希望ですし。」
「うっ……」
ビクン、とナオさんの肩が跳ねる。
「ま、まぁまぁ!こちらも光栄ですし、精一杯頑張ります!」
「しかし、いつもの配信スタイルと異なってしまいますし……大丈夫ですかね?」
「大丈夫です!…多分。」
「えぇ……」
して。と話題を切り替える。
「カメラは僕が持つんでしたよね?」
こくり、と頷く。
「もののべさんは顔を晒したくないとの事でしたしね。しかも、今までの配信のアーカイブを拝見したところ、"魅せる"撮り方が非常に上手でしたので。」
「……そうですかね?それで、菊月さんは?」
「私はここで外部からの者が這入ってこないように見張っております。たまにいるんですよ、ダンジョンを特定して乗り込んでくる不届き者が。」
「成程。大丈夫なんですか?」
「はい。今でこそただの会社員ですが、これでも昔は名の知れた開拓者でしたので。お任せ下さい。」
そう言って彼女は得意げに胸を張る。体幹や重心移動から見てもこの人は多分かなり強いし、安心かな。
「ではそろそろ始めたいと思うのですが、よろしいでしょうか?」
「はい。自分は大丈夫です!」
僕に集音マイクが着いたカメラを渡す菊月さん。
繋がっている機材とコードは空間系スキルを使い、亜空間にしまい込む。
コードに白いモヤがかかり、その先が消滅……これで問題なく機器が使用出来るなんて本当に都合のいい……いや、便利なスキルだ。おかげで動きやすい。まぁ片手にカメラがあるからあんま変わんないか。
「ナオ、準備はいい?」
「……あ、うん。」
「……頼むわよ?そんな上の空で、もののべさんに迷惑かけないでね?」
「か、かけない!大丈夫、大丈夫!」
気丈に振舞ってはいるが、やはりどこか様子がおかしい。
……不安だなぁ。
配信も不安だし。
少し気になったので、ウィンドウを開いて配信の待機数を確認すると──
「6万……?」
「ここから更に増えますよ。普段のナオの配信は7万前後、コラボだと……15万は軽く越します。」
絶句。
スケールが違い過ぎて頭クラクラしてきた。いけない、しっかりしないと。
菊月さんと別れ、奥へ進む。その間もナオさんは一言も喋らない。
大丈夫だろうか。
「この辺でいいかな?えーじゃあ、開始します。3………………」
ナオさんに立ってもらい、画面内へ収める。
続いて指でカウントをし、配信開始のボタンを押すのと同時に、手を差し出す。
これで、賽は投げられたという訳だ。自然と身体が強ばる。
「やっみんな!ナオだよー!」
「……!?」
『お』
『キタ───(゚∀゚)────!!』
『始まった』
『供給が……供給がぁ……!』
「いやー3日も配信休んじゃってごめんね!今回コラボだから緊張しちゃってさー!精神統一してた?みたいな!」
『到底許されるべき行為じゃない』
『誠に遺憾です』
『𝕐でめっちゃ喋ってたのは緊張からか』
『コラボで緊張……?ナオが……?』
『テレビに出た時も通常運転だったあのナオが……?』
『心臓に毛生え過ぎてマリモになってるあのナオが……?』
「君ら私のことなんだと思ってるの?」
……びっっっくりした。先程までは挙動不審で、顔も赤くてかなり怪しかったのに。配信が始まった瞬間人が変わったように流暢に話し始めた。
これが……プロか……!
と、勝手に1人で戦慄している僕を置いてどんどんとナオさんの進行が進む。
「で、気になる今回のお相手は……!」
そう言って、自分に目配せする。
合図が来た。心臓が早鐘を打つ。ここまで緊張したのは母が通話中に「……えっ」と言ってこちらを見た時以来だろうか。
ちなみに小学生の頃の話である。やべ、今思い出しても悪寒がするぞ……
『誰だ』
『ナオが緊張するような相手だもんな』
『wktk』
『どんな大物なんだ……』
意を決し、声を出す。
「えーと、どうも……。」
「はーい!なんと本日のゲストはもののべ様でーす!!」
『????』
『誰?』
『トレンド1位の人やんけ』
『ナオのガチ恋相手』
『様???』
『お、命救ってもらった人』
『画面外で草』
「と、言う訳で今回は!現在人気急上昇中兼私の命の恩人!ダンジョンRTA走者もののべ様による!"ダンジョンの歩き方"ーー!わーパチパチパチ!」
「よろしくお願いしますー。」
『声可愛いな』
『もののべがコラボ相手と聞いて』
『カメラ低くね?』
『これもののべがカメラ持ってるって事だよね?』
『……あっ(察)』
「おいそこ、話があるなら聞くよ。」
「こら!いくらもののべ様が背小さいからって言っていいことと悪い事があるよ!」
「え、ケンカ?」
『もののべさん落ち着け、ナオは天然失礼なんだ』
『息ぴったりで草』
『様ってなに?』
『顔出しはしないのな』
「ふふん、もののべ様のご尊顔を拝めるのは私だけと言う訳だ!羨ましいかリスナー!!ちなみに今私はもうなんと言うか凄く抱き締めてなでなでしたい衝動に駆られてる!」
「すみません、変態がいるので自警団へ連絡をお願いします。」
「えへへ、大丈夫だよ。ちょっとスカート履いて逆立ちしてもらうだけだから……ズボン越しでもよく分かるそのモチモチでちっちゃいお尻なでなでしてあげるから……うへ、うへへへへ」
「すみません、極めて特殊な変態がいるので特殊制圧部隊の派遣をお願いします。」
「Sランクが3人いる日本の主力部隊呼ぶのは殺意高くない?あ、おててちっちゃくてスベスベ……可愛いね」
「よっしそろそろコンクリで固めて東京湾に沈めてやろうかな」
『やはり東京湾か……いつ出発する?私も同行する』
『桐生院』
『フリーメ院』
『伝説の龍なのか秘密結社なのかハッキリしろ』
こうして、さっきの緊張はどこ吹く風と言った感じで緩やかにコラボは始まった。
「あと命を救って頂き誠にありがとうございましたもののべ様」
「え急に」
『草』
『最敬礼で草』
『この綺麗な90度……私がこの域に達したのは二十代後半……』
『様ってなに?』
─────────────────────
「おいおい、飛んだよビジター」
「見せてもらいましょう、借り物の翼でどこまで飛べるか」
「戦う理由を自ら選び、そのために強く羽ばたくこと。それが『レイヴン』の証明だというのなら私は、変わらずあなたをそう呼びたいと思います。」
私のAC6三大好きな言葉です。みんなもやろう、ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON。
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